アノ映画日和

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「容疑者Xの献身」感想 劇場版と名乗るならこのレベルに仕上げてから来い!

 

僕は映画も好きですが、ドラマもアニメも好きです。
オタクです。
映画には映画の良さがあり、ドラマにはドラマの良さがあります。
もちろんアニメもそうです。

最近、ドラマでもアニメでも、ちょっと人気が出ると「劇場版〇〇」と題して映画化したりします。

これってちょっとどうなん?て作品も多々目にします。
今回はこの作品を通してその辺を書きたいな、と。


2008年/日本
監督:西谷弘
出演:福山雅治、柴咲コウ、堤真一、松雪泰子、北村一輝、ほか、
上映時間:128分

f:id:hagane-mk:20161014183756j:image87点

ざっくりあらすじ

花岡靖子(松雪泰子)は娘と2人、慎ましく生きていた。
そこに突然元亭主 富樫が訪ねて来る。
ようやく手に入れた幸せを潰されそうになった上、娘にまで暴力を振るうその男を靖子は殺してしまう。
途方に暮れる2人に救いの手を差し伸べたのは隣人 石神(堤真一)だった。

数日後、他殺体が発見される。
遺体は富樫のものと判明。
当然、花岡靖子に容疑がかかる。
が、アリバイをどうしても崩せない警察。
担当刑事 草薙と内海は帝都大学天才物理学者 湯川(福山雅治)に捜査協力を依頼。

こうして旧友でもある天才数学者石神が創ったトリックに湯川は挑むこととなった。


チクショーチクショー ふざけんな

この世はほとんど終わってる 

映画とは何ぞや?
映画とは芸術である、と言う人がいる。
いや映画とは大衆娯楽である、と言う人もいる。

どちらが正しいのか?

さっぱりわからない

どちらも正しい。
そもそも映画の定義なんか僕に分かる訳がない。
でも、これだけはハッキリ言える。

劇場で公開したから映画ではない!

冒頭でも書いた通り、最近はちょっとヒットするとすぐ劇場版〇〇と題して映画化する。
しかもテレビでやっていた事をそのまま劇場で垂れ流す。

これに僕はイラッとする。
映画には映画の良さがあり、テレビにはテレビの良さがある。
どちらが上、どちらが下だと言ってる訳ではない。
違いを理解してから劇場版を創れと言いたいのです。

タチの悪いものになると、テレビのダイジェスト版だったりするし
もっと酷いのはドラマを散々テレビで観せておいて、本当の最終回は劇場で!とか言いだす始末。

は?何その通販化粧品初回キット無料みたいなやり口?

いや、まだそっちの方が最初から告知してる分だけ良心的だ。

もちろんすべての劇場版ドラマ、アニメがそうだという訳ではありません。

例えば、ドラえもんやクレヨンしんちゃん。
明らかに通常のテレビ版とは違った創りをしています。
わかりますよね?
テレビ版、劇場版、それぞれがそれぞれの良さを発揮してますよね。

そしてテレビ版と全く違うドラマとは今作「容疑者Xの献身」です。
タイトルからして劇場版ガリレオではありません。

テレビ版の創り方をことごとく排除しています。
あのダララダララダララダララ♪というBGMにのせて処構わず文字を書きだしたりするガリレオ先生の奇人変人推しが全くありません。
いや、ガリレオ先生はこの映画の主人公ですらありません。

この映画のタイトルを聞いて思い浮かぶのは石神と花岡の切ない物語であり
テレビ版の主演ガリレオ先生と内海刑事はその物語のサポート役に感じます。

そこが、実におもしろい!

 

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夢のような人だから

夢のように消えるのです

一応言っておきますが、僕はTVドラマ ガリレオが大好きです。
シーズン1も2も特別篇も何回観るねんという位、繰り返し観てます。

でもそれ以上に容疑者Xが好きです。
ハッキリ言って今作は10年先、20年先も邦画史に残る大傑作です。

今さらあらすじを語る気はないので割愛させてもらいますが、さすが東野圭吾の原作ですし、よくぞここまで原作の良さを表現してくれました。

確か原作にはあの雪山のシーンはなかったと記憶してるんですが、あれが入ってることによってよりドラマ性に深みが出来ています。

原作の石神イメージは堤真一ではありませんでしたが、観終わってみると堤真一で大正解。
原作そのままではないのが逆に素晴らしい。

もうね、ラストの石神と花岡のシーンは何回観ても泣きますよ。
なんて言うんでしょう、感動とか切ないという薄っぺらい表現では表せない、もっと特別な感情を揺さぶられて出る涙です。

思えば最初から最後まで石神に心を動かされてばかりです。
序盤では薄気味悪さを感じ、あれ?こいついい奴?となり、うわ!こいつ最悪!気持ち悪いとなって、最後はなんていい人なの...なんて悲しい人なのとなります。

石神の行動は決して褒められたものではありませんが、タイトルの通りその献身ぷりは美しいとすら感じさせます。

最後の石神の感情をいつも思います。
あれはいったいどういう感情なのでしょう?

花岡の幸せだけを願ったのにそれが叶わなかった苦しさ?哀しさ?
でもどこか自分の想いが届いた報われたという喜びの感情も数%はあるんじゃないでしょうか?

最後の内海刑事のセリフが重く余韻を残します。
「石神は花岡に生かされていたのね...」

そして流れるED曲最愛...テレビ版のポップな感じではなくこの映画の為に書き下ろされたような切ないラブソング。

ああ...書いてるだけで思い出して少し胸が苦しくなります。f:id:hagane-mk:20161014232458j:image

Lalala Love somebody Tonight Lalalalala...

今回の内容、
この映画を観てない人にとってはこいついったい何を言っとんじゃ?
という感じでしょう。
でも観た人にとっては、うんうん分かる分かると共感して貰いたいです。

映画好きの体内には映画を観る事でしか満たされない名もなき見えない臓器があります。
そしてこの映画はそれを思いっきり満たしてくれます。

ダンシングポリスマンシリーズや戦国武将になった高校生、自由気ままな検事さんがそれを満たしてくれますか?
ましてや若い男女がシェアハウスして好きとかごめんとかいう訳のわからんモノが満たしてくれる訳がないです。

今後も沢山のヒット番組が劇場版となり公開されていくでしょう。
そのうちクイズ番組まで劇場で公開されるんじゃないでしょうか。

映画とテレビを一緒くたにした作り手がそんなものを量産しても
観てる僕らは違いを理解していきましょう。
見失いそうになった時はどうかこの映画を観て思い出して下さい。

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追伸、男女がシェアハウスするテ〇ハですが、これレンタルされる時はどこの棚に並ぶねん?と思ってましたが、先日ドキュメントの棚に並べられてるのを発見しました。
うん、それはそれでなんか違うんだよなぁ...

容疑者Xの献身 ブルーレイディスク [Blu-ray]

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最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・真夏の方程式
・アヒルと鴨のコインロッカー
・ゆれる