レンタル店で1枚しか入荷されない、あるいは入荷すらされない傑作映画というものが数多く存在します。
大量に入荷されるお金を掛けただけの大作と比べて負けないどころか遥かに面白いのに…
でもそれは観る人にとってはっていう条件付き、いわゆるマニアック映画でしょ?
そう言われれば否定しきれないところもあります。
しかし今回取り上げるファイナルガールズ、これは大多数の人に面白いと言って貰える自信があります。
出来るだけ多くの人に観てもらいたい!だから今回はネタバレ一切無し!
…いや、極力無しの方向で頑張ります。
2015/アメリカ
※日本劇場未公開、NOW RENTAL&ON SALE
監督:トッド・ストラウス=シュルソン
出演:タイッサファーミガ、マリンアッカーマン、アリアショウカット、ほか
上映時間:91分
83点
ざっくりあらすじ
映画女優を母に持つマックス。
仲睦まじい親子だったが、ある日交通事故で母は帰らぬ人となる。
それから3年後、母の代表作でありカルト人気を持つ「血まみれのキャンプ場」のリバイバル上映の特別ゲストとして娘マックスが招待される。母が出演する80’sホラーのゲスト、気は進まないがしぶしぶ引き受けるマックス。
しかし上映中、火災が発生しパニックがおこる。逃げ場を失ったマックスやその友達たちはスクリーンを破り逃げ出す。そこで気を失うが目覚めると「血まみれのキャンプ場」その物語のなかにいた。
思わぬ形でストーリーに巻き込まれた彼女たちの運命は...
よー、そこの若いの俺の言うことを聞いてくれ
物語の世界と現実世界が交わる映画というのはこれまでに何作か創られています。
代表的な作品としては、ネバーエンディングストーリー、ラストアクションヒーロー、魔法にかけられてなど。
いずれもワクワクさせる傑作映画です。
これらの作品は物語側の登場人物が現実世界に干渉してきます。
物語側の人間が現実世界で荒唐無稽に暴れてくれれば、それだけで面白い話になるので容易では無いにしろストーリーは後からついて来てくれます。
簡単に言えばキャラクター勝負が出来るということです。(当然魅力的なキャラクター創りが簡単とは思っていません)
今作は逆です。現実世界の人間が映画の世界に入り込みます。
これは作品創りがかなり難しいと思います。
世界観が最重要視されますので、まずそのジャンルを徹底的に研究しなければいけません。
そしてそれを設定やストーリーだけでなく細かなディテールにまで活かさなければ面白い作品にはなりません。
わりかし思いつきそうなアイデアなのに類似作がないのはその難易度の高さが理由だと思います。
そういった意味でこの映画はかなり挑戦的な映画です。
僕が最も凄いと思ったのがホラー映画ってそういう風に出来てたんだ!と思わせる説得力です。
皆さんはまどか☆マギカというアニメをご存じでしょうか?
魔法少女の話しなんですが魔法少女の仕組みについてが描かれています。
このアニメを観ると、サリーちゃんやメグちゃんもそうなってたんだ!と思わせます。
その作品自体を飛び越えて魔法少女もの、そのジャンルごと説明しているような感じです。
今作も同じです。この映画だけじゃなくホラーというジャンルごとそうなってたんだと思わせ、それが笑いに繋がります。
その説得力と世界感を構成するのに重要なのがキャスティングです。これが実に見事!
映画の世界に入り込んでしまう登場人物はいかにも最近のホラー映画に出て来そうな連中だし、映画内にいる登場人物はいかにも80'sホラーに出て来そうな連中です。
これが今が旬の人気俳優、女優(デインデハーンやクロエちゃん)なんかが出て来たら台無しです。
いまいちパッとしないけどそれぞれ個性があって見分けがつく、これが大事です。
世界観の見せ方の上手さにも少しふれましょう
映画の世界に入り込んだ彼女たちは最初自分たちがどこにいるのか戸惑います。
そこに映画の登場人物を乗せたワゴンが来て停まります。
「ハーイ、キャンプ場はこっち?」
尋ねる登場人物。戸惑い応えるマックスたち、ワゴンは行ってしまいます。
何だったんだ?90分後また同じワゴンが来ます。
「ハーイ、キャンプ場はこっち?」
さらに90分後
「ハーイキャンプ場はこっち?」
この一連のシーンは凄いです。
まず彼女たちが映画の世界に入り込んでしまったことを伝えています。
そして何かしらアクションを起こさないとループされるだけで何も前に進めないこと。
さらにはホラー映画はだいたい90分で終わるよねっていうあるあるまで入れてます。
ワンシーンで3つもの大事な情報を鑑賞者に伝えるとは...
あ、ついにネタバレ放り込みやがったなという声が。
ご安心下さい、こんなのはこの映画の氷山の一角どころか地球の中の米粒です。
まだまだ仕掛けがありますので。
ただあなたにだけ 届いて欲しい 響け恋の歌
ホーラー ホーラーー ホーラーーー 響け恋の歌
ストーリーに触れないところでいうとこの映画はあらゆるところで丁度良いです。
先ほどふれたキャスティングも丁度良い。
そして恐さ。この映画は恐がらせるのが目的ではありません。
恐すぎてもダメだし、かといって恐くなさすぎると世界観が出来ない、その加減が丁度良いです。
特に襲ってくる殺人鬼ビリーの恐さ加減とか丁度良い造形です。
またいくつかホラーあるあるが放り込まれてますが、多すぎると寒いし少なすぎると物足りない。その加減も丁度良い。
さらには笑いと恐怖と感動とカッコ良さ、この配分も絶妙に丁度良いのです。
脚本の素晴らしさも、演者の演技もこの映画の成功に繋がっていますが、このバランスの丁度良さだけは監督の手腕によるところでしょう。
こう書いてるとホラー映画を結構観てないと楽しめそうにないなとか思われそうですね。
ご安心下さい。もちろんホラー映画を良く知る人の方が深く楽しめるかと思いますが、この映画そんなに入口は狭くありません。
13日の金曜日やエルム街の悪夢の存在とあらかたのストーリー、あるいはジェイソン、フレディの存在を知ってるぐらいで充分に楽しめますから。
ところで、ここまで書き進めてきて肝心の映画内のお母さんとマックスのふれあいについて一切書いてないですね。
どうなってんねん?という声が聞こえてきそうです。
ふふふ、書きませんよ。1番のおもしろどころですからね、それは是非鑑賞してお確か
め下さい。
マックスたちの参加でストーリーに影響はでるんですかね?
誰が死に誰が助かるんですかね?
どのような結末を用意してるんですかね?
いかがですか?少しは観たくなってくれましたか?
え?少しハードルを上げすぎじゃないかって?
そうですね、少し上げすぎましたかね、
でもそんなハードル、簡単に飛び越えると思いますよ
最後にこの映画を好きな方にお勧め映画を紹介して終わります。
・キャビン
・ラストアクションヒーロー
・魔法にかけられて