アノ映画日和

年間500本以上鑑賞、あらゆるジャンルの映画をイラスト付きで紹介

「サマータイムマシンブルース」 感想 日本の夏、映画の夏

 
季節を感じる映画が観たい!
そんなときはやっぱり邦画ですよね。
日本の四季は邦画じゃないと感じられません。
ありがたいことに邦画には日本の春夏秋冬それぞれにぴったりの映画がちゃんとあります。
これから季節は夏を迎え日増しに暑くなるばかり。
夏!夏!夏!夏に観たくなる映画といえば?そう!
Let’s ヴィダルサスーン!!!
 
2005/日本
監督:本広克行
出演:瑛太、上野樹里、真木よう子、佐々木蔵之助、ムロツヨシ、ほか
上映時間:107分
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80点 

 ざっくりあらすじ

とある大学のSF研究会の部室。クーラーのリモコンが壊れ猛暑に苦しむ彼らの前に、突如現れたタイムマシーン。彼らはタイムマシーンを使って壊れる前のリモコンを取り戻すミッションに挑む。そんな些細なミッションからタイムマシーンに翻弄される様をゆるい笑いに包み描くコメディ映画の傑作
 
39度のとろけそうな日
炎天下の夢 Play Ball!Play Game!
別に邦画じゃなくても洋画にも夏っぽい映画はありますよという意見がありそうですね。
違うんですよ!あんなカラッとしたオフショアの風を連れて来そうなさわやかな夏では全然ダメです。
もっとジメっとしててカルピスを飲んで扇風機の前でああああ〜ってやるのが日本の夏です。
しかも舞台はクソ田舎がいいです。クソ田舎の風景と夏はよく似合います。
サマーウォーズも菊次郎の夏もクソ田舎の夏です。やっぱり絵になるんですよ。
陽炎でゆがむアスファルトを見るだけで、ああ日本の夏だ...と感傷に浸れます。
 
この映画も舞台はクソ田舎の大学。
大学の周りに見える景色は緑の山々。
学園の外の遊び場といえば大衆浴場と誰が観るねん?という様な映画が上映してる映画館。コンビニやスタバなどない正真正銘のクソ田舎です。
たぶんテレビのチャンネルは4つくらいで、
夜にはホーホーホホー ホーホーホホーという鳥の声でうるせえ!となるのでしょう。
 
バカサバイバー!生き残れこれ バカサバイバー!baby
情景の素晴らしさを伝えたあとは素敵なバカたちのことを伝えましょう。
出てくるのはSF研究会の汗臭そうな野郎たち5人とカメラ部の地味な女の子2人です。
野郎たちの会話とノリが思いっきりバカで、こいつら絶対モテねえぞって感じに好感が持てます。
都会のイケてる大学生のパーリィーウェーイみたいなノリは一切ありません。
そんなバカたちの前にタイムマシーンが現れたら、どうリアクションをとるのでしょうか?
 
ここが日付と年...これが未来と過去のレバー...で、これがスイッチ...てことは?てことは?
タイムマシーンでしょ?これ?
うぉぉぉぉおおお!!!
とりあえず乗ってみたりする?
じゃあ昨日の日付を入力したりして?
レバーに手をかけてみたりする?
では行ってらっしゃい!
行ってきます!
ビューーーーン!!!
うぉぉぉぉおおおお!!!
 
て、バカでしょ?でもこのノリが大学生でしょ?
で、タイムトラベルしたやつが帰ってくると
 
お前ど、ど、どこ行ってたんだよ!?
だから昨日ですよ!
そこにカメラ部の2人
見て!昨日のあなた達の写真!
ほらここにあなたが2人写ってる...
だから昨日に行って来たんですよ!これは昨日野球をしてる僕とそれを見てる今日の僕
ほら服も今日の服ですもん
...ということは?ということは?...あなたタイムトラベラー?
うぉぉぉぉおおおお!!!
握手握手、どうもどうも
 
て、なんでやねん

バカすぎるやろ!でもなんでもノリで対応するのが大学生です。
もうそこから恐いとかどういう仕組みとか考えません。
じゃ、とりあえずいつに行く?
うぉぉぉぉおおおお!!!です。
 
で、話し合った結果が壊れたクーラーのリモコンを壊れる前から取ってこようと
すがすがしいまでのバカさ加減がたまらなくいいですね。
大好きです。
 
でも正直、大半の大学生はあんな感じじゃないかなぁ?僕はモロあんな感じでした。
映画好きさんがこぞって絶賛する、どっかの誰かさんが部活をやめるからどうたらって映画が描いた学内カースト制度より、こっちのバカたちの方が僕は断然「あったあったこういうノリ」とノスタルジックな気持ちにさせてくれます。
 
ということで、おバカさんたちのおバカなノリでタイムマシーンはクーラーのリモコン取り戻しミッションに使われることに。
タイムリープといえば壮大な展開が定石ですが、この映画のタイムリープはショボい。ショボすぎます。
まさにタイムマシーンの無駄遣い。
 
でも壊れる前にリモコンを取ってきたら、リモコンは壊れることはないし、でも壊れたリモコンはここにあるし...あれ?あれ?あれ?
タイムリープもののおなじみパラドックスにおバカさんたちは頭を悩ませます。
 
そこでS研の顧問(佐々木倉之助)に相談。
この顧問が説明役として活躍してくれます。
その説明が「サルでもわかるタイムリープの問題点」みたいな池上彰ばりの分かり易さで、物語を追う良いガイドさんにもなってくれてます。
 
とりあえずありえない現象を起こすとこの世が崩壊するおそれもあると知り大慌て。
ここからもうしっちゃかめっちゃか展開でゆるい笑いのドミノ崩しが楽しめます。
 

サマータイムブルース!サマータイムブルース!次の波やってきたら

もともとは舞台演劇の映画化ですから、会話のやり取りや行動の妙、そしてテンポや間が脚本の命です。そのどれもが素晴らしい!もういちいち笑いのツボを攻めてきます。
コメディ映画のネタバレほど愚の骨頂はありませんからこの先は語りませんが、ハリキリスタジアム、ヴィダルサスーン、おいツーペアなどワードチョイスの秀逸さだけでも脚本家の笑いのセンスの高さを感じ取れます。
 
あとこの映画は今思えば豪華キャストですよね。瑛太に上野樹里、真木よう子でしょ。わきには佐々木倉之助やムロツヨシですよ。それぞれが今や単体で客を呼べる俳優、女優さんです。

でも僕がこの映画で1番好きなのは永野宗典さんです。S研内の後輩を演じる彼です。
彼の部内イジラレキャラの立ち位置と後輩面は演技の枠を超えてます。
この人、自分の友達じゃなかったっけ?と思わせるほど。
この映画の主演陣が現在売れっ子さんになっている中なぜ彼はまだ売れっ子になっていないのでしょう?不思議で仕方ありません。
 
と、まあ今回は映画の大枠と要所要所をかいつまんで語る形の紹介となってしまいました。もっともっと触れたい魅力や笑いがあるのですが、この映画は細かな笑いや物語を綿密に計算され積み重ねられて構成されています。
伏線の貼り方や回収の仕方もお見事!サスーンクオリティです。
僕の下手な文章力で変な取り上げかたをするとジェンガのように崩れてしまい、未見の方の楽しみを奪う恐れが高いです。
だからこんな感じの紹介になりましたが、鑑賞済みの方なら何となく言いたいことは伝わったのではと信じてます。
 
未見の方はもちろん、鑑賞済みの方ももう1度、この夏はサマータイムマシーンブルースを観て、日本の夏、映画の夏を感じてみてはいかがでしょうか。
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最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい映画を紹介して終わります。
・曲がれスプーン
・UDON
・笑の大学