アノ映画日和

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「マーターズ」 感想 パスカルロジェ オリジナル後編と少しリメイクマーターズ

 

いやいやいや、どうもすみませんね、また足を運ばせちゃいまいして。
あ、今回は前回の続きマーターズ後編になってます。
いきなりここを読み始めた方は、1つ前のマーターズを読んでから再度お越し下さいますようお願いします。

映画もブログ前編も見てくれた事を信じて、ではさっそく後編スタートです。

 

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すべて知るのは到底無理なのに 僕らはどうして
あくまでなんでも征服したがる カンペキを追い求め

物語は数名の男女が出てきたシーンからでしたよね?
この男女が何者かというと、ある目的を持った組織のメンバー達です。
ちなみにリュシーに殺された家族の両親もメンバーです。
つまりはリュシーを監禁、虐待をしていたのは変態夫婦の趣味ではなく、組織の目的の為に行なわれていた事だったのです。

そのメンバーはアンナに色々尋問した後、あの地下室に連れて行きます。
アンナを椅子に座らせたところで組織のボス、マドモワゼルと呼ばれる初老のBBAが登場します。
このマドモワゼルがなかなかパンチの効いた顔面でして、このBBAの登場だけでビビりの僕は震えあがります。

BBAはおもむろにアルバムを開きアンナに見せ説明をはじめます。
アルバムには拷問を受ける人々、病魔と闘う人々の死の間際の写真が収められています。
「見なさい、この女性もこの子供も目が輝いている。何かを悟った目をしてるでしょ?死の間際、何かを見ているのよ。臨死体験とは違う、痛みを受け入れた殉教者だけが死の間際見れる景色があるのよ。私たちはそれが知りたい...」

組織のある目的とはこれだったんですね...

はぁ?????
そんなん知らんし!自分ら知りたいもんだけでやれや!
自分の目で見てこいや!!!

と僕は怒り思いました。たぶんアンナも思ったでしょう。

そして虐待部屋でアンナは拘束されてしまうのです。

これは恐ろしい見せ方ですよ。
リュシーの傷だらけの脱出を見て、リュシーの見る化け物じみた幻覚を見て、そしてあのヘッドギアの女性を見て、いったいどんな虐待が行われたんだと誰もが思います。
思わせておいて、これからそれを見せようとしてるのですから...

僕もそんなの見たくないと思いましたが、凄い手品を見せられて今から種明かしを見せますと言われたようなもんです。目をそらせるはずがないのです。
この監督はこれから見せる暴力の為に種を蒔いてきたんです。
恐ろしく計算高く狡猾な策士です。

そして虐待が始まります。
女性が一方的に暴力を受けるという図はかなり精神的にキツイです。
お父ちゃんもうやめたげて!
映画の中に入ってメンバーどもを羽交い絞めして止めたい気持ちです。
どのような虐待を受けるのか、文字だけでダメージを受ける人もいるかと思いますので省略します。
未見で気になる方はご自身の目で確認して下さい。ある程度の覚悟を持って。


何も聞こえない 何も聞かせてくれない

僕の身体が昔より 大人になったからなのか

 

虐待のかぎりをつくされたアンナは瀕死の状態になり、連中の思惑通り殉教者の目になります。
マドモワゼルは急いでアンナのもとに行き口元まで顔を寄せ聞きます。
「見たのね...いったい何を見たの?」

アンナはボソボソと何か伝えていますが僕らには何を言ったのか聞き取れません。

メッセージを受け取ったマドモワゼルはメンバーを全員招集します。
マドモワゼルが控室で準備するなか代表者がメンバーに伝えます。
「17年の歴史の中、殉教者になれた者はたったの4人。そしてついに初めて証言を聞くことが出来ました。これからマドモワゼルがその証言を皆さんに伝えます」

メンバーが待つなか代表者はマドモワゼルを迎えに行きます。
そしてマドモワゼルに聞きます。
「別の世界はありますか?」
「もちろん」
「ハッキリと?」
「なんの解釈も付け加える必要もないほどね」
「有難うございます」
「あなた死後の世界はどんなだと思う」
「............?」
「疑いなさい」
そう言い残しマドモワゼルは拳銃で自殺します。

いったいアンナは何を伝えたんだー!!!

もの凄いモヤモヤした謎を残して映画は終わります。
出来ればあのボソボソシーンをゴン中山&ザキヤマのキリトルTVで扱って欲しいです。

いろんな推測が立ちますし、中には監督は広げた風呂敷を畳めずに鑑賞者に丸投げした。卑怯だと言われる方もいます。

僕の意見は少し違います。
映画、あるいは僕のレビューでも見返してもらえればわかると思うのですが
この映画は、まずはわからない行動シーンがあり、そのあと答えを出すを繰り返しています。

なぜ銃で一家を殺した?
リュシーを襲う化け物は何?
突然あらわれたメンバーは何者?
組織の目的は?
どんな虐待が行われていたの?

等々いくつものQ&Aを積み上げながらこのエンディングに辿り着かせています。
監督はこの最大の謎を一番効果的に見せるためにこのメソッドを丁寧に辿って行ったんだと思います。

監督がしっかりとした答えを持って撮ったのかはわかりません。
でも僕はこの終わり方は凄く好きだし計算しつくされた持って行き方には感嘆します。
前編で語った「しっかりとしたストーリーと美学」がこの映画にはふんだんに盛り込まれており、悪趣味なホラー映画と敬遠するのはあまりにもったいないなと思うのです。
とはいえ残酷描写はエグイので観る人を選ぶ映画であることは否定しませんが...

 

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ほら朝食も作れたもんね だけどあまりおいしくない

さてこのマーターズ、ハリウッドでリメイクされましたのでそちらも鑑賞してみました。
オリジナルマーターズには88点と高得点をつけましたが、リメイク版に得点をつけるならば38点です。
う~ん、あそこまで酷くなるもんかね...?
過去にニキータがハリウッドリメイクされたときもガックリきましたが、今回はそれ以上です。

古典落語に「目黒のサンマ」という噺があります。
もう笑ってしまうくらい、その噺と全く同じことをこのリメイクはしています。
(よければ「目黒のサンマ」で検索してウィキペディアででも読んでみて下さい)
だから僕は今回のオチをこう言って終わります。

「それはいかん。マーターズは仏、カナダに限る」

おあとがよろしいようで....

 

最後にこの映画を好きな方お勧めしたい作品を紹介して終わります。

・ホステル
・屋敷女
・ハイテンション