アノ映画日和

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「クローバーフィールド/HAKAISHA」 感想 トップオブザPOV

 

POV方式(Point of View Shotの略)

ハンディカメラなどを用いカメラの視点と登場人物の視点を重ね、あたかも本当の出来事のように映す手法。
古くは食人族などにも一部使われていますが、メジャーになったのはブレアウィッチプロジェクトのヒットからだと思われます。これが6万ドルという超低予算で興行収入2億何千万ドルの大ヒットとなった為、POV=低予算でもアイデアで勝負する映画というイメージがつきました。
しかし追随するのはアイデアもない予算もないという駄作が多く、正直辟易としてました。
そこに突然現れたのがクローバーフィールド!
僕をPOV映画大好き人間にした主犯です。
 
2008/アメリカ
監督:J・J・エイブラムス
出演:マイケルスタール=デヴィッド、マイクヴォーゲル、ほか
上映時間:85分
 
f:id:hagane-mk:20160602183849j:image
82点

ざっくりあらすじ

合衆国 国防総省 デジタル記録
#USGXI8810IB467
暗号名 クローバーフィールド
カメラの回収地点
かつてー
''セントラルパーク''と呼ばれた公園の''USI447''地区
 
冒頭で流れる説明テロップである
これからあなたはその大惨事の記録を確認することになる…
 
さぁ行こうか常識という壁を超え
描くイメージはホームランボールの放物線
これを最初に観た時、こんなPOVもありなのか!と驚いた。
予算もある!アイデアもある!でもこれは普通に撮るよりPOVが適してるぞという選択。
正直、同じ金を払ってる側からすれば予算が掛けれるか掛けれないかなんて知ったこっちゃない。
面白いものを観せてくれればそれでいい。
むしろ面白いものが創れるなら予算は掛けてくれた方が良い(もちろん金を掛ければ面白くなるかどうかは別の話だけど)
ただ金がないからPOVですという言い訳的な使い方はもう通用しなくなりました。
 
とにかくこの作品はPOVの長所を見事に引き出してます。
ざっくりのテロップのあと映し出されるのはイチャコラした主演カップルの映像。
次に主役の兄が日本へ行ってしまう弟の送別会の撮影の為に友人にカメラを渡すところ。
ここからこの友人の撮影者目線が映画の目線になります。
送別会の記録係りがそのまま突如起こった大惨事を記録し続ける、実に自然な流れです。
駄作POVはなぜこいつはカメラを持ち続けてる?てとこから強引だったり、単にカメラマンだからという安易さだったりします。
そこをスムーズに移行し、かつ素人の撮影ということで撮り方が下手なところもしばしば、これがありえない状況にリアリティを吹き込みます。
 
そして素人だから上書きで記録してしまっており、撮影を停めるたび主演カップルのイチャコラが映る
これが緊迫した状況とのギャップを生み、さらに緊張感が増す。お見事!
 
見えないモノを見ようとして 望遠鏡を覗き込んだ
話の順を追っていくと送別会の途中、突然の大きな揺れと停電。
慌てて外に飛び出すと、ビルをぶち抜き遠くから何かが飛んでくる。
そこでカメラが映し出したのは自由の女神の頭部!
 
何じゃこりゃあ???
の後、遠くから聞こえる大きなうめき声、カメラを向けた煙るビルの隙間に映ったのは、巨大な…そう
 
バケモノだあぁぁあ!!!
(Xの紅だあぁぁあ!!!のイメージでお読み下さい)
 
またこれがチラ見せなんですよ。
こっからはチラ見せの連続。
ノンビリ撮影出来る訳ないし、相手がとにかくデカイんだから仕方がありません。
鑑賞者側はチラ見せのたびになんかわからんけど凄えのがいるぞ!と興奮必至です!
 
なんだ?パニック映像の連続か?そう思われそうですね?
違います。これがPOVらしからぬスムーズさでストーリーをちゃんと創ってるんです。
送別会の途中で主役が彼女と揉めて彼女が帰っちゃうんですね。
で、しばらくして大惨事!そこに彼女からの電話
「助けて!ビルが崩れて挟まれて動けないの、血も出てるし…」
こりゃ助けに行かなきゃ男じゃねえ!それなら私たちも行くわと仲間たち!(撮影者含む)
という救出劇、実にハリウッドテイストな展開ですが、このベタさも丁度良いです。
 
だって僕らが観たいのはバケモノとバケモノの大破壊なんだもの。
 
こっから彼女が助け出されるのか?
主人公含む仲間たちはバケモノの手を逃れ無事脱出出来るのか?
観た人は知ってるだろうし、未見の人は鑑賞時の楽しみにして下さい。
 

今日も僕だけが行ける世界で銃声が轟く 
眩い、儚い、閃光が駆けていった
何かが終わり また何かが始まるんだ

 

ストーリーよりも僕が語りたいのはこのクリーチャーの造形なんです!
これが凄い!あらゆるクリーチャーを観てきましたが間違いなくトップクラスです!
チラ見せさせるパーツ、パーツがもう異形で恐いんです。
で、予算を掛けてるのでチャちくないんです。
しかもその造形にあった動きをしており、なにやら機能美すら感じさせます。
こんなん来たらもう終わりやん…と思わせるに充分なビジュアルなんです。
 
かのH.R.ギーガーはエイリアンのデザインを依頼されたときに
この世にはなく人間には想像の出来ないデザインをしてくれと言われたそうです。
それに対し、想像できないものをデザインすることは人間には出来ないと言い、この世にある蛇やら臓器などあらゆる奇妙なデザインのものを融合させエイリアンの造形を創り出したそうです。
今作のクリーチャーにも同じような発想があったかと思います。
だからこそいるはずもない生物だけど、こんなやつがいたら恐えというどこか現実味のある恐怖感を感じられるのだと思います。
 
そんな大絶賛をするモンスターですが、ただ1点不満なとこがあります。
それはなんかオマケのクリーチャーいるでしょ?あれなんですけど、あれいる?
あいつの存在で-5点してますよ僕は。
 
で、一応お話的には綺麗に終わりますが、多くの謎を残したままです。
バケモノは何処から来たの?
バケモノの目的は?
そもそも知性はあるの?
軍隊は何処までわかってて何処まで対応出来てるの?
その他いろいろネタバレになるから書きませんが、謎だらけです。
でもこれでいいんです。これがいいんです。
いち撮影者の立場から観せてるPOVで何もかもわかる方が不自然でリアリティがありませんからね。
 
さあ、そしてまもなくついに、続編10クローバーフィールドレーンが公開されます。
皆さん準備はいいですか?予習、復習は出来てますか?
どんな魅せ方をしてくれるのでしょう。
いくつかの謎は教えてくれるのでしょうか。
興奮が抑えきれません!抑えきれませんが、そろそろお時間です。
 
最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・クロニクル
・パシフィックリム
・REC
 
あ!未見で酔いやすい人、カメラが振れる映像の連続なので気持ち悪くならないようお気をつけ下さいね。