アノ映画日和

年間500本以上鑑賞、あらゆるジャンルの映画をイラスト付きで紹介

「ミスミソウ」感想 胸糞注意!2018年1番の衝撃作!問題作!

 

2018年邦画の1番の話題作・ヒット作といえば

「カメラを止めるな!」ですよね。

きっと100人聞けば100人そう答えます。
僕もそこに異論はありません。
でも聞き方を変えて

1番の衝撃作は?問題作は?

としたなら、間違いなく

「ミスミソウ」です。即答です。

表の「カメ止め」
裏の「ミスミソウ」

残念ながら裏は表ほどのヒット、話題にはなりませんでした。

何故なんだ⁉︎

質は違うけれど同じ位面白いのに!
この認知度の低さに僕はかなりの苛立ちを感じています。
なので今回はあからさまに褒めちぎって紹介してやろうかと。

2018年/日本
監督:内藤瑛亮
出演:山田杏奈、清水尋也、大谷凜香、大塚れな、ほか
上映時間:114分

f:id:hagane-mk:20181217223851j:image88点

ざっくりあらすじ

とある田舎の高校。
東京から転校してきた野崎春花(山田杏奈)は壮絶なイジメを受けていた。
これも卒業までの我慢、もう少しの辛抱
ジッと耐え続ける日々。
しかしイジメは日々エスカレートしていく。
やがてそれは家族にまでも手が及ぶ。
その瞳に無残な家族の姿が映った時、

少女は復讐の鬼と化す。

幻想の花 歌っておくれ
この世界は美しいと

この映画を撮った内藤瑛亮監督を皆さんはご存知でしょうか?
「先生を流産させる会」「高速ばぁば」「パズル」「ライチ光クラブ」の監督です。
御覧になられた方は分かると思いますが、この監督の撮る映画は

胸糞悪い!

精神を削る事を目的とした様な映画ばかりです。
全員にウケる映画というよりは、一定数存在するだろうマニア層に向けて撮っている印象。
つまり大ヒットさせる考えなんてさらさらない。
変わった監督さんです。
また、元となる題材は実在事件や小説、漫画原作を使うのも特徴の1つです。
そんな監督が今回選んだ題材が

ミスミソウ

押切蓮介による漫画で、ジャンルはホラーと言えばよいのか猟奇的と言えばよいのか...

胸糞悪い

漫画です。
ということで

胸糞×胸糞

というとんでもないタッグが誕生しました。
こりゃ想像もつかない化学反応が起きるぞ
ドえらい映画になるぞ
胸糞好きの僕はワクワクしてた訳…ですが…

想像を遥かに超える胸糞トンデモ映画が待っていました。

ではその素晴らしき胸糞映画のどこが素晴らしいか一つ一つ取り上げ褒めていきます。

まず褒めたいのが

出演陣の素晴らしさ

主演を演じるのが山田杏奈。
特別演技が上手いという訳ではありませんが、この映画における彼女の

存在感が凄い!

一面雪景色の白、
その中で映える血にそまった彼女の赤

おっふ お美しい

胸糞悪いストーリーにグログロ映像の連続なのに
彼女の存在がこの映画を美しいと思わせる。
泥にまみれようが血にまみれようが美しい。
主役の作品に対する貢献度は

確実に原作超えしてます!

彼女を起用した段階でこの映画の成功は決まっていた。
そう言っても過言ではありません。

次に素晴らしいのが彼女を支える男子クラスメイト相場晄を演じる
清水尋也

彼には前々から注目してました。
昨今、イケメン俳優がこぞって王子様キャラばかり演じる中、1人その波に抗う様に様々な役に挑戦する清水尋也。
「渇き。」では、か弱きいじめられっ子を、「ソロモンの偽証」ではクソヤンキーを、「ちはやふる」では偏屈なかるた部 部長を。

本当に同じ男の子か?

と疑いたくなる程、演じる役柄によってイメージを変えます。
そんな彼が満を持して今回はイケメン王子様キャラを...
と思いきや、トンデモないド鬼畜野郎でした。
そのサイコっぷりは、ただのイケメン売りの連中には出来ない演技。

流石です!

彼は今後の成長が楽しみな若手俳優の筆頭です。
皆さんも是非、ご注目を。

そんな主演2人だけではなく、虐めっ子軍団の連中やクソ教師など脇を務めるどの役者さんも素晴らしかった。
数年後には、

「あの女優さんもあの俳優さんもみんなミスミソウに出てたんだよ」
「今考えたら贅沢よね~」

と言われます。
たぶん、知らんけど。

f:id:hagane-mk:20181224230950j:image

Love me 涙も Crying 血の色  

さて肝心の中身、ストーリーです。
当然、素晴らしいです。
素晴らしいんですが...
ぶっちゃけそんなに書くこともないんです。

少女がクラスメイトに家族を殺されて復讐する、
以上。

うん、簡潔に言えばそれだけです。
それだけなんですが、じゃあどうやって家族を殺されたかとか
どうやって復讐していったかとかが

いちいちエグイ!

ではそのエグさ、凄まじさをネタバレしない程度に紹介していきます。

冒頭、野崎春花の日常のイジメが描写されます。
リーダーの妙子を始め男子も女子も皆、春花を虐めます。
靴を盗まれ、ゴミ捨て場に捨てられ、机にカラスの死骸を置かれ。
流石に両親も異変に気付き学校に抗議に行きますが、担任は知らぬ存ぜぬ。
あげく帰りには男子生徒に底に画鋲を貼った靴で階段から蹴落とされます。

生徒も教師もクソだ!あんな学校行かなくていい!

ということで春花は不登校を決め込みます。
しかしそれで事が済むほどいじめっ子軍団はぬるくないです。
春花の唯一の味方、相場君とイチャコラして帰ると

自宅が赤い...

家燃やされとるがなぁ!!!!

両親は焼死体で発見。
相場がなんとか救いだした妹も見るも無残な黒焦げ姿で病院に搬送。
泣き崩れる春花。

翌日学校では、虐めっ子軍団が集まって話しをしています。
「まさかあんな事になるとはなw」
「え~ん、こんなことバレたらお母さん泣いちゃうよ~」
「大丈夫、バレねえってw」

き、き、鬼畜じゃあ!鬼畜祭りじゃあ!

子供が子供を殺すなんて映画といえど許される事ではありませんが
ここまで人外な鬼畜どもが相手となったら話は別です。
さぁ、準備は整いました。

目には滅を、歯には覇王

ハムラビ法典の解禁じゃあ!

 

f:id:hagane-mk:20181224014930j:image

まず虐めっ子軍団の三下女子3人組が野崎春花をゴミ捨て場まで呼び出します。
最初は
「家族があんな事になってツライよね...グス」
とか様子を伺いますが
「 野崎のこの目、こいつ完全に気付いてるよ」
「え?マジ?」
「おい、野崎お前ここで自殺しろよ!」
と鬼畜っぷりをいかんなく発揮、春花をゴミ捨て場に突き落とします。

ここからの野崎は西部劇のような雰囲気でメチャカッコイイです!

「早く自殺しろっツってんだろ..ウグッ!」

拾った釘で虐めっ子の眼球を

グッサーーーー!!!!

鉄パイプで殴打殴打殴打
相手から奪ったナイフでサクサクサク

躊躇無し!容赦無し!

見る見る間に3体の死体を作りあげます。
この間、三下共は命乞いしたりヒーヒー言う訳ですが
春花は一切喋りません。
無言でただただ刺す切る斬るKILL
春花とゴミ捨て場がどんどん紅く染まっていきます

高まるぅぅぅぅぅ!!!!!

マジサイコ&最高!
ここだけで何回リピートして観たかわかりません。

ここから主犯格に近づくにつれ残酷にそして美しく殺戮が続けられます。
手足は折れ、内臓はこぼれ、肉はミンチと化します

どうっすか?
というような映画なんですけど、どうっすか?

グロそう?単調そう?

いやいやいや、そこが内藤監督の手腕の凄さですよ
グロなんだけど、どこか漫画チックに描くことでグロだけじゃない
カッコ良さと少しの笑いを混ぜた素晴らしい絵に仕上げています。
単純にグロを見せたければ、豚か何か動物の臓物を使えばそれらしくなるし安上がり。
でもそれじゃ絵にならない、面白くない。
あえて少しチープにすることで漫画的に映画を演出する。

素晴らしい!

更に物語も虐めっ子には虐めっ子のサイドストーリーを用意したり、教師には教師のストーリーを見せたり複雑さを見せます。
そこに僅かな同情の余地を感じたりするのですが、
先に見せなかった放火シーンを後で見せることで

SATSUGAISEYO!SATSUGAISEYO!

と心が叫ぶほどの怒りが燃え上がります。

更には主犯格と思っていたあの娘との過去のエピソードがあったり、
その過去にイジメの原因が隠されてたり
信用してたあいつがド鬼畜でといった裏切りもあったりで
単調なんてトンデモナイ。
最初から最後まで息つく暇もないくらいドラマが展開されます。
ラストには素晴らしいエンディングまで用意されています。

絶望の果てに芽吹く狂気
赤よりも紅い復讐劇
そして最後に咲き誇る華

これぞ2018年の「裏」の顔です。

この映画を置いてきぼりにして2018年は終われない
そう断言しておきます。 

そして涙も血もみんな枯れ果て
やがて遥かなる想い

さて、ここからは蛇足的な事なので読まなくても良いのですが、お時間があればもう少しお付き合い下さい。

先に言った通りこの映画は漫画が原作です。
その出来は素晴らしいのですが、

良く言えば原作に忠実
悪く言えば原作まんまのトレース映画です。

こういう場合、普段の僕なら後者と取り悪口を言いまくるのですが
今回に限ってはそれが素晴らしかった。

というのも、内藤作品は絵は良いんだけどお話はあんまり…という事が多い。
一方、押切漫画はお話は良いんだけど絵が好きじゃない。
というのが個人の感想だからです。
今作はその互いの足りない部分を補い合って生まれた傑作です。

ここでちょっと裏話を挟みますが

ミスミソウを映画化するなら内藤監督しかいない

ある押切ファンがTwitterで呟いていました。
内藤監督はエゴサーチでそれを読みまんざらでもない気持ちになっていたそうです。
しかし実際映画化の話が進むと、監督は別の方で決定

なんだよ、こんちきしょー!

内藤監督、押切ファン、あと僕は声をあげて悔しがりました。
ところが、撮影直前になり様々な問題が発生。
話は二点三点して結局内藤監督の元にやってきたのです。

これって凄くない?
運命とやらを信じざるを得ない話です。

そんなドタバタ劇のあげく引き受けたのにあれだけの完成度の高さ。
それは内藤監督がオファーを受ける遥か前から頭の中で絵を仕上げていたからに違いありません。
あと脚本を弄りまわす時間もなかったというのも功を奏しましたね(小声)

とにかく
誰かが呟かなかったら?
監督がそれを読まなかったら?
映画化がスムーズに進んでいたら?

どれか1つボタンが掛け違えば僕が観たミスミソウは全く別のものになっていた可能性が高いのです。

やっぱ映画の神様っているんだなぁ...

無神論者の僕でもそう感じざるを得ませんでした。

そんな奇跡の映画がね?
大して騒がれず、陰に隠れたままになってるんですよ。
みんなカメ止め、カメ止めって大騒ぎして。

これを奇跡の冒涜と呼ばずに何と呼ぶ?

大事なことなのでもう1度だけ言っておきますね。

この映画を観ずして2018年の映画は語れないぞ!
うん...ちょっと言いすぎた、ゴメ。
出来れば観て下さい、お願いします。

 

f:id:hagane-mk:20181223051806j:image

 

最後にこの映画が好きな方が好きなんじゃないかなという映画を紹介した過去記事を貼って終わります