最初に凄く矛盾したことを言います
このリメイク映画は
面白かったので減点だ
面白かったので失敗だ
面白かったので面白くなかった
貶しながら逆に褒める
そういうトンチみたいな事じゃありません
言葉どおり捉えて下さい。
僕はこのリメイク映画を否定しているのです
???
意味が分からないでしょう
ですからじっくり説明させてもらいます
2017年/日本
監督:入江悠
出演:藤原竜也、伊藤英明、仲村トオル、夏帆、ほか
上映時間:116 分
65点
ざっくりあらすじ
かつて日本を震撼させ未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件
その犯人が22年の時を経て自ら名乗り出、告白本を出版した。
その男の名は曾根崎雅人
曾根崎はその行動、容姿の美しさから一躍時の人となる。
崇める者、怒れる者、恐れる者…人々は彼の存在に困惑していた。
しかし、これは新たな事件の始まりに過ぎなかった...
今春が来て君はきれいになった
去年よりずっときれいになった
あそこがダメだ、ここがダメだとダメ出しする前に今作の良かったところを先にあげます。
今作は2012年公開された韓国映画「殺人の告白」のリメイクです。
僕はその殺人の告白が大好きで最初に観た時は、なんて優秀なプロットを思い付くんだと感心させられました。
と、同時にあそこがな~と不満も幾つか抱えました。
で、今作のリメイク版です。
僕が抱えていた不満点を聞いてくれたかの様にプロットだけを上手く使い改善されていました。
その1 変なアクションシーンはカット
この映画の肝は犯人と刑事の頭脳戦でアクションは邪魔だなと感じていました。
あり得る話として見せたいのかフィクションとして見せたいのかあやふやになるからです。
車から車に飛び移りわぁーわぁー
いらん、いらん、いらん
日本版では大幅にカット、これは英断と言うべきですね。
(単純に道路交通法的問題と藤原竜也サイドのNGかもしれませんが...)
その2 被害者遺族視点を大幅カット
オリジナルの構成は
刑事目線5:名乗り出た男目線3:被害者遺族目線2
ぐらいの割合でした
真実から目をそらさせる為の手法かもしれませんが
目が散る
特に被害者遺族の奮闘ぶりはこれいるかぁ?と首を傾げていました
日本版では
名乗り出た男(曾根崎)6:刑事3.5:被害者遺族0.5
ぐらいの割合、うん刑事よりも曾根崎を中心に描きたかった訳ですね。
目線は変わっても内容を変える事にはならないので、この改変はアリですね。
その3、殺人犯の美学
オリジナルの殺人は特に記憶に残ってないんですよ
あれ?どうやって殺してたっけ?て感じ
猟奇殺人犯を描くのにこれは頂けませんね
そこで日本版は犯人に偏った美学、ルールを持たせ記憶に残す事に成功しました。
一つは絞殺へのこだわり、もう一つは親しい者の目の前で殺害するという残虐性
これ、これ、これ~
猟奇殺人犯はそうでないと。
思わず裏の厨二が発動します。
あとキャストも良かったです
「はじめまして、私が殺人犯です」
と名乗りでて、その知的さと容姿の良さからキャーキャー言われる
その曾根崎役に藤原竜也
もう彼しかいないでしょ、というハマり具合
見た目良し、演技良し、危険性良し、
うん、彼しかいない
伊藤英明は...悪くないんだけどちょっと思うところがあってミスキャストかな...
それは後ほど書きます
事件から時効までに日本で起こった震災などを物語に組み込んだのも良かったですね。
フィクションなんだけどリアルを感じさせるのに一役かってます
更にはそこに妹を殺された刑事の想いを上手く乗せました。
そんな妹さんが殺されたなんて、時効で許せるもんじゃねえなと自然に誘導されます。
そして何と言っても最も上手くリメイクしたなぁと感心させられたのが
韓国と日本の時効という法制度の違いのクリア
韓国では時効はありますが、現日本では死刑に値するような犯罪に対しての時効はありません。
ありませんというか無くなりました。
この無くなったを上手く利用しました。
明確にここからは時効無し、ここまでは時効アリというラインがあります。
曾根崎は時効無し法案が適用する1日前に犯罪を終えているので、22年経って堂々と表に出て来た。
その1日の差に犯罪の重い軽いは関係ないのにという僕らの苛立ちを上手く利用されています。
上手い!
鑑賞者が曾根崎に向ける感情をより複雑にしています。
さぁ、これだけ褒めちぎったからそろそろダメ出しいきましょうか
ダメ出しにあたりネタバレ不可避となりますのでご注意下さい
真実 おお 真実
真実だけが頭を垂れる
ダメ出しそのちょい前にあらすじを少しだけ追わせて下さい
一躍時の人となった曾根崎
彼は更に世間を煽るように被害者遺族に謝罪に行ったり、寄付したりします。
そして話題が膨らむ中、ニュース番組は曾根崎と当時の担当刑事であり被害者遺族でもある牧村(伊藤英明)と対談を持ち掛けます。
その番組を仕切るのは人気キャスター仙道(仲村トオル)
番組放送中、俺こそが真犯人だと名乗る者が現れます。
そいつは犯人しか持ちえない映像を動画サイトにアップ
番組、世間の目は真犯人はどっちなんだ?という点に集中
そして番組は曾根崎、牧村、仙道に真犯人と名乗る者を加え2回目の放送に挑むことになります。
真犯人と名乗る者は犯行時の映像を更に持ち込みました
そこでこいつこそが真犯人であるという事が確定します。
その時、曾根崎が犯人に襲い掛かります
仙道キャスターはスタッフに制止された曾根崎に聞きます
「あなたは何者なんだ?どうして告白本なんか出版したんだ」
「あれは僕が書いたんじゃない」
「じゃあ誰が書いたんですか?」
「私です...」
名乗り出たのは牧村刑事
ええ~~!!!
の場面ですが、オリジナルを知ってる僕は驚きません。
て言うか、オリジナルの刑事は見るからに粗暴な人間で本なんか書きそうにないキャラが良かったのに、伊藤英明のキャラって...なんか書きそうやん
もっと荒々しい役者の方が良かったんじゃね?ミスキャストじゃね?
ま、とにかく牧村と曾根崎は手を組み、世間の注目を浴び大金を得ることで真犯人を炙り出そうとしていた訳です。
曾根崎は実は牧村の妹の恋人で、恋人を殺害されたショックで自殺をし重症は負いましたが生き残りました。
その時、顔の整形を行い今回の作戦を実行する事を2人で決意したのです。
で、まんまと真犯人は番組までおびき出されたと。
ここまでオリジナルと同じですね
真犯人は当然追及されますが
番組に来ていたのは真犯人に金で雇われて行動しただけの偽物でした。
ええ~~!!!
オリジナルと違う~~
ここからネタバレ、ダメ出しラッシュとなるので更にご注意下さい
も し も
間違いに気づくことがなかったのなら⤴
ここを読んでるのは鑑賞者のみだと思うので簡潔に言います
真犯人は誰だ?
仙道キャスターだ!仲村トオルだ!
ええ~~!!!
オリジナルの時間をかけ2人がおびき出したのが何でもない普通の奴ってのが良かったのに~
何というか曾根崎が芸能人の様な特別な人間となってまで苦労して辿り着いた奴がこんな奴というモヤリ感が...
オリジナルにはあった普通だからこそ気持ち悪いというモヤリ感が...
「特別な人間」に成りすましておびき出したのが「特別な人間」て
ある意味報われてるやん!
モヤリ感、そうモヤリ感がなくなってるんです。
意外性という面白さを手にした反面、最も大事なそれを失ってしまいました。
ここからモヤリ感をどんどん失くしていきます
なぜ曾根崎は仙道を犯人だと気づいた?
→曾根崎と殺された彼女だけが知っている婚約していたという事実を知るはずのない仙道が口にした
それを知った曾根崎はどうした?
→仙道宅に侵入し仙道を襲い真実を聞いた
なぜ仙道は人殺しになった?
→記者として行った戦場で捕虜となった。
その時に目の前で仲間が殺された事がトラウマとなり、そのトラウマが犯罪者にさせた
結局仙道はどうなった?
→逮捕され(最後の犯罪は時効が無くなった後に行われたものだったから)、移送中に遺族に刺された
5W1H
犯罪映画は動機あるいは結末、どこか不透明でモヤらせるのが大事です。
ところが日本人は真面目なので
いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、どうしたをきっちり説明したがります
スッキリー!
て、犯罪映画でスッキリさせてどないすんねん!
火サスか?これは火曜サスペンスなのか?
確かに全てが明らかになって面白かったですよ。
でも何も心に残らない
だって謎がないんだもの
冒頭の話、ご理解いただけたでしょうか?
面白かったので減点だ
面白かったので失敗だ
面白かったので面白くなかった
今作は分かり易く面白かったからダメなのです。
ハリウッドさんあたりが両作を参考にして、もう1度リメイクしてくれないかなぁ...
追伸、劇場公開中に観に行った姉が面白かったと言っていたので
韓国のオリジナルは刑事が最後犯人殺してしまうんやでと教えてあげたら
そんなんあかんわ!
と怒っていました。
でもラスト改変はダメじゃない?と言うと
あれでスッキリしたから良いねん
とのこと、映画の感想は人それぞれですね
ちなみに姉は最後まで
23年目の告白面白かったわ~
と謎の1年が足されていました...
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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります
・殺人の告白
・悪魔は誰だ
・真夏の方程式