アノ映画日和

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「アイムノットシリアルキラー」感想 え?そっち系!?予想を裏切るトンデモ映画

 

ご存知かと思うが念の為、

シリアルキラーとは殺害自体を目的とした快楽殺人鬼のことである

つまりこの映画「アイムノットシリアルキラー」とは“私は快楽殺人鬼ではない”ということ

悪趣味でその手の猟奇的な映画を好む僕は

またまた~

と端から信じていなかった。

が、裏切られた

確かにアイムノットシリアルキラーだった

しかし…

 

2016年/アイルランド、イギリス
監督:ビリー・オブライエン
出演:マックスレコーズ、クリストファーロイド、ほか
上映時間:103分

f:id:hagane-mk:20171106012819j:image72点

ざっくりあらすじ

田舎町に住む16歳の少年ジョン。
彼の日常は普通のそれと異なる。
母親が営む葬儀屋で死体に防腐剤を流し込み血液を抜くなど特殊な手伝いを行っていた
その事が原因で学校では虐めにあうなどしていたが、彼は嫌がってなどいなかった。
むしろ死体に触れれる事を喜んでいた

なぜなら彼はソシオパス(社会病質者)だったから。

そんなジョンの住む町で連続殺人事件が起こる
ジョンは自らその事件に足を踏み入れるが...


僕は狂っていた ひざをかかえながら

傷をなめていた 汁を垂らしながら

僕がどんな映画を想像してたかというと

主人公の青年が快楽殺人鬼で、殺人を重ねながらも

「僕は決して快楽殺人鬼ではないんだ」

と苦悩しながらも1人また1人と手をかけていく
そんな闇のストロングスタイル、サイコスリラー映画
「少年は残酷な弓を射る」とか「ファウンド」とかそういう系でした。
ていうかそうであれ!と願っていました。

ところが今作は僕のそんな予想を完全に裏切ってくれました

その裏切りに腹を立てたかどうか端的に言うと

メッチャ喜んだ

松田優作よろしく

なんじゃこりゃあ?

と喜んだ

しかしこれは万人受けは絶対しない、まさに

賛否両論分かれる映画です

僕は賛の人間代表として今作を紹介させて頂く事にしました。

つきましてはネタバレ不可避となりますので裏切りを楽しみたい方は鑑賞後に読むことを推奨します


ジョンはソシオパス(社会病質者)としてカウンセリングに通ってます

色んな言葉がありますね、ソシオパス…初めて聞きました。
殺人事件や死体などに強い興味を持ついわば犯罪者予備軍的な人を指す言葉らしいです

学生時代、デ◯ゴスティーニから発行されてた「週刊マーダーケースブック」なんか読んでた僕は完全にソシオパスだった訳ですね…

で、そんなソシオパスジョンは葬儀屋で母の手伝いをしながら死体を嬉々として触る毎日。

(ソシオパスでカウンセリングに通う息子に死体処理を手伝わせるおかんもどないやねん)

かと言ってジョンはサイコ君ではないので、友達もいるし、隣の老人(クリストファーロイド)にスマホの使い方を教えてあげるなど優しさと社交性もちゃんと持ち合わせています。

さてそんなジョンの住むこの田舎町ではここ最近連続殺人事件が起きており、その被害者の死体も葬儀屋に運ばれてきます。

なぜかその死体たちは臓器が一部欠けた状態
こんな奇妙な事件、ソシオパス君が興味持たない訳はありません。
さっそく独自で調査を開始

町を探索してるとわりかし早めに疑わしき人物を発見します。
その人物はこ汚い身なりに日中の町中でナイフなど持ち歩いております。
その男を見張っていると隣人の老人に接触して来ました。
しかも老人を人目に着かない様な場所に連れて行きます。
当然後をつけるジョン

こいつはやりよんぞ

ジョンも僕も確信しておりました。
すると男は老人の背後にまわりナイフをかかげ

ブスッ!!!

刺されます

男の方が

???

ピッ
僕はここで一時停止して暫く唖然

え~と、連続殺人鬼はお隣さんの老人の方でした
しかもなにやら東京喰種の赫子的なやつで殺してます。
内臓を抜き出して自分にハメてました
とりあえずジョン君は殺人鬼ではない
で、お隣さんが殺人鬼でしかも人間ではない…と

うん、だいぶ思ってたのと違うな…

ピッ 再生

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何度も耳をふさいでは ごまかしてばかりいたよ
だけど今度はちょっと違うんだ 昨日の僕とは

普通お隣さんが人ならざる者で人を殺すとなれば距離を置きたくなりますが、ジョン君はソシオパスなのでグイグイいきます。

お前の正体を知ってるぞ

車に置き手紙を残します
それからは老人の監視です

きっとまた殺る

その機会はすぐにきました
パーティーで老人は妻ケイとダンスを踊ろうとしますが脚が悪く上手く踊れません。

後日、散髪屋に向うと店主を襲います。
それを見ていたジョンは防犯警報を鳴らし警察を呼びます。
すぐに警察はかけつけました、が、

チェストーッ

散髪屋と共にに警察も喰種的なやつで殺害
その後なにやらもぞもぞしとります。

家に帰った老人はご機嫌に奥さんとダンス

軽快なステップで

あいつ、足 盗りやがったな...

その後も友人マックスの父親も殺害
周りの人達まで殺されジョンは決意します

これ以上誰も殺させない!

ソシオパスどころかジョンは人知れずヒーローになろうとしています。
ジョンは老人が出はからっている隙に家に侵入
寝ている妻ケイの写真を脅迫の為に撮ろうとします

ん?このヒーローやり方がコスいな...

するとケイは目覚めて騒ぎ出します
パニくったジョンは置時計でケイの頭を

ゴッチーーン

あわわ...あわわ...殺っちまったよ
半べそのジョンはセラピストに電話。

やっちゃった、やっちゃった、どうしよう先生

なんやねんこいつ、何が「これ以上誰も殺させない」やねん
お前が殺しとるやないかい

先生はすぐに駆け付けるから大丈夫となだめます
が、そこに

う、う~ん

ケイ、生きとったんかいワレ
(by漫☆画太郎)

先生もう大丈夫、じゃあね
ジョンは頭から血を流したケイの写真を撮りそれを老人にメール

今度は僕のターンだ

怒った老人がダッシュで家に帰って来ます
見つからないようサササっとジョンは退散しようとしましたが
老人の車にセラピストの死体を発見

どうやら先生はジョンを心配して駆け付け、老人と鉢合わせになり殺された模様です。
先生の死体を老人に渡してなるものか
ジョンは死体を森の中に隠します。

畜生、あのJJI ぜってえ許さねえ

いや...老人もあれやけど君も大概やで...

後日マックスの父親の葬儀に参列するジョン
そこに老人もやってきます

お前が私の妻に手を出したんだな

お前は僕のセラピストを殺した

セラピストの死体を返せ

ぜってぇ返さねえ

別に他の奴でもかまわない、お前でも

こんな大勢の人の前で殺せるものか

う˝う˝う˝う˝ーー

中学生か野良犬の喧嘩みたいですが、町の平和がかかった闘いです

そして迎えるラストバトル、ついに老人の真の正体があらわとなります

老人の真の姿とは?
ソシオパスvsモンスターの決着は?

書きたいところですが、いつもどおり寸止めであらすじ紹介を終えます

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生きる事はできる 消えていくすべ知らない
この手伸ばしている お前を愛しているのに

ちょっとあらすじ紹介を読むと僕の説明下手も助けて安っぽいB級映画かな?
なんて思われそうです。

が、この映画は好き嫌いはあるでしょうが
決してB級でも安い映画でもありません

まず考えて欲しいのは「アイムノットシリアルキラー」とは誰のことでしょう
ソシオパスと診断されながらも、決して自分は殺人犯などにはならないと自分なりに努力し生きているジョンのこと

それもあります

もうひとりモンスターにもこの言葉は当てはまります。
ジョン目線で言えば己の命を長らえる為に人間を殺す老害モンスター。
殺人鬼以外の何者でもありません。

しかし、客観的にこの映画を観る鑑賞者は気づきます。
この老人が長らえたかったのは

命ではなく妻との愛だと

そう考えると快楽の為に殺してる訳ではないこのモンスターもまた
「アイムノットシリアルキラー」なのではないでしょうか?

そして日常に死体が当たり前の様にあるジョンは死が身近にありすぎます。
その為、生きる事と死ぬ事を軽視してる感があります。
だからソシオパスとなったのでしょう。
更に家庭環境から愛というモノも分かっていません。

そんな彼が対峙するモンスターは命に執着します。
ジョンは自ずとなぜこのモンスターはそれほどまでに命に執着を?
と考え始めます

最終的にはそれは愛ゆえという事を理解します。

モンスターは決して許される存在ではありません。
しかしモンスターと対峙する事でジョンは命と愛を学んだのも事実です。

これはソシオパスvsモンスターというエンタメ映画でありながら
少年の心の成長を描いた青春映画でもあります。

ホラー映画?サイコパス映画?トンデモ映画?と鑑賞を避けているのなら
是非、手にとってみて欲しい

そう願う元ソシオパスこと僕でした。

現場からは以上です。

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追伸、今作は16mmフィルムで撮影されており映像が少しザラザラしています。
それが雪積もる田舎町の寒さ
そこで起こった猟奇事件の精神的寒さ
両方の演出に一役かってます。
そういった随所に見えるセンスの良さも僕がこの映画をお勧めする理由の1つです。 

アイム・ノット・シリアルキラー [Blu-ray]

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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります
・少年は残酷な弓を射る
・ファウンド
・ドント・ブリーズ