アノ映画日和

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「アイアムアヒーロー」感想 日本ゾンビ映画の夜明けぜよ!

 

ラーメン、便座、ハロウィン、等々、日本は他国の文化を取り入れアレンジするのが得意です。
もはや日本オリジナルと言っても過言ではないくらい進化させています。
そんな日本でも自国にない風習となるとなかなか取り入れるのは難しいです。

その1つがゾンビ映画です。
何作かそれらしきものが創られてはいますが、これぞJAPANゾンビだ!といえるものとなると、残念ながら...

日本人は死ねば火葬の文化です。
死して蘇るゾンビは風習として無理があります。
遺灰が蘇っても咳きこむぐらいですからね。

でもまぁ、そう悲観しなさんな。
ついにこんな映画が生まれたのだから。


2016/日本
監督:佐藤信介
出演:大泉洋、長澤まさみ、有村架純、ほか
上映時間:127分

f:id:hagane-mk:20161107205718j:image65点

ざっくりあらすじ

鈴木英雄(大泉洋)35歳、職業漫画家アシスタント、どこにでもいる平凡な男、いや平凡より少し下な男である。
そんな平凡以下の男自身に変化はなかったが、周りが急変した。
それは突然やってきた。
日本全土を襲う謎の感染パニック。
人々は次々と感染しZQN(ゾキュン)と呼ばれる凶暴な生命体へと変貌していった。
英雄はZQNの多い都心から逃げる。
道中女子高生 比呂美(有村架純)と出会い共に逃げる。
英雄は生き残りを賭けたこのサバイバルから自身をそして比呂美を守り英雄(ヒーロー)となれるのか。

 

JUMP 夜が落ちて来るその前に
JUMP もう一度高くJUMPするよ

火葬文化の日本がどうしてゾンビ映画を描ける様になったのか
それを説明するには以前ワールドウォーZの回でお話ししたゾンビ進化論について今一度触れなくてはいけません。

読んでない人の為に簡単に説明しますと(本当は読んで貰えると有難いのだが)
ロメロゾンビから定番化していたノロノロゾンビが「28日後...」「ドーンオブザデッド」などの出現により走る様になり、さらに昨今ではウィルスによる感染がゾンビ化の原因の主流となってきました。

この感染というルートが一部の地域、国だった規模を世界単位まで大きくし人類の危機まで描くようになりました。
しかし一方で死から蘇ったものがゾンビであり、感染から生まれたものはゾンビではないと生粋のゾンビマニアから否定の声があるのも事実です。

個人的にはそんなのはどうだっていいじゃんってのが本音ですが、マニアを怒らせると恐いので否定を否定するのはとりあえず控えておきましょう。

で、この感染ルートの誕生により日本もゾンビ映画(ゾンビもどき映画?)を創る権利を得たのです。

今作も感染によるものです。
ゾンビと言わずZQNと表現したのは、死から論者たちの攻撃を恐れてのネーミングでしょうか?
ここまでの完成度で描いたのだからゾンビとはっきり言ってやればいいのに...

そして冒頭で申し上げたとおりただ取り入れるのではなくアレンジし進化させるのが日本です。
今作でのそれは
ZQNは人間だったころの習慣、習性を色濃く残す!

これです!
え?大したことないやんって...?
いやいやこれは凄いことですよ!
ゾンビとは群れてなんぼの無個性集団です。
それが人間だったころの習慣が表れるってことは
ゾンビに個性を与えたってことです!
それじゃあゾンビの良さが無くなりそうなものですが、1番脳に刻まれている事だけを繰り返すといった程度の個性である為、ゾンビに彩りを添えこそすれ殺す事はしていません。

例えば陸上高跳び選手だったZQNがいるのですが、ただ飛んでは頭を地面に打ちつけるを延々と繰り返すだけという何とも奇妙なZQNです。

ちょっとした事ですがこれは非常に面白い!
これは他国のゾンビに影響を与える可能性が大です。

その場合ゾンビ進化図はこのようになるのでしょうか...?

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頭を打ちつけ過ぎて頭頂部が平らに凹んでるビジュアルがまた良いですね。


HERO HEROになる時

AH‐AH それは今 

さて今作は皆さんもご存じのとおり花沢健吾氏による大人気漫画の実写化作品です。
コミックは20巻を超える長編漫画です。
こうなると、どこを拾いどこを捨てるのかが難しいところです。

ところが今作は世界観はまるっと頂きストーリー的には1、2巻を拾う程度。
漫画実写化映画は出来るだけ原作を忠実にばかりを気にする作品が多い中、これはかなりの決断です。

こんな長編を全て拾い切れる訳がないし、それこそ変にストーリーをあっち摘みこっち摘みしても結果薄味でまとまりのない映画になるだけです。

これは英断である!

ストーリー性はないですが、おかげでゾンビ映画で最も重要な

恐慌、混沌、混乱、

を描くことに成功しています。
これには大きな拍手で賛辞を贈りたいです。

それだけ褒めておいて点数は65点て低くない?とお思いでしょう。
それはそれなりの理由(不満)があるのです。


・1つ目の不満

この原作を実写化するにあたって最も重要視すべき点、それは

平凡な日常に訪れた突然のゾンビパニックDEATH

原作では1巻の殆どをすさんだ英雄の日常と、恋人てっこちゃんとのマンネリ化した恋愛に費やしています。
そして巻の終わりに突然恋人てっこがゾンビ化するのです。
ダラダラとした日常を描いて描いてドン!

このギャップが大事なんです。
今作ではそれがない!
わりと早めにゾンビパニックが起こります。

これじゃあ日常感がないし、英雄の駄目さ加減も分からないし、てっこがゾンビ化した時の悲しみが伝わりません。

いくらストーリーをカットしても良いとはいえ、そこは大事にすべきだったでしょう。
120分の尺を150分、180分にしてでも、最初うわぁ退屈な映画だなぁと思わせるぐらい日常を描くべきでした。


・2つ目の不満

キャスティングです。
原作キャラに似てる似てないはどうでもいいんです。
先ほどの理由にも繋がりますが日常、平凡の崩壊が大事なのでスターはいりません。

主演の大泉洋、彼は良いです。
有名芸能人なのにどこか素人臭さが残っています。
それこそ平凡な英雄を演じるのに最適でしょう。

問題は長澤まさみ、有村架純です。
彼女達は芸能人オーラが強すぎます。

う~~ん、画面に華がありすぎるんだよな...

長澤まさみの役は黒木華、田畑智子、木村文乃あたり
有村架純の役は高畑充希とかどうですかね?

とにかく有村架純は可愛すぎるよ。
ZQNになっても可愛いんだから。
てっこ(片瀬那奈)のZQNと偉い違いやで。f:id:hagane-mk:20161108001236j:image

・3つ目の不満

せっかくゾンビに個性を持たせたのにステレオタイプのゾンビを出しすぎ。

結局、腕を前に出してあ˝~あ˝~て群れてくるゾンビを出してくるのね。
無秩序なようで秩序あるゾンビ...今作では要らないでしょ。
襲ってくるやつ、全然関係ないトコに走っていくやつ、人間通り過ぎてくやつ、
日本のゾンビはこの路線で行きますよ!てぐらいまとまりのないゾンビを徹底して欲しかったな。

・4つ目の不満

これはねぇ、いちゃもんに近いんだけど

都心から逃げる際、チーフアシスタントが飛行機のタイヤで頭吹っ飛ばされるとこ

電車内で乗客が次々とゾンビ化してJKやらBBAが襲われるとこ

原作のあのシーンだけは再現して欲しかった。
予算的な都合かな...残念。

 

まぁこの辺がマイナスポイントとなり結果65点と相成りました。
フィギュアで4回転とか大技バンバン決めるけど何回も転んだみたいな感じです。

結構文句言っちゃったけど前半あんだけ褒めたんだから少しぐらい不満言ったって怒らないでね。

 

不満を持ちながらも結果、全体的にはかなり楽しめました。

 

アウトレットモールに立てこもるというのはゾンビ映画定番ショッピングモールを意識しててゾンビ愛を感じたし

無秩序条件下では人間の汚い嫌らしい部分が露出されるというお約束演出は、平凡であれこの状態でも人であり続ける英雄たちの好感度をあげました。

そして終盤の大量ゾンビvs英雄の演出はアイアムアヒーローと名乗るに相応しいカッコ良さと興奮がありました。

現在の邦画ゾンビ映画暫定1位!

僕は他人にこの映画を勧める際にはそう言うつもりです。
暫定という言葉と65点という低い点数は、これが日本ゾンビ映画の始まりでありこれから先どんどん傑作ゾンビ映画が生まれる事への期待の表れと思って下さい。

そしてその中にはもちろんアイアムアヒーロー2、3と続編が出される事
さらに面白いものになっていく事への期待も含まれてます。

日本のゾンビ映画大好き人間の諸君、

日本ゾンビ映画の夜明けぜよ!

 f:id:hagane-mk:20161107230802j:image


追伸、ZQN化した有村架純が凄えパワーを手に入れてたから、きっとこの先でその力を活かした見せ場が来るぞ!って期待してたのに結局何もなかったね。
あれ何のための演出だったんでしょうね...

最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。

・ゾンビ
・ワールドウォーZ
・28日後...

www.anomaly3-movie.com