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アノ映画日和

年間500本以上鑑賞、あらゆるジャンルの映画をイラスト付きで紹介

「湯を沸かすほどの熱い愛」感想 久々に母の顔が見たくなりました

 

知ってますか?

人間の体の約70%は水分で出来ているそうです。
そのうち20%ほど失ってしまうと死ぬ事もあるそうですよ。
怖いですね、ギリギリでした。

何が?って、この映画を観て流した涙の水分量ですよ。
致死量限界まで泣いたんじゃないかな?

皆さん、くれぐれも水分補給はしっかりしてご鑑賞下さい。

 

2016年/日本
監督:中野量太
出演:宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー、伊東蒼、松坂桃李、ほか
上映時間:125分

f:id:hagane-mk:20170508044418j:image90点

ざっくりあらすじ

銭湯「幸の湯」を営む幸野家。
今は母双葉(宮沢りえ)、娘安澄(杉咲花)の2人暮らしで休業中。
夫の一浩(オダギリジョー)は1年前より失踪中。
そんなある日、双葉はパート中に倒れ病院へ。
末期癌であることが発覚。
しかし落ち込んでる暇はない。
双葉には死ぬ前にやらなくてはいけない事があるのだ。

 

探さなきゃね 君の涙のふるさと
頬を伝って落ちた雫がどこから来たのかを

「感動の」とか「世界中が泣いた」みたいな映画苦手なんですよね。

どれくらい苦手かって、アンビリーバボーで感動の〜になった瞬間チャンネルをかえる位は苦手です。

涙の押しつけっていうか
泣いたらなんか負けたみたいだし
泣けなかったら人としてどうなの?と引け目を感じるし
どっちにしろ良い気分にならない

特に闘病もの!

涙の押しつけの極みですよ

卑怯じゃない?
つまらなくても文句言えないじゃない
可哀想でしょ?同情しちゃうでしょ?はい泣いて下さい
て、人の苦しみで泣かそうだなんて、創り手としてどうなのよ?

ね?

ということで、今回ご紹介する「湯を沸かすほどの熱い愛」
タイトルからもうサライが聴こえてきそうです。

余命2ヶ月の母…出たよ!

命の尊さを問うみたいな
本来僕が見向きもしない映画です。

同じ様な印象を持ち避けてる方もいるんじゃないでしょうか?

ご安心下さい。

今作は涙の押しつけではありません。
涙のお届けものです。

良ければ受けとって下さい…みたいな
無理に泣かなくて良いですから…みたいな

そんな素敵な物語、ちょっと前置きが長くなりましたがこれから内容に触れていきます。

重要なネタバレは回避するつもりですが、つい…てな事もあり得るので未見者はまずTSUTAYAに行って下さい。

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生きる力を借りたから
生きている内に返さなきゃ
涙や笑顔を忘れた時だけ 思い出して下さい

湯気のごとく店主が蒸発しました。
当分の間、お湯は沸きません。
幸の湯

こんな一文が書かれた貼紙の映像から物語は始まります。
これだけでこの映画がいかにユーモアを大事にしているのかが分かります。

で、闘病系って、大概前振りが長い。
家族愛を先に見せといた方が後々同情させやすいから。
ところが今作は序盤であっさり双葉さんが倒れて癌が発覚。
あと余命2ヶ月ですよ〜ってところから始まります。

あ〜〜こっから娘と頑張る辛い闘病物語か…なんて思っていると

よし、2ヶ月か、やらないかん事がいっぱいあるぞ!という展開。

まずはミッション1、探偵を雇って消えた夫探し!

これまたアッサリ見つかります。
愛人つくって子どもがいて、しかもその愛人には逃げられてるというダメダメ亭主。
オタマで頭カチンと叩いて、私あと2ヶ月で死ぬからと旦那とその連れ子を連れて帰ります。

とんだ肝っ玉母ちゃんです。
同情してる暇がありません。

とりあえずミッション1クリアです。

旦那を連れ帰ったから
ミッション2、銭湯「幸の湯」復活!

夫婦はもちろん娘の安澄、連れ子の鮎子ちゃんも働くことに。
働かざる者喰うべからず!
これが幸野家のルールです。
近所の皆さんも駆けつけお店は大繁盛!ミッション2クリアです。

ミッション3、安澄を強くする!

安澄ちゃん16才は心優しいのですが、そのせいか学校ではいじめられっ子。
ある日、体育の時間中に制服を盗まれるという虐めにあいます。
もう翌日は学校に行きたくないと。
体操着で学校に行きなさい!と叱る母に

「私はお母ちゃんみたいに強くないから!」

すると双葉は悲しそうに呟きます。

「変わらないよ...安澄もお母ちゃんも...」

その言葉を受け安澄は体操着で登校。
案の定、虐めっ子に
「次の授業、体育じゃないんですけど?」
とバカにされます。

すると授業中、突然安澄は体操着を脱ぎ下着姿に
慌てて服を着なさいと注意する先生にひと言

「嫌です...だって今は体育の授業じゃないから!」

そう言って倒れ保健室へ
保険室にはそっと制服が返されてありました。

安澄よぉやった!
しかも付けてた下着はお母ちゃんが、いざって時に着なさいって買ってくれてた下着なんです。
これぞ勝負下着!
ミッション3クリア!

安澄を道でずっと待ってたお母ちゃん、制服姿の安澄を見てひと言

「頑張ったんだね...」
「うん...ちょっとだけお母ちゃんの遺伝子があった」

そう言って抱きしめ合う2人

うえ~~ん!

ここ!ファーストCryね!

※え?杉咲花の下着姿見れるの?じゃあ見よ!ってなった奴!それもアリ!


愛をこめて花束を 大袈裟だけど受け止めて

理由なんて訊かないでよね

ミッション4に移行する前に新たな追加ミッション発生。
連れ子の鮎子ちゃん行方不明
慌てる家族にお父ちゃんがひと言
「あ...今日鮎子の誕生日だ」

どんだけあかんねんこの親父!

きっとお母さんが帰って来てくれると信じて前の家にいるはず。
急いで向かう双葉と安澄。
玄関前に体育座りで待つ鮎子ちゃん。

優しく声をかけ鮎子ちゃんを家に連れ戻します。
そして夕飯。
幸野家では特別な日の夕飯はしゃぶしゃぶと決まってるのです。

食の進まない鮎子ちゃんは箸を置き、泣きながら言います。

「これからはもっと...もっと一生懸命働きます。で、どうか...出来ればで...良いのですが...この家にいたいです。でも...でもまだ...ママのこと...好きでいても...いいですか...?」

「バカ!あたりまえじゃないの!」

で、この即席家族は一緒にしゃ~ぶしゃ~ぶと言いながら食事をするのです。

おろろ~ん!!!

こんなんあかんねん!おっちゃんこんなん泣くやつやねん。

セカンドCry&特別ミッションクリア!

ミッション4家族旅行(お父ちゃんはお留守番)
双葉はお父ちゃんに全部話してくるから...と言い残し3人は車に乗り込みます。
当然、病気の事を子供たちに打ちあけるんだな、と思いますよね?
それもあるのですが、実は双葉にとってそれよりもっと重要なミッションがありました。

ああ!書きたい!でもこれは書けない!

ここまでで、え?何?今のシーン?いる?て箇所が何か所かあるのですが
それが見事に回収されます。
それが泣きに繋がります。

スーパーCryです!

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la la la…la la la...言葉にできない

ミッションは全て達成しましたが、いよいよ双葉さんの病状が悪化。
入院を余儀なくされます。

ここまで自分の事は投げ置いて家族の為に余生を使ってきた双葉さん
聖母マリアかよ!
と感動のアンビリーバボー感がよぎります。

しかし

たった1つ、たった1つだけ、自分の為に時間を使います。

その願いは探偵の力を借りて果たせた?のですが、
もうその願いがここまでの全てと繋がっていて

ガオォ~~!!!

スペシャルCryです。

で、通常ならここでエンディングに向かうのですが、今作はまだ泣かせに来ます。
涙のお届けが過ぎます。

あのダメダメ亭主が皆に土下座でお願いして
あることを病院の双葉さんに届けるのですが、

それを見た双葉さん。
これまで常に弱音を吐かなかった双葉さんが思わず

「生きたいよ...死にたくないよ...」

とこぼします。

それ観ちゃったら、

が〇#お÷?%$え△あ

Cry Cry Cry‼

もう言葉に出来ないし、涙が致死量寸前まで零れます。

で、結局双葉さんはお亡くなりになるんですがね、
この監督さん、まだ届けて来るんですよ
もう中元シーズンの社長室の如く涙のお届けものでいっぱいです。

それは家族だけの内緒のお見葬り
内容は書けませんが、それを行う前の旦那と探偵の会話を置いときます。

無茶ですよね?
はい、無茶です。
ダメですよね?
はい、ダメです。
すみません、面倒な事に巻き込んで...
いえ、全く問題ないです。
あの人の為やったら何でもしてあげたいっていうか、たぶんそれってその何倍もして貰えてるって思えるからじゃないかな...

こんな会話がなされるぐらい、倫理的に法的にどうなの?てことが行われます。
でも僕はこれを見て

湯を沸かすほどの熱い愛ってこういうことか...

パチ...パチ...
パチ...パチ...
パチパチパチパチ!

ひとり号泣しながらスタンディングオベーションを贈りました。


やさしさに包まれたなら きっと

目にうつる全てのことはメッセージ

なんだ結局泣かせ映画か、悲しい映画か?
しかも伏せている部分が多すぎて何が悲しいのかも分からんし!
スルースルーとお思いの皆さん、ちょっと待って下さい。

僕の説明下手は認めますが、スルーは勘弁して下さい。
悲しいし泣ける、それも事実です。
でも泣いてる間、僕の口角はずっと上がっていました。

今作は闘病もので悲しい映画ですけど、その悲しさよりももっと大きな優しさで包まれています。
涙の形が崩れないかの様に

ふわっふわっで柔らかい優しさで

だから僕は今作は悲しい映画ではなく、優しい映画として紹介したい。

でもこんな捻くれ者の僕が何故こんなに自然に感動して泣けたんだろう?

それはこの映画の監督さんが本当に映画が大好きってことが伝わるから。
映像からセリフから映画愛をビシビシ感じます。

で、映画好きさんの事も同じように好きなんですよ。

だから、鑑賞者を信用してくれてる。

ここ多く説明し過ぎないですけど分かってくれますよね?という撮り方。
冒頭の貼紙、姉妹や親子の呼び方の変化、それぞれ強くなっていく心...etc
そこに設定、病状の悪化、家族の絆の深まり、映らないシーンとシーンの間が伝わります。

無理矢理、過剰、説明臭い、わざとらしい、そんなセリフやシーンは排除。
その分大事なシーンやセリフを丁寧に魅せる。

え?ていうシーンの後も
必要最低限の動きとセリフで
あ、なるほど‥とさせます。

そうすると少し映画の尺に余裕が出来ます。
その余白には映画全体の雰囲気を創る暖かく柔らかいシーンを。

だから感動出来るんです!

本当に素晴らしいです!

よし、そこまで言うなら観てやろうってなりませんか?

なってくれたなら借りる時はくれぐれも最大日数で借りて下さい。

あるいは買って下さい。

この映画は絶対追い焚きしたくなりますから!

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追伸、この記事を書いてる間にタイトル通り母の顔が見たくなり会いに行って来ました。
そしたらもうギャーギャー近況報告と愚痴でうるさいうるさい。
そうでした、うちの母は宮沢りえではなく
千と千尋の湯婆婆でした...
タイトル、久々にサンタフェが見たくなりましたに変えよかな。

湯を沸かすほどの熱い愛 通常版 [Blu-ray]

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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・紙の月
・東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~
・八日目の蝉