最初にこの映画を観た日の事を鮮明に覚えている。
鑑賞前にコップ1杯のお茶を用意したが
観始めてから終わるまでそのお茶を口に出来なかった。
それ程までに集中し緊張し魅せられた。
すっかりぬるくなったお茶を一気に飲み干し 気を落ち着かせようとしたが
何か凄いものを観てしまった
その気持ちが心拍数をあげ、その日はなかなか寝付けなかった。
並みのホラーではビクともしない僕が、モラルのない報道パパラッチの狂気にあてられ心底恐怖した。
しばらくは観るまいと思っていたが、Netflix配信...そして僕は
2014年/アメリカ
監督:ダン・ギルロイ
出演:ジェイクギレンホール、レネルッソ、リズアーメッド、ビルパクストン、ほか
上映時間:118分
90点
ざっくりあらすじ
コソ泥で日銭を稼ぎ生活するルイスブルーム(ジェイクギレンホール)
彼はある日偶然交通事故現場を通りかかる
そこにいたのは事故、事件専門のパパラッチ
彼らは現場を撮影してはTV局にその映像を売り、稼いでいるという事を知る
これならば学も経験もない自分でも出来る
ルイスはこうして事件パパラッチという天性の職に恵まれた。
そしてそれは同時にあらゆる人間を食いものにする生き方を選んだ事でもあった
ねぇ、僕は人間じゃないんです
ほんとうにごめんなさい
ゴクゴクゴク...ふぅ
僕は学ぶという事を知らない。
また鑑賞前にお茶を用意し、結局手を付けられず鑑賞後一気飲みするパターン
何がそれ程まで集中させ緊張させ恐怖させるのか未見者の為に少し説明します。
とにかくジェイクギレンホールの演技が凄い!
今作はいわばギレンホールのワンマンショーです。
そのギレンホールが
まぁ、キモイ!そしてキモイ!
モラルハザードしまくったルイスがキモイというのもありますが、それを演じるギレンホールの形相、動きが...
まず一切まばたきをしないんですよね。
頼む、まばたきしてくれ!見てるこっちの目が乾く
事件を見逃さないのはもちろん、鑑賞者が目を離さないよう見張ってるかの様にガン見です
お茶など飲もうものなら、ギレンホークに殴られそうです
そしてやたら早口です
相手に口をはさむ隙を与えない様まくしたてます。
これが非常にいらだたせます
また静と動の差がやたら激しい
事件家宅に忍び込むとそろそろ~と撮影し、サササッと退散
なにかの虫みたい、G的な?
キモイ、キモイ!
誤解のないよう言っておきますが、ジェイクギレンホールは超のつくイケメンです。
今作のルイスブルームという役を演じるにあたり創りあげたのが
まばたきをせず、早口で、虫的な動きをする、付け足すなら髪の毛ベタベタのキモイおっさんなのです。
ちなみにこの役の為に15㎏痩せてげっそりさせたらしいです。
時にイケメンで時にムキムキマッチョのボクサー、そしてキモキモパパラッチ
ジェイクギレンホール、彼の役作りの幅の広さ半端ないです。
ルイスブルームというキャラクターが秀逸!
誰もが嫌悪する主役
ここまで徹底した下衆が主役の映画もなかなかないでしょう
まともな人が闇の世界に足を踏み入れ、やがて自身も闇の住人と化していく
普通、物語においてふり幅を考えるならそれがベタです。
ところがこのルイスは最初っから最後まで
下衆
よくこの映画をエスカレートしていく狂気、闇、病み的な説明がされますが
NON NON
冒頭金網泥棒をしている時に警備員に注意され、その警備員が良い腕時計しているのに気づくと暴行しそれを盗みます
冒頭から下衆なんです
下衆が場を得て下衆を活かしていくだけでエスカレートも何も最初っからそういう人間なんです。
ちなみに最後までその腕時計を着けてましたね
これは下衆になったんじゃないよ~最初から下衆なんだよ~という監督のメッセージな気がします
物語が凄い!
良く出来た脚本ですが、実は1本道のシンプルな構成です
簡単に言うと、下衆の下衆によるサクセスストーリー
普通は破綻するまでを描きたくなるものですが、今作はエスカレートさせていきそのピークで終わります
悪は必ず滅びるという予定調和じゃないところが面白い!
それ故に胸糞悪くもありますが...
では、そのサクセスストーリーを追っていきましょうか
ネタバレが嫌な方はスマホorPCを閉じて下さい
人の不幸は大好きサ 人の不幸は大好きサ
人の不幸が大好きサ
事件パパラッチという職業を知ったルイスは即カメラと警察無線傍受機を手に入れます
で、早速事故現場で撮影
その映像をローカルテレビ局朝の情報番組へ持ち込みに行きます。
そこで対応したのがプロデューサーのニーナ(レネルッソ)
あなた見込みあるからまた持ち込みに来てとその映像を購入
year これやっぱ金になるぜ
調子こいたルイスは1人でやるより効率的にとお金に困る若者リック(リズアーメッド)を超安日給でアシスタントに雇います。
そしてニーナが求める富裕層の残酷な事件、事故を撮影しまくります。
その為には不法侵入など当たり前、時には事故の被害者を撮影しやすい場所に引きずり移動させたり。
それで得たお金で機材に投資、速い車も購入します
この仕事そんなに儲かるのか...
ちょっと僕も転職を考えようかな...
そんな事を考えてる隙にルイスは次のステップに
ニーナにとって自分の映像が無くてはならないものになっていると確信したルイスは
俺と肉体的関係を持てと強要
え?え?
いやその弱みに付け込んだセクハラにも驚きますが...ニーナですよ
どぎついク〇BBAですよ?
え~?立場的に更に上を目指す為なのか趣味なのか...
まぁ好みは人それぞれですが、う~ん
一応言っときますがレネルッソは還暦を迎え尚お美しい方ですが、このニーナという役が厚塗り化粧のク〇BBAということです。
僕は君が思うような人間じゃない
そうさそんな人間じゃない
もはや僕は人間じゃない
ここまでムチャをする下衆を見せてくれましたが
ここからはムチャクチャするド下衆野郎を見せてくれます
1件の強盗事件が発生
ブルームたちは警察より先に現場に着きます
するとまだ犯人が
当然その姿、逃走した車のナンバーを撮影
そして当然のごとく不法侵入
裕福な住居、殺された死体と隅々まで撮影
その表情は緊張と歓喜が混同しています
こいつ下衆ではありますが根性は座っています
撮影を終えるとニーナの元へ
これはどうしても欲しいはず
そう確信しているブルームはこれまでとは桁違いの金額を要求
首を横に振るニーナですが
それ欲ちい、どうしても欲ちい
僕でも分かるくらい表情に出てます
渋りながらも契約するニーナにブルームは畳みかけます
いいか、これから僕が提示する金額に交渉の余地はない
言われた金額を払いテープを受け取れ
あとVTRを流す時は必ずうちの会社名をキャスターに言わせろ
それからこないだの夜、僕が要求したプレイを君は拒んだな、今後は一切拒むな
まさしく下衆の極み
既に交渉は脅迫の域に達しています
しかし彼の下衆の極みは更に先がありました
ニーナ、そして事情聴取に来た警察に渡したVTRは編集済みのもの
犯人の顔、車のナンバーはカットしていました
それを使って更に稼ぐ腹積もりです
下衆ではありますが、この男狡猾です
これまでは起こった事件が撮影対象でしたが
こんどは撮影対象を自ら創り出すつもりです
2人組の犯人の車を見つけると後を付けます
そして銃を携帯しガラス張りのカフェに入ったところを見つけると
今だ!ここだ!
と言わんばかりに撮影を開始、
そして警察に連絡
こうすることで必ず銃撃戦になると
流石にこれには相棒のリックも止めます
店には客もいる!大惨事になるぞ!これは犯罪だ
だから何だ?撮影しろ
うう、警察に通報する、それが嫌だったら僕に報酬の半分をよこせ
あらまぁ、純なリックまで交渉好きの下衆になってしまいました...
まぁこれまで1日30ドルという安い給料で命はって来たんだから仕方ないか...
君がそれを言うなら断れないな...よし払おう
まぁ、ブルームが交渉をあっさり受け付けるはずもないので、これに裏があるのは皆さんとっくにお気づきでしょう
ここから物語はリックの想像通りの大惨事に、そしてリックは思わぬ不運?に巻き込まれます。
派手なシーンの連続その間に張り詰めた緊張感が走ります
興奮のドキドキと緊張のドキドキ
終盤は常にドキドキしっぱなしで、何のドキドキかも分からなくなります
そしてどうなるか...はい、いつもの通り寸止めです
この映画の凄いところは、主人公がジャーナリズムに目覚たりせず、全くそんなもの興味なしと下衆を貫き通すところ。
そしてそんな下衆は破綻させてやりたくなるもんですが、サクセスストーリーとして貫いているところ。
そんな下衆に嫌悪感を感じながらもどこか凄いと認めざる得ないものを心に残すところ
それからもうお気づきでしょう
ブルームのようなパパラッチは本当に存在していること
そしてその存在は興味本位、好奇心という闇に魅せられた僕たちがいてこそ存在し得るということ
本当の下衆は僕たちなのかもしれません...
だからこの下衆の行動、言動全て目を耳をそらす事が出来ません
未見者がこれから観ると言うならばひと言だけ忠告があります。
鑑賞前に飲み物は用意するな
用意しても無駄だ
鑑賞中それを口にする余裕など与えて貰えないのだから...
追伸、ニーナは絶対あられもない姿を盗み撮りされてますよね?
ブルースの趣味兼後の交渉?脅迫?道具として
ああ、下衆怖い怖い...
最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります
・スクープ
・パパラッチ
・コミック雑誌なんかいらない