アノ映画日和

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「燃えよドラゴン」感想 ブルースリーを知らない若者たちへ

 

僕は世代的には完全にジャッキー世代だ。
彼の映画を観ては大きめの服を着、宙に拳を振り、蹴りを出し

ボボッ!

とダブついた袖を鳴らすのを日常としていた程、ジャッキーを敬愛していました。
そこに10歳上の兄が

「もっと凄え奴を観せてやる」

と1本の映画を再生しました。
それが「燃えよドラゴン」

兄の言っていたことは真実で、ガキの僕は神を見ました。

その男の名はブルース・リー

世界中でドラゴンと呼ばれる男だった。


1973年/アメリカ・イギリス(香港)
監督:ロバートクローズ・ブルースリー
出演:ブルースリー、ジムケリー、ジョンサクソン、シーキエン、サモハンキンポー、ほか(脇役としてジャッキーチェン、ユンピョウも出演)
上映時間:98分

f:id:hagane-mk:20170309171723j:image90点

ざっくりあらすじ

香港の裏社会を牛耳るハンが主催する武術トーナメントに世界中の武闘家が招待された。
少林寺で修行するリー(ブルースリー)もその1人である。
アメリカ秘密情報局はリーにトーナメントに出場しハンが麻薬製造に関わってる証拠を掴んで欲しいと依頼。
一度は断るリーであったが、修道僧長よりハンがかつては同じ少林寺で修行した兄弟子であること。
そしてその技を悪用して裏社会でのし上がったことを聞かされる。
更に父は数年前に姉がハンの右腕オハラによって殺害されたことを告げる。
二つの事実を知ったリーは粛正の為、復讐の為、依頼を受けトーナメントに参加する。


今年も海へ行くって いっぱい映画も観るって

約束したじゃない 
あなた約束したじゃない...会いたい

もう最初から最後まで釘付けになった僕は
More リー!
More ドラゴン!

を兄に要求した。
しかし、兄は他を見るくらいなら「燃えよドラゴン」を繰り返し見よ
と、まるで師範のごとく僕に告げた。

その教えを破り、他作品にも目を向けた僕であったが兄はやはり正しかった。
面白い作品もあったが「燃えよドラゴン」と比べると、かなり見劣りがした。

リー信者から怒りを買う事を覚悟して言うが

燃えよドラゴンにブルースリーの魅力は集約されている!

極端な事を言えば今作さえ見ればブルースリーの魅力の9割は掴んだと言っていいでしょう。

これがジャッキーなら1作でジャッキーを語るなという事になりますが、リーに関してはそれが全てです。

それほど今作はリーの魅力を伝える完成度の高い作品。

新作が上映されたら映画館連れてってな!

僕は兄に頼んだが、そこで驚愕の事実を知る。

リーは僕が産まれるよりも前に死んでいる...と。
膝から崩れ落ちる程ショックを受けました。

後にジョンレノンでも同じことを味あわされる事になります。
兄はいつも喜びを与えた後に絶望を届ける。
せめて、

「良いニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」

と映画によくあるセリフのように伝えて欲しいものです。

仕方なく今作を繰り返し見る事にしたのですが、
取分け僕を魅了したのはヌンチャクアクションでした。

高速でフォンフォンと音を鳴らし振り回されるヌンチャク、多数の敵を次々となぎ倒すヌンチャク。
僕は鼻をフガフガ鳴らしながら観ていました。

母にヌンチャク買ってとおねだりもしました。
しかし、何の為に?誰を倒すの?何処で買うの?という質問に
...修行?...悪党?...中国?
としか答えられなかった僕に当然ヌンチャクは買い与えられませんでした。

仕方なく段ボールと紐で作ったお手製ヌンチャクで修行を試みましたが
へにゃへにゃヌンチャクの

これじゃない感!

修行は1日で終えました。
気軽に通販で買って貰える今のキッズたちが羨ましいです...

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リーーーーーーー!
タッチミィ プリーーーーーーズ

この映画は簡単に言ってしまえばブルースリーのワンマンショーです。
シンプルなストーリーにリーのアクションがある。
ただそれだけです。

でもそのワンマンショーの素晴らしい事!

ブルースリーの武術、マーシャルアーツ、ジークンドー、それは全て本物です。
映画の為のアクションではないのです。

その迫力は本物にしか出せないものがあります。

まずはスピード!

これが人間の出せるスピードか?倍速再生か?と疑いたくなる程速い!速い!

彼の動きの前では
まるで止まって見えるぜ!

と他のアクションスター達に言いたくなります。

そして映像から伝わる本物の強さ!

彼の本物の強さを伝える武勇伝はネットをググれば沢山出て来ますので興味のある方は各自お調べ下さい。

この映画におけるその強さを表すエピソードで最も僕が好きなのは

 

姉の仇、オハラを倒す飛び蹴りのシーン!

ボコられたオハラが瓶を割ってリーに反則攻撃するのですが、撮影中誤って本当にリーの拳を切ってしまったそうです。
彼は怒らず笑って許してくれたそうですが、
次の飛び蹴りのシーンで思いっきり蹴られます。
ワイヤーでも使ってんのか?っていうぐらい吹っ飛びます。

後に蹴られた役者が語っています。
数十メートル吹っ飛ばされたかと思いましたよwww...と

いやメッチャ怒ってるやん!

更に凄いのは吹っ飛ばされた役者を受け止め支えた人の腕が骨折したということ。

どんだけ威力あるねん!
で、どんだけ怒っててん!


あと忘れてはいけないのが

顔芸!

ホワッチャー!と怪鳥音と共に見せるリーの表情。
冷静に顔だけの画像を見れば笑ってしまいそうになりますが、
映画の一連の流れで見ると、怒りや哀しみがビシビシと伝わってきます。

特にオハラにトドメの一撃を喰らわすジャンプして踏みつけた後の顔!

どうじゃ!こるぅあ!
姉ちゃん...見てるか!
俺はやったぜ!仇を討ったぜ!

言葉こそ発しませんが顔で全てが伝わります。
彼の顔芸はワッキー並みにあらゆる感情を伝えます。

こうしてオハラを倒したリー
物語はラスボス戦、ハンとの鏡の間での対決へと進みます。

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鏡に映った あなたと2人
情けないようで たくましくもある

数千枚の鏡で囲まれた部屋に逃げ込んだハンとの一騎打ち。
沢山の自分とハンが映るこの鏡の部屋にリーは苦戦します。
映像的にかなり面白い演出ですよね。

しかし、これどうやって撮影したんでしょう?
CG処理など当然ない時代です。
なのにカメラマンはおろか誰も映り込んでいません。

今作の演出はこういうひと目で分かる凄さや面白さばかりです。
多勢vsリーでもどんだけ出てくんねん!と言わんばかりに、わんさかわんさか出て来ます。
それをリーが余裕で倒していきます。
苦戦などありません。

リー無双!
桃太郎侍状態です!

そしてラスボスハンの右腕が義手でウォーズマンみたいな鉄の爪を装着してるというね。
もう一見して

わかりやすく

良いですね。
黒幕はお前だったのか!とかそんなのナシ!
わかりやす~~い

ちなみにこのラスボス戦、当初闘うのはリーの予定ではありませんでした。
物語中旧友を殺されたローパーが闘う予定でした。
つまり、主役はリーの予定ではなかったんです。

リーのアクションやビジュアルを見れば主役を交代し結果ブルースリーワンマンショーになったのも頷けますが、ローパー役の人可哀想ね。

それだけ魅力的な俳優、武闘家であるブルースリー。
今、彼をイケメンと認識している人が少ないという事を最近知りました。

え?え?え?です。

そんな人たちはきっと今作を観ていないはずです。
観ればそのキレのあるアクション、伝わる本物感、醸し出す雰囲気、鋭い眼光、イケメン以外何者でもないと分かるはずです。

死後何十年も経っているのに今尚彼を模したキャラが映画や漫画に出て来る意味が分かるはずです。

そしてなぜ彼がドラゴンと呼ばれるのかも。
そのへんの雰囲気イケメンとは訳が違うのです!
今作を観ずしてふわっとしかブルースリーを知らない方是非ご鑑賞下さい。


ざっくり説明ではありますが、僕はひとつ上の世代から渡された、
「燃えよドラゴン」「ブルースリー」というバトンを繋いだつもりです。
今度はあなたが観て次の世代に繋いで下さい。

といっても気難しく構えて観る必要はありません。

Don't think Feel 
(ドンシンクフィーユ/考えるな!感じろ!)

です!

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追伸、ブルースリーと言えば黄色いトラックスーツ姿を思い浮かべる方が多いですが、あれは燃えよドラゴンではなく、死亡遊戯ですから!
しかもあれは敵のライダースーツを奪っただけで、亀仙流的なブルースリーの道着というわけではありませんから! 

燃えよドラゴン(初回限定生産) [Blu-ray]

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最後にこの作品を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ドラゴンへの道
・イップマン序章/葉門(ブルースリーの師匠の物語です)
・THE CURSE OF THE DRAGON(ドキュメントです)