アノ映画日和

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「ちはやふる下の句」感想 上の句の余熱と松岡茉優という華、それだけでは物足りない

 

長編原作を実写化する際、二部作にする。
これはもう邦画では当たり前化している。
ボリュームの都合、経済効果を考えると悪い事ではない。
なにはともあれ劇場に人を集める、それは大事だから。

でももっと腰を据えてその世界ととことこん付き合おうという気概が見えない。
ハリーポッターの様に続編でありながら時間をかけ1作1作に全精力を注ぐ熱量、それがない。

ちはやふる、上の句で感じた熱量は下の句では感じられなかった。
今回はやや厳しい事を書くつもりだ。
この作品を好きな方は読まない方がいい。

2016/日本
監督:小泉徳広
出演:広瀬すず、野村周平、真剣祐、松岡茉優、ほか
上映時間:103分

f:id:hagane-mk:20161023220416j:image50点

ざっくりあらすじ

念願の競技かるた全国大会の出場を決めた瑞沢高校かるた部。
千早はこれで自分にかるたを教えてくれた幼馴染 新と会える。
千早は新に電話をするが、新が返した返答は
「もうかるたはやらん...」
というものだった。
新の真意とは、そして全国大会瑞沢高校かるた部の行方は...

 

あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ…
全てが思うほど うまくはいかないみたいだ

今回このブログを書くのは悩みました。
上の句鑑賞後あれだけ泣いた僕が、下の句鑑賞後には素うどんみたいな顔になっていたからだ。
なんの感情も動かず鑑賞前に用意しておいたボックスティッシュはそのまま片付けられた。

書かないことでお察し下さいという手もあるが、それは逃げの様な気がした。
上の句を書いたなら下の句についても書くべきだ。
ちはやふるファンを敵にまわす覚悟で。

鑑賞前の僕の予測は
瑞澤メンバーの全国大会で味わう挫折と、立ち上がり再奮起するスポ根的ストーリー。

あるいは、上の句ではあまり目立たなかった新の復活劇を軸としたチームちはやふるメンバーたちの熱い青春ドラマ。

どっちにしろ熱い話になるだろうな、こりゃまた泣かされるぞっとワクワクしながら再生ボタンを押した。

しかし結果、あれもこれも入れどれもが中途半端な表現となったよくある漫画原作映画。

芸能界の人気者たちの華でファンを喜ばせる接待映画だった。
今年の熱い邦画界の口火は上の句が切ったと確信していた僕は落胆した。

 

登場人物で言うと
まず、千早。
上の句であれだけチーム、チームと熱くなっていた彼女が新の「かるたやめる」発言により意識が変わる。
強くなった自分を新に見せたい気持ちはクイーンに勝ちたいという気持ちになり、チーム戦より個人戦にご熱心。
しまいには太一に部を追い出される始末。
後に部に戻るが、自分で下げた株を最初の位置に戻しただけで、なんかキャラ崩れにがっかり。
思春期の高校生によくある精神の揺れ動きというものかもしれないが。
ああいう熱血キャラはぶれない方が見やすいなぁ。


次に太一
こいつが一番のガッカリだ。
上の句で1番泣かせてくれたのが太一だっだ。
イケメンで何をやらせても完璧な男が実はかるたの才能に恵まれずコンプレックスの塊。
そんな彼が千早の為、メンバーの為になりふり構わず努力する、その姿に心打たれた。

今回の彼はどうだ。
部長として厳しく千早を部から追い出し、帰ってきたら優しく迎える。
その間に地方大会でサクッと優勝してA級入りしている。
部のメンバーに力を与える為、大会ではサクッとかるたをとりノールックでその札をかかげる。
個人戦、苦戦する千早の肩に無言でポンポン...

た、ただのイケメンやん!!!

そんなんいらんねん!泥臭さを見せてなんぼのキャラちゃうんかい!

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次、新

上の句であまり見せ場のなかった彼、今回はその分活躍して欲しかった。
だってこの物語は幼い頃、かるたを通じて出会った3人の物語が主軸でしょ?
その始まりは新でしょ?
彼に見せ場がなくてどうするのよ?
眠れる獅子復活、お帰りヒーローのごとく鬼神の強さを見せて、

やっぱ新は凄え!待たせやがってこの天才!

てのは必須でしょ!
それがサブイボ(関西で鳥肌の意)ポイントでしょ!
なんか、やめるって言ったけどやっぱり俺かるた好きだくらいの中途半端な帰り方させるなよ。
なんかいいこと言うふうなキャラで締めくくってたけど、それは國村隼の仕事や!

 

次、物語の展開。
期待していた団体戦スポ根展開はなし。
初戦で千早がぶっ倒れて目覚めたときには団体戦終了。
謝る千早にメンバーは清々しい顔。
なんか、みんな納得できる試合が出来たんだって。
ほな、それを見せんかい!
机君が初めて試合で勝てたらしいやんか。
それって上の句観た人がめっちゃ見たいポイントやんか。
瑞澤1勝!!!

泣きながら叫ぶ机君が見たかったよ...

上の句の東京予選で負けた北央高校かるた部が、自分達が全国の為に用意した他校の分析ファイル。
それを瑞澤は貰ってるんですよ。
託されてるんですよ。
清々しい顔で、さぁ次は個人戦、個人戦って気持ち切り替えるのは団体戦にかけてきた思いが軽すぎるんじゃありませんか?
千早の前では笑って、影で泣く...それぐらいの悔しさは持ち合わせて欲しかった。

 

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きれいだね 君こそ我が誇り
DEAR WOMAN

不満を次々言いながら、どうのこうので最後まで楽しく観れたのは上の句の余熱に他ならない。
もう彼らが好きになっていたので、彼らが画面に映っているだけで何やら楽しい気持ちになる。
それは上の句から下の句公開までの期間が短かったからこその余熱だが、所詮は余熱。
加熱がないと...期間を開けてでも熱く魅せることを意識して欲しかったな。
上の句も下の句も同じ鑑賞料取ってるんだから。

ただ1点、加熱ポイントはあった。
それがクイーンを演じた松岡茉優

まさにクールビューティーっていう感じ。
その美しさは広瀬すずを喰うぐらいの存在感。
また演じた若松詩暢(しのぶ)というキャラが良かったですね。

美しさに加え超毒舌は氷の女王という感じで風格バッチリ。
それでいて私服は超のつくクソダサさ。
ゆるキャラTシャツをパンツイン、水筒幼稚園掛けファッションって。
こういうのギャップ萌えっていうんでしょ?

で闘い方もいいんですよ。
バタバタするのが競技かるたの中、音を立てずスッと取るサイレント女王。

かっちょいい!!!

彼女の存在でこの映画はだいぶ救われましたね。

そんな女王と千早の対戦が今作1番の見せどころかと。
個人戦なんだけど仲間との繋がりで女王を追い詰めるって展開。
そこで國村さんの名言

「私はね個人戦こそが団体戦だと思ってるんですよ...」

なんのことやねん。
わかるよ、わかるけど、上の句と下の句に矛盾無しって見せるための強引なセリフにしか聞こえなかったなぁ。

と、まぁ厳しい事ばかり書きました。

 

得点も上の句は70点、下の句は50点、足して割って60点。
それが映画ちはやふるに対して僕が付けた点数です。
個人的には妥当な所だと思いますが、映画感想サイトを見ると皆さん下の句にも概ね満足した感じですね。

僕には、個を見せたいのかチームを見せたいのか、恋愛劇を見せたいのかスポ根を見せたいのか中途半端な作品に感じました。
でもそれは暗い青春時代を過ごしたおっさんがキラキラした青春に嫉妬してるだけかもしれません。

是非、ご自身の目で確認して評価して下さい。
その際は熱量を覚まさない様、上下一気見をお勧めします。

f:id:hagane-mk:20161023221239j:image 追伸、この作品はさらなる続編制作が決定している様です。
その時にはまたこの渇いたオッサンに涙を流させてくれる事に期待しています。 

最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ちはやふる上の句
・ピンポン
・海街diary 

www.anomaly3-movie.com