人を描いた映画は2種類に分けられます。
1つはその人を人生単位で追いかけ起伏を描いた作品。
もう1つは人生の中の一時期の光または闇を切り取り描いた作品。
今作は後者です。
でも前者でもあります。
意味がわかりませんか?
では、最後まで読んでみて下さい。
2013/アメリカ
監督:ベン・スティラー
出演:ベンスティラー、クリステンウィグ、シャーリーマクレーン、ショーンペン、ほか
上映時間:115分
80点
ざっくりあらすじ
「LIFE」誌の写真管理部に勤めるウォルター。
42歳独身、母と妹を支える一家の大黒柱。
社に16年勤務するベテランでありながら、その影は薄く、地味で目立たない存在として日常を過ごしていた。
そんなある日、突然新しいボスがやって来た。
そしてLIFE誌の廃刊とそれに伴う事業再編を告げた。
更にLIFE誌の最終号の表紙について、伝説のフリーカメラマン ショーンから注文があったことも告げられる。
最終号には自身の最高傑作である「25番のフィルム」を使って欲しいと。
ウォルターには確かにショーンからの郵便物が届いていた。
しかしそこにはプレゼントの財布といくつかのフィルムはあったが、肝心の25番のフィルムだけはなかった。
フィルムはショーンがまだ持っている...
ウォルターはそのいくつかのフィルムを手掛かりに神出鬼没の伝説のカメラマンショーンを見つけ出し25番のフィルムを手に入れることを決意する。
夢を信じて 生きて行けばいいさと
君は 叫んだだろう
妄想癖のある主人公ウォルターは僕にとって非常に共感出来る親しみやすい存在でした。
というのも僕も小学生の頃の通知簿に
「白昼夢の癖あり注意!」
と書かれ親を心配させるような妄想人間だったからです。
前の席の少年の頭を吹き飛ばし、担任の伸長を2cmにしたりと、妄想が幻覚となって見えるほどでした。
もちろん僕に特別な能力無かったおかげで前の席の少年も担任も卒業まで無事に生活することが出来ました。
現在は治ったのかって?
それはご想像にお任せ致します。
さて、僕もそうでしたがウォルターの妄想癖とは現実逃避の現れです。
現状の自分に対し自信がない、周りに不満があるといった事が妄想の世界に逃げ込ませ、つかの間の愉悦に浸らせるのです。
ウォルターは出会い系サイトのプロフィール欄に何も書くことが出来ない程、自分の人生はつまらない、しいては自分はつまらない男だと痛感していました。
物語の前半はこのつまらない男の現実逃避の妄想で楽しませてくれます。
妄想の中では彼はヒーローであり冒険家であり勇敢な男です。
火災ビルから片思い中のシェリルの犬を助け、雪山から生還し、上司と格闘します。
このあり得ない映像と現実とのギャップがおもしろ可笑しく描かれています。
で、ざっくりあらすじに書いた通りカメラマンを追う為に本当に過酷な冒険をする事になるのですが、妄想癖が治るわけではありません。
ただこれまでの妄想が現実逃避の現われだったのに対し、現実に立ち向かう為の前向きな妄想に変わっていきます。
観ている側からすれば(たぶんウォルター自身も)、今映っているこの光景は現実なのか妄想なのか分からなくなります。
あれ?これ妄想?現実?あ!現実?やっべ!ウォルターやっべ!
というのがこの映画の面白いところです。
ドキュメントタッチで男の冒険談を描くのではなく、現実はファンタジーで溢れているという描写。
僕は大好きですね。
ありったけの夢をかき集め
探し物を探しに行くのさ ONE PIECE
ウォルターを困らせる為か、僕たちを楽しませる為か、カメラマンショーンは過酷な場所をあちこち飛び回り行方を掴ませません。
ウォルターおじさんショーンを探して大冒険!
グリーンランドでは酔っぱらいが運転するヘリに乗りこみます。
その勇気を与えてくれたのは妄想でした。
片思いのシェリルがギターを鳴らしデヴィッドボウイの名曲「スペースオディティ」を弾き語り彼を応援します。
そこからはヘリから船へダイブ!
サメと格闘!
アイスランドではスケボーで火山に向い、
アフガニスタンでは雪山を登る。
川口弘...いや藤岡弘、かよ!
これまでの人生が嘘のような冒険の日々。
僕もそうだし、みんなもそうだと思うけどやっぱスケボーのシーンが最高ですよね。
作業着のままスケボーで滑走するおじさんがなんとも絵になります。
加えて例の妄想、空を飛ぶ鳥の群れがシェリルの顔になる。
もう何が妄想で何が現実なのかなんてどうでも良くなりました。
とにかく素敵な絵をもっと見せてくれ!
なんだったらこの素敵な絵がLIFE最終号の表紙でもいいじゃん!
無責任な僕は思いますが、ウォルターは諦めません。
ときに手掛かりがなくなったと落胆しても意外なところでヒントが見つかり、
意外な人物が行先を告げてくれる。
みんながウォルターを応援し後押ししてくれる。
僕もリモコンを熱く握りしめ応援しました。
そしてついに出会った2人...このシーンで交わされる会話がまたいいんですよ。
男同士の会話っていうかね...え?25番の写真?
そんなのどうでもいいだろ!
いやどうでもよくないね、ごめんなさい。
でもその写真がどこにあったのか、そしてどんな写真だったのかは書かずにおきます。
ただ僕はその写真を見るあのラストに鳥肌が2兆個たちました。
ありふれた時間が愛しく思えたら それは愛の仕業と小さく笑った
君が見せる仕草 僕に向けられてるサイン もう
さて、みなさんはこの映画からどのようなメッセージを受け取りましたか?
人生は一歩踏み出す勇気さえあれば冒険と浪漫で満ち溢れている?
諦めない心が不可能を無くす?
人生いつだってこれからだ?
う~~ん、それもそうなんだけど僕は
あなたの人生を表すのはほんのひと時の輝きや暗闇ではない。
積み重ねてきたなんでもない日々、それこそがあなたの人生を物語る。
という事なんじゃないかなぁって。
映画や小説で良く使われる表現
それから〇〇年後...
特記する事が無いのでとばされる数年間。
特別な事は無くても確かにその期間も人は生きていて、
僕なんかは今まさにそれからで表現されちゃう時間を生きてる気がします。
いやもしかして産まれた瞬間にそれからタイムに入ってて、次はお葬式のシーンかもしれません。
でもこの映画のラストのあの写真...あれが物語る様に、なんでもない日常にこそ重要なものが詰まってて人はそれに気づかないだけ
そんな風に感じたんですよね...なんてちょっとカッコつけすぎ?
でも冒頭に書いた事が少しは分かって貰えたでしょうか?
この映画はウォルターの輝いた数日間を描いたものです。
でもそれと同時に母親や妹そしてショーンとの会話の中や写真から彼の平凡と言われる人生全体を感じ取れたんじゃないでしょうか。
平凡でしょうか?
退屈でしょうか?
そんな人生なんて存在しないのかもしれませんね。
追伸、僕はベンスティラーの友達ではないし、本当のことを聞いた訳ではありませんのでとんでもない勘違い野郎である可能性は高いです。
そしてお前は口から産まれてきたような奴と母親からも言われる男です。
このブログ内容を真に受けて他人に語って恥をかいても責任は取りませんのであしからず。
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最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・フォレストガンプ
・グッドウィルハンティング
・主人公は僕だった