アノ映画日和

年間500本以上鑑賞、あらゆるジャンルの映画をイラスト付きで紹介

「シングストリート」感想 さあ歌って これは君の歌だよ

 

映画が好き
音楽が好き

なら映画×音楽=音楽映画はメチャクチャ好き!

とは不思議とならないんですよね。
どちらかというと苦手ジャンルです。

う~ん、なんかストーリーの薄っぺらさを音楽で誤魔かしてる?
そんな印象。

今作も音楽映画。
苦手ではあるものの、劇場鑑賞者のあまりの評判の良さに観てみた訳です。
そしたら...もう...

2016年/アイルランド、アメリカ、イギリス
監督:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシーボイストン、マリアドイルケネディ、エイダンギレン、ジャックレイナー
上映時間:105分

f:id:hagane-mk:20170122013932j:image90点

ざっくりあらすじ

舞台はアイルランド、ダブリン。
コナーは家庭に様々な問題を抱える悩める少年。
親の都合で転校させられたが、理不尽な校則、虐め、それをあざ笑う奴ら、もうここの環境は最悪。
でもそんな時、1人の少女に出会い恋をする。
彼女は年上のモデル。
コナーは彼女の気を惹くためにバンドを結成する。
バンド名はシングストリート。
輝かしいまでの青春と音楽はここから生まれる。


君が大好きあの星空より 大好き赤いワインより
女の子のために今日は歌うよ

ジョンカーニー監督作で最初に観たのは「ONCEダブリンの街角で」
音楽映画だ。
映画通なんですという人には好評の様ですが、
あんなの僕からすればオシャクソ映画に他なりません。

曲が先に出来て後から無理やり恋愛的な歌詞を付けた様な映画。

ストリートミュージシャンが聴いてる人に
「ギターケースの金盗むなよ、盗むなよ、絶対盗むなよ!」
と言って盗まれる。
なんだこのダチョウ倶楽部みたいなシーン...ぐらいしか記憶にありません。

ストーリーも映像も音楽もぼんやりしていて輪郭のハッキリしない映画。
好きじゃないなぁ

次に観たのが「はじまりのうた」
またもや音楽映画
これが前作を反省したかの様にハッキリと分かり易いストーリーに最高に上がる音楽
好きです

そして今作「シング・ストリート 未来へのうた」
またまた音楽映画!

なんだこの監督
音楽映画しか撮れないのか?撮らないのか?
どっちだ?

と、疑問に思い調べると元ミュージシャンが転身して映画監督になったとのこと。
どうやら、どっちもってのが正解のようです。

悪く言えば音楽頼り、良く言えば音楽を信頼している。

ま、映画さえ面白ければ僕はどっちでも良いんですが今作...

何これ!最っ高じゃないっすか!

映画好きさんの多くが並み居る大ヒットメジャー映画を差し置いて2016年映画1位にするのも納得の大傑作。

ではでは僕がこの映画の何が好きか書いていきます。

まだレンタルでは新作なのでネタバレは控えるつもりですが、好きが過ぎてしゃべり過ぎるとこがありますので、ネタバレ回避は自己責任でお願いします。


掃いて捨てるほど愛の歌はある

過去は消えないだろう 未来も疑うだろう

 

まず何が良いってやっぱ音楽が良いんですよ。
使われてる挿入80'sソングも良いんだけど
この映画の為に創られたオリジナルソングがマジ名曲揃い!

アガル曲の「Up」
アガル上にストーリーをなぞった「Brown Shoes」
がたぶん人気が高いですよね。
僕も好き。

でもそれ以上に最っ高に好きなのが
バラード曲「To Find You」

超名曲!

もう聴いた瞬間、漫画BECKのコユキが歌った瞬間の観衆みたいになりましたよ。

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マジで楽曲を聴くだけでこの映画観る価値アリです。
もちろんサントラも出てます。 

シング・ストリート 未来へのうた

シング・ストリート 未来へのうた

  • アーティスト: サントラ,Score,ジョン・カーニー,グレン・ハンサード,アダム・レヴィーン,カール・パペンファス,ケン・パペンファス,ザモ・リッフマン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2016/07/06
  • メディア: CD
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そして登場人物ね。
主人公のコナーも良いんだけど、彼はとにかく周りや音楽に影響受けすぎ!
ころころ見た目を変えるし、それを自分の意思のように語るし、何かその辺が鼻につくけど思春期の少年てそんなもんか。

そんなコナーより周りの連中が良すぎ!

エイモン
バンドのギターリストであり作曲者であり、あらゆる楽器を使いこなす天才。
見た目が若い頃のエルヴィスコステロを思わせます。
監督たぶん意識してキャスティングしてるでしょ?
理系の天才肌でとにかく
こいつ無しでシングストリートは成り立ちません!

ラフィーナ
可愛いですよね。
見た目は若いころのマドンナ。
これは監督完全に確信犯ですね。
16歳には見えない見た目の大人っぽさと繊細でキュートな性格。
彼女がヒロインとして存在するからこの映画は恋愛映画としても素晴らしい!

ダーレン
一応バンドのマネージャーって役割のはずが、途中からMVのイメージからギグの開催日までコナーが仕切り出すから、もう完全にカメラマン役。
可哀想すぎるでしょ!
でもそれに文句も言わず堂々とメンバーの一員として存在してる彼が好き!
なんとなく見た目がスティーヴブシェミを思わせるパンチのあるビジュアルも愛嬌があって良い。

でも何と言っても1番はコナーのお兄ちゃんブレンダン。

見た目も弟思いの性格も音楽センスも最高!

でもちょっと待って、あれ?てとこがあるのでイラストにしました。

f:id:hagane-mk:20170122014004j:imageで、肝心のストーリーは?ていうと、ONCEダブリンで恋愛を描いて、はじまりのうたで音楽の力と人と人の絆を描いたでしょ。

今作は青春の葛藤と衝動を土台にしながら前2作の素晴らしい要素を上手くミックスさせた感じ。
詳しく書きたいけどネタバレになるから控えておきます。

ただバンドを始めたきっかけが「好きな娘の気を惹きたいから」という単純な動機は最高!
それだけは言わせて。
モテたい以外に男がバンド始めるきっかけなんて無いし、あってもそんなモノは不純だから!


時代遅れのオンボロに乗り込んでいるのさ

だけど降りられない
転がるように生きているだけ

ところで皆さんは80's音楽に対してどんなイメージを持ってます?

僕が音楽で1番好きな時代はoasisを代表としたブリットポップ、ニルヴァーナを代表としたグランジが存在した90'sなんですよ。

そのルーツとなってるビートルズやストーンズ、ピストルズが活躍した60'sや70'sも大好き。

で、その間の80'sに関しては正直…

クソだせぇ!って...

いやもちろんエアロとかクラッシュ、ガンズをはじめ沢山かっけえバンドはいましたよ。
でもなんとなく80'sって聞いてパッと想像するのはMTVで見た肩パットの入った派手なダブルのスーツとかスギちゃんみたいな袖のないGジャンを着た連中...
Step By Step!とホンダスクーターDioのCMで歌うニューキッズオンザブロック…

アレがカッコ良いとされていた時代がちょと理解出来ない。

と言いながら僕もロクセットやデッドオアアライヴ、リックアストリーなども聴いていた。
聴いてはいたが、それはダサいという認識はあったのでこっそりと聴いていた。

普段音楽通を気取っている僕なのでどうか内緒にして欲しい。

だが今作はそんな80'sバンドをカッコ良しと扱われている。
キュアーはわかるとして、A-haやデュランデュランまで肯定されている。

え?今は80'sアリなの?
内緒にしなくて良いの?

鑑賞していく内に80'sアリかも…と僕の心も揺らいでいった。

時代もひと回りするとカッコ良しとなるとは聞いていたが、まさか80'sがカッコ良く映るとは…

て、ちょっと待って!
も、も、もしかして今ダサいのは90'sの番なのか?

oasis、ローゼズ、レディヘ、今尚ヘビロテなんですけど…

嘘ん!


おまえが消えて喜ぶ者に

おまえのオールをまかせるな 

話を映画に戻しましょう。

なぜこの映画はこんなにカッコ良く、彼らはカッコ良く映るか。
そしてなぜこんなに多くの人々に愛されるのか。

それはこの映画の主要人物が全員はみ出し者だから。

性格に問題あり、家庭に問題あり、人種に問題あり、それぞれがそれぞれに問題を抱え周りに溶け込めない連中。

そんな彼らを否定し抑制しようとする大人たち。

しかし、彼らは抱える問題は肯定しつつも決して自身を否定していない。
周りに擦り寄るのではなく、逆に周りに自分たちをみせつけてやる。

片足ブーツで蹴り飛ばしてやる!
実にROCKではないか!

とかくコミュニケーション能力を求められる現代で上手く振舞えない人達にこの映画は刺さる!

そんな人たちは多いんじゃないですか?
少なくとも僕はそうであり刺さるどころか貫通されました。

f:id:hagane-mk:20170122061504j:imageそりゃ、共感するしカッコいいし涙するよ!


とまぁ絶賛ばかりしてきましたが不満点が無いかといえば有ります。

例えば高校生が創った曲なのに完成度が高すぎる。
編曲まで完璧だ。
プロが創ったのが丸わかり。
もっと3コードくらいの単純で荒々しい曲からはじめなきゃ。

あとアイルランドが舞台で80'sミュージックの映画で何でU2を扱わないの?
アイルランドの誇りであり代弁者でしょ?
しかもダブリン出身でしょ...て

ん?あれ?ちょっと待って。
ストーリー自体がシングストリート自体がもしかしてU2?
コナー=ボノ?
エイモンはコステロじゃなくてエッジ?

きっとそうだ!
さっきの不満ナシナシ!

ま、いくら不満点があってもこの映画がジョンカーニー監督の現段階の最高傑作である事は間違いないけどね。

僕と同じように、音楽映画はちょっと‥という方、80's音楽なんてクソだせえよとお思いの方、そして上司に否定され押さえつけられているそこのアナタ!

そんなあなたにこそ、この大傑作音楽映画を観て欲しいなぁ。
さぁ明日上司のケツを片足ブーツで蹴り飛ばしてやろうぜ!

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追伸、90点という高得点をつける程今作に感動し絶賛した。
しかし僕はTwitterで2016年映画ランキングの変動はしないと言った。

本来TOP3に入る程の大傑作なのに。

でも同じ音楽をやっていたのに、全然モテない青春時代を過ごしたオッサンにはこの映画の青春は輝かしくて眩しすぎる。

そう、妬み嫉妬からくるランク外だ。

僕はそんな人間なんだ、許してくれ。

最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・はじまりのうた
・ジャージーボーイズ
・バックビート

www.anomaly3-movie.com