アノ映画日和

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「地獄でなぜ悪い」感想 園子温監督の長谷川博己と星野源の使い方が上手すぎる

 

僕は人よりも沢山映画を観ている。
が、自分の映画を観る目を疑っている。

むか~し、まだ僕が学生をしていた頃、「羊たちの沈黙」を観た。
事もあろうに当時の僕はつまらないと思ってしまった。
それから時間をおいて何度か観ている。
観れば観るほど好きになり、今ではオールタイムベスト級に好きな映画だ。

なぜ初見時つまらないと思ってしまったんだろう...

あれから沢山の映画を観てきた。
それなりに映画を観る目も養ってきたつもり、
だった...でも僕は自分の目を疑う。
この映画を初見時つまらないと思ってしまったんだから...

 

2013/日本
監督:園子温
出演:長谷川博己、二階堂ふみ、國村隼、堤真一、星野源、友近、ほか
上映時間:130分

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85点

ざっくりあらすじ

映画の神様を信じ続ける映画狂の監督、平田。
子役時代CMで大人気だった女優、ミツコ。
その父親でヤクザの親分、武藤。
武藤の対抗組織の親分でありながらミツコのファンである池上。
偶然の出会いからミツコの恋人を演じることになった男、公次。

日々激化していく武藤組と池上組のなわばり争い。
そんな中、武藤は服役中の妻の出所祝いの為にミツコを主演に映画を撮ることにする。
その監督に選ばれたのはミツコと偶然出会ってしまった公次。
武藤は池上組への殴り込みをそのまま映画にすることを命令するが、公次は恋人のふりをしているだけで映画の知識などない。
困り果てたあげく頼ったのは映画狂の監督平田だった。

この映画は先に紹介した5人を中心に繰り広げられる、バイオレンス...

コメディである。

 

SORRY BABY 誰かさんみたいに 俺に明日見えないから

一度つまらないとジャッジしたこの映画をなぜ再び観ることにしたか、
それは僕が長谷川博己の大ファンになったからだ。

長谷川博己が開けた好きという入り口から入ってみたら、これが面白い。
最初から最後まで面白い。
当時の僕に聞きたい

「この映画のどこを観てつまらないと思った?」

もちろんこの映画にかかわらず、2度目の鑑賞で感想が変わるという事はあります。
でもそれは良くも悪くも誤差の範囲です。

初見の僕がこの映画に点数をつけていたならばおそらく40点。
今回の採点と45点の開きがあるわけです。
これは誤差と呼べる範囲ではない。

誤報だ!僕が有名人なら正式な謝罪会見を開かなくてはいけないレベルだ。

45点分の罪として45回この映画を観ろ!
今10回観ているからあと35回罪を償え!

さて、あらためてこの映画を観てみると演者がみんなキラキラしている。
主演から端役までみんな俺は私は

今、確実に面白い映画に出ている

という自信に満ち溢れている。

そこでふと思う、
この映画の主役は誰だろう?
長谷川博己でもいい気がするし、二階堂ふみでもいい気がする。
國村隼、堤真一、星野源でも全然良い。

誰を主役として観るかでまた印象が変わって面白い。
(未見の人はパルプフィクションやレザボアドッグスをイメージしてもらえると良い)

でも僕は先に述べたように長谷川博己が大好きだから長谷川博己を中心に観てしまう。
この映画の長谷川博己は良い!実に良い!

役者に勝手なイメージを持って観るのはどうかと思うが、この映画には僕のイメージする長谷川博己がいる。


注)以下、イラストまで長谷川博己風マシンガン口調で読んで下さい。

映画バカ集団ファックボンバーズを統べる監督であり映画狂人平田。
俺は金のために映画なんて創る気はない。
そんな事をするのは日本映画をダメにするバカどもだ!
いつか生涯に1本の映画を創る。それが出来たら死んでもいい。
今日がその日かもしれない!
映画の神を信じ自分の世界に酔い、自己陶酔なセリフを連発する。
ヤクザの殴り込みを撮影するというとんでもない世界に巻き込まれても
おお!映画の神よありがとう!フォォォオ!
と奇声をあげ歓喜する
これが長谷川博己だ!これこそが長谷川博己だ!
This is 長谷川博己!

フォォォォォオオオオ!!!!!

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最高だ...最&高としか言いようがない。
わけの分からん巨人を倒すリーダーなど鼻で笑ってしまう。

すみません、ちょっと興奮して言いすぎました。

他の役者さんにもふれましょう。
そういえば誰だ?このチワワみたいなヤツってのがいました。

星野源というらしく、えらい女性人気の高い役者であり、歌手であり、コメディアンでもあるみたいなマルチな有名芸能人みたいです。

へ~~こんなチワワみたいなヤツが人気なのか...と不思議ですが、この映画で演じる公次はいい感じです。

ヤクザの娘に突然声をかけられて1日私の恋人を演じてとお願いされる童貞臭い青年。
これは園子温監督の過去エピソードで聞いたことがあるので、監督自身を投影した役なのでしょう。

ミツコに惚れてヤクザの親分に殺されかけますが、
自分は映画監督だ!ミツコを撮れるのは僕しかいない!
という嘘で切り抜けます。

常にオドオドした感じとコカインでぶっ飛ぶとことか、思いっきりふりきったダサさとカッコ良さを演じる良い役者さんですね。

ちなみにエンディング曲も彼の曲でかなり良かったです。
それで他の曲も聴いてみたらアーティストとしても一流でした。
でもチワワみたいなんだよな...

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嘘で出来た世界が 目の前を染めて広がる
ただ地獄を進む者が 悲しい記憶に勝つ 

物語は平田、ミツコ、武藤、池上、公次、5人の太いエピソードという柱を前半建てといて、終盤殴り込み撮影というデッカイやぐらをその上に乗せます。

やくざ組同志の殺し合いとそれを撮る奴でもうグッチャグチャです。

もともと僕は園子温作品に対して、
血の量=エンターテイメントなのか?
と疑問を感じることが多かったのですが、
この作品で血の量=エンターテイメントでなぜ悪い!に変わりました。(もちろん使い方によります)

それくらい血は飛ぶ、腕飛ぶ、頭飛ぶのオンパレード。
それを意気揚々と撮影するファックボンバーズ。
もう狂気の世界です。

それが目をそむけたくなる様なグロテスクではなく、スカッ!シュパッ!と気持ちいい&笑えるエンターテイメントとして映るのですから凄いです。

またこれだけグチャグチャに入り乱れても、何がどうなってるのか分からないという状態になっていません。
前半で主要人物のキャラを色濃く見せてくれてるので、その人物が出ているだけで今この場面は誰が何をしようとしているのかがハッキリしてます。

しかも争う組も武藤組は洋服、池上組は和服という親切設定。

笑いや演出はシュールでも、枠は分かり易くハッキリと

簡単なロジックですが、多くの映画がこれをおろそかにして訳の分からん事にしてしまいます。

う~ん凄いなぁ...つくづくなんで初見でつまらないと思ったのか不思議です。

ですが、いまだにここは...というところが1つだけあります。
それはラストもラストエンドロール前です。
平田が血だらけになりながらも歓喜の表情で

ファックボンバーズ~♪ファックボンバーズ~♪

と歌いながら走り去るのですが、そこに

カット!

という声でエンドロールに入ります。

今まで夢のような世界に浸らせてくれてたのに、なぜ急に現実に引き戻す様な終わり方を...?

僕はいつもあそこの手前で、歌い走る平田で停止ボタンを押したくなります。
星野源の歌を聴きたいから最後まで観ますが...なんで?なんであの終わり方なの?

 

それからそれから、え〜っと、あれ⁉︎もうこんな文字数?

 

まだ佐々木のアクションのことも二階堂ふみのお色気も、堤真一の顔芸のことも語ってないのに?
でもいつもお前のブログは長いと言われるからな…仕方がない、諦めるか…


さて、今回は自身の懺悔を語るようにあらすじを追わず、この映画への愛情を表現してみました。
このブログを読んだ、この映画が大好きな方達に、何よりもこの映画に携わった方々に

お前はもうこの映画を大好きだと言っていいよ

と思って貰えれば幸いです。

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追伸、天下一品のラーメンも最初不味ッ!と思ったのに今ではたまらなく好きなので
天一のこってり≒園子温ムービー
と捉えていますがお間違えございませんでしょうか?

地獄でなぜ悪い スタンダードエディション [DVD]

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 最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ラブ&ピース
・愛のむきだし
・KILL BILL 

星野源ファンの方は是非こちらの過去記事もどうぞ
↓ ↓ ↓ ↓

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