アノ映画日和

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「ブレードランナー2049」感想 寸止め地獄!伝説の続き(のようなもの)についてあれこれ

 

古い傑作映画に対して言われる

今観ても面白い!

これは本当。
実際に何十年も昔の映画なのに、今の作品より面白いと言える映画が何本も存在している。

今観ても色褪せない!

これは嘘。
映像も演出も時と共に確実に色褪せる。
色褪せたその感じが良いということはあるが。

ブレードランナー

今観ても面白い、今観ても色褪せないと言われる伝説的カルトSF映画。
それが35年経ち、ようやく?今更?続編が創られた。

果たして「伝説の続き」は新たな伝説となり得たのだろうか?

 

2017年/アメリカ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアンゴズリング、アナデアルマス、シルヴィアフークス、ジャレッドレト、ハリソンフォード、ほか
上映時間:163分

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ざっくりあらすじ

レプリカントとは、タイレル社がバイオ技術で造った人造人間である。
2049年現在、倒産したタイレル社に代わりウォレス社がより忠実なレプリカントを製造している。
寿命制限のない旧型レプリカントの生き残りは追跡され解任された。
レプリカントの追跡者は今もこう呼ばれている

ブレードランナー 

これはレプリカントでありながらブレードランナーでもある"K"
彼を通して繋がる過去と現在そして未来を描いた物語


決して捕まえることの出来ない
花火のような光だとしたって
もう一回 もう一回 もう一回 もう一回

いったい何回観ただろう、伝説のSF映画ブレードランナー
いったい何が凄くて皆ブレードランナーを伝説扱いするのか
それは

世界観

実はストーリーは至ってシンプルで退屈と言えば退屈な作品

ただその絵と世界観はずば抜けて凄かった
映画とはまずストーリーありきが持論の僕も

これが未来か!

と驚愕しました。

どうなったらこんな未来になんねん!という現代とはかけ離れた世界。
遠目ではハイテクの進化を感じさせるネオンと高層ビル
現地目線では退廃した薄汚い都市
アメリカでありながら、あちこちに散りばめられたアジアンテイスト

混沌としながらも、まとまりのある世界

こんなの観た事ねぇ!

SFとは未知なる世界を見せるもの、
単調で静かなこの映画はこの1点突破で伝説となった。

え?意外とよく見るタイプの未来?
いやいや、35年前ですよ、創られたのは。
それが今尚、これはブレードランナー的未来映画だな...
と新作映画と比べて語られる程、ブレードランナーの映像は斬新で映画界における未来像のスタンダードと化した。

で、新作「ブレードランナー2049」
予告映像を観た瞬間に確信しました

こりゃ伝説にはならん

元祖ブレードランナーの30年後の世界として説得力のある映像ではあるが

衝撃!と呼べるものは何1つ見当たらない。

ブレードランナーだけではなく、スターウォーズ、エイリアン、ET、BTTF、ターミネーター1、2、等々、伝説になるSF映画には伝説になるだけのパイオニア的映像がありました。

それが期待できない続編はおそらく...
そんな期待薄の中、いざ鑑賞。

ー163分後ー

長ッ!!!

1日に3本も4本も映画を観る癖に、2時間以上の映画には苦痛を感じる僕はその長さに苛立ちを覚えた。

しかも単調で退屈!

変なとこだけ踏襲しやがって!
こんなの伝説どころか凡作or駄作じゃい!
50点!
さっさと次の映画を観始めた。

ところが全然次の映画が頭に入ってこない
あれ?あそこどういうこと?
2049の事ばかり考えていた

仕方ない!もう1回や!
色々疑問点を確認しながらの再鑑賞。
まぁ...駄作...ではないか
60点?

布団に入った後、まだ気になるあれこれ
あと1回だけ
再々鑑賞
うん、嫌い...ではないかな

レンタル返却日、これ返す?
いや...もう1回だけ
延滞して4回目
好きと言えば...好きかな
70点?

5回目
…80点…いや82点←イマココ

まるで美人キャバ嬢におねだりされて買取価格を上げる質屋の様に、僕の2049に対する点数は上がっていった。
おそらく、まだ何回も今作を観るだろうがもう点数はこれ以上あげない、

だって今作は決して伝説ではないのだから

花に声があるなら 何を叫ぶのだろう
「自由の解放」の歌を世界に響かせているだろう

ようやく今作の話
の前に、前作を観てない、短編を観てないと言う方の為に簡単な年表を用意しましたのでご確認下さい。(オフィシャルHPを参考に省略、抜粋しています)

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この続きが「ブレードランナー2049 」という訳です。

さて、今回の主人公はネクサス9型レプリカントKD6-3.7(通称K)
職業ブレードランナー
廃棄対象となった旧型レプリカントの捜索、解任及び処分。

ついにレプリカントがレプリカントを処理する時代になりました。
これを演じるのが

みんな大好きライアンゴズリング!

不器用で孤独な男を演じさせたら彼の右に出る者はいません。
K役は彼しかいないと制作陣が決め打ちしてたのも納得の配役です。

Kが8型レプリカントのサッパーの処分に行くところから物語は始まります。
格闘にはなりましたが無事任務完了。
現場をあとにしようとしますが、庭の枯れ木の根元に箱が埋められてるのを発見。

回収班により持ち帰られたそれを調べると箱の中身は遺骨。
検死の結果、30年前に出産の際死亡した女性の遺骨だと判明。
これにて一件落着としようとしたところKがあるものに気付きます。

腸骨に製造番号が!
この遺体はレプリカント?
レプリカントが出産!?

こりゃえらいこっちゃ!!!

Kの上司ジョシは社会秩序の崩壊を恐れ

これに関わる全ての痕跡を処理せよ!

との任務をKに与えます。

Kがまず向かったのはウォレス社。
社が管理する古いアーカイブからその遺骨が2019年に逃亡したレイチェルのモノと判明

ん?レイチェル...!?
あの前作でデッカードと逃げたあのレイチェル?
髪型のこんもりしたあのレイチェル?
肩パットがイカツイあの?

え?え?え?
えええー!!!

事情の知らないKは素うどんみたいな顔をしてますが、事情を知ってる僕らは驚愕です。
あのレイチェルが...

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なぜ そんなに生命の秩序壊す
明日にでも Clone father,Clone dictator

Kはレイチェルと共に逃げたデッカードから追おうと考えます。

一方かねてよりレプリカントの生殖技術を追い求めていたウォレスもまたこの件に乗り出します。
ラヴと名付けた忠誠なるレプリカントにレイチェルの子供確保を命令。

Kはデッカードの元同僚を尋ねるも情報は得れず
(相変わらず折り紙折ってたね)

こういう時は現場100回
昔ながらの刑事の様に箱があったサッパーの家へ向かいます。

そこで見つけたのが

枯れ木に掘られた6.10.21の文字
赤子を抱いた女性の写真
赤子の靴下

ここでKの記憶がフラッシュバックします。

木馬の玩具に掘られた数字
6.10.21

奇妙な一致に困惑...

現場を燃やし次はDNA記録調査

2021年6月10日生まれの記録を調べます。
そこには男児、女児、同一のDNAを持った子供のデータがありました。
女児は病死
男児は生存
同一のDNAを持つ者の存在はあり得ない。
女児はコピーだ
男児を追うぞ

次は子供がいたという孤児院だ!

なんでしょう...この手掛かりを見つけたら、それが次の手掛かりに繋がり、さらにそれが次の手掛かりに導く...

RPGロープレか!

この映画が退屈(僕も初見はそうだった)と感じる方が多い原因は、この他人がやってるファイナルファンタジーを見せられている様な部分にあるのではないでしょうか。

話をあらすじに戻しましょう。

孤児院で記録を見ると、その子供のページがごっそり破り取られてます。

コピーの存在といい誰かが子供を隠そうとしている...

手掛かりをなくしたKでしたが、孤児院のある場所でまた記憶がフラッシュバックします。

小さな子供が他の子たちに追われ大事な木馬の玩具を隠した記憶

その場所がこの孤児院の風景と同じ

しかしこの記憶はレプリカントの精神安定の為に人工的に植え付けられたもの

それは分かっているKですが、目の前にある風景がそれを否定します。
恐る恐る記憶の木馬を隠した場所に手を伸ばすと

バーン!!!

その手は記憶と同じ木馬を掴んでいました。

こ、これは...
もしかして、記憶は本物なのか?
すると俺は、俺こそが、レイチェルの...
俺はレプリカントではないのか?

Kは自身のアイデンティティが揺らぎ動揺してましたが、僕は

お前新型レプリカントちゃうんかい!
2021年生まれやったらどえらい旧型やないかい!

と突っ込んでいました。

真実を確かめずにはいられないKはレプリカントの記憶製造者の権威アナステリンの元を訪ねます。
そして自分の記憶は偽物か本物か確認して貰います。
そこで告げられたのは

その記憶は誰かが経験した本物の記憶である

という事実。

ちっくしょー!なんじゃボケー!

常に冷静だったKが感情をむき出しにします。

だってレプリカントじゃないもの
産まれた存在には魂があるもの
誰かに忠誠を誓う必要も差別されることもなかったんだもの
そう確信してるんだもの...

感情を殺さなくていいよK...(涙)

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真実を求め、次は木馬の成分を調べます。
その木馬に残された放射線含有量から

これだけの放射線がある可能性は1か所しかない

ラスベガスだ!

なるほど、2022年の電磁パルス爆発の場所ね

そこにいた人物こそ、

待ってました!1時間半も待ってました!

リック・デッカードこと

ハリソンフォードです!

待ってたけど、最強カードは予告で見せずに隠しとけよ
DVDのジャケにも出てるし...

「切り札は先に見せるな、見せるならさらに奥の手を持て」

幽遊白書 妖狐蔵馬のセリフが頭によぎります。
さらに奥の手とやらに期待しましょう。

ですが、今作はまだ新作です。
あらすじを追うのはここまでにします。

ラスベガスで待つデッカードはKに何を告げるのか?
Kはレプリカントなのか?それとも?
そして彼らを待つ運命とは?
ウォレス社の動きも気になる気になる。

真相はこの先の展開にあります。
未見の方は是非その目でご確認下さい。

あらすじはここまでですが、僕の思いや不満はまだまだありますので記事は続きます。
それに伴いネタバレがありますので、未見者及び興味ねえよという方はお逃げ下さい。

so 我オモウユエニ我アリ
so 我オモウユエニ我アリ 

未見者の方はいませんね?
僕の考えに興味のない方もいませんね?

では言いましょう

さらに奥の手なかったね!

ならハリソンフォード隠さんかい!
てっきりルトガーハウアーが何らかの形で出て来るかと期待したやん!

あと

蓋を開けたら結局デッカードとレイチェルの世界軸じゃないか!

その間でKというレプリカントが翻弄されて犠牲になったっていうね

それ続編じゃなくて、スピンオフじゃね?

ブレードランナーのテーマをベースにherとトゥモローワールドのエッセンスを加えてヴィルヌーヴのフィルターを通して出来たスピンオフ。

35年の月日を経て、ようやく大作の続編を創る…

なら、ブレードランナーという歴史を前に進めてこそ続編でしょ

僕はねブレードランナーの続編を創るなら

もう続編は創れない、これで完結!

ぐらいの覚悟を持って挑んで欲しかった。

ところが作品のテーマは相も変わらず

「人間とは何をして人間なのか?」

を呼びかけ、また答えを出さずに終わる。
で、全てが寸止め。

あの子供は人類とレプリカントとの闘いの主導者となるのか、それとも共存の架橋となるのか

Kに偽の記憶を埋め込んだのは誰なのか

レイチェルはなぜレプリなのに子供を産めたのか

デッカードは人間なのかレプリなのか

人間とレプリの境界線はどこか

よく言えば「未来に謎と余白を残した」
悪く言えば「更なる続編に委ねた」

てなるんですかね。
つまり現状維持
やっぱ現段階ではスピンオフですよ。

なんか「ローグワン」に似たものを感じます。
素晴らしいけど、なくてもSWは成立するみたいな。

続編にそこまで期待する方がムチャ?そうですかね?
ターミネーター2、エイリアン2、ダークナイト、ダイ・ハード2、等々

歴史的な続編は沢山あります。
その全ては1の良さを踏襲しつつどこかで壊し、なんならそこで完結しても良いという作品でした。

今作はそういう作りにはなっていません。

ドゥニ・ヴィルヌーヴはブレードランナーに思い入れが強すぎるんですよ。
そしてブレードランナーファンに気を使い過ぎなんですよ。

あらゆる場面や登場人物にオリジナルへのオマージュを感じます。

こうしないとブレードランナーじゃないですよね?

みたいな。

Kの行動範囲を広げることで、ヴィルヌーヴらしい景色も見せますが、やっぱネオンと和が融合するブレードランナー調の景色を捨てれない。

謎は謎のまま残すのがブレードランナーだよねという物語構成。

う~~ん...

少なくともデッカードとレイチェルの物語は完結して欲しかったな。
いかにリドリースコットやハリソンフォードがインタビューで答えを言おうと
映画の中で明言して貰わないと、答えにならない。

ヴィルヌーヴはその答えを出す権利がありました。
それだけのクオリティの映画を創りました。

なぜ放棄する?

あるいはここまで描いて分からないなら、お前はバカだという挑戦的な映画なのかもしれません。
それはそれでムカつく...

ムカつくのでバカはバカなりに考えました。

あの子とデッカードはこれからどうするか?

恐らくは身を潜めるでしょう。
もっと言えばデッカードは父として名乗る事もしないでしょう。
人類やレプリの未来を考えて行動するような存在ではありません。
徹底して個を大事にするのがデッカードです。

「時に愛する人の為には他人でいた方がいい」

この言葉どおり生きて来たデッカードならそうするでしょう。

Kに偽の記憶を埋め込んだのは誰なのか?

レプリ同盟のリーダーか?
アナステリンなのか?
2択だろうけど

「ここにいる誰もが自分だといいと思う」

組織のリーダーがKに告げた言葉から推測すると
Kだけではなく多くのレプリがカモフラージュに利用されてる。
その考えを持って行動すると自らレプリ同盟の元に辿り着く。
その目的も兼ねてるならばリーダーと考えるのが筋かな。

レイチェルはなぜレプリなのに子供を産めたのか?

これはねぇ、まずレイチェルの腸骨に刻まれてた製造番号
N7FAA52318

からネクサス7型レプリカント女性という事が確定しています。
(ネクサス7型・女・知力A品質・体力A品質・2018年5月23日製造)

6型、8型、9型は大量生産されてるのに、なぜ7型だけはされなかったかに答えがある気がします。
それは造らなかったのではなく造れなかったからではないでしょうか

どういう事かと言うと人工物から造られるレプリカントですが
7型は人間をベースに造ったものと推測します。
事故か何かで死に、無事だった臓器等を利用した死体。

簡単に言うとドラゴンボールの人造人間18号みたいな作りじゃないかと。
なら子供を産めても不思議ではないですし、倫理的に大量生産出来ないしそんな都合の良い死体はなかなか手に入らないんじゃないかと。

もっと言えばそれはタイレルの姪っ子じゃないかと思っています。
(完全に誇大妄想が過ぎますね、すみません)

デッカードは人間なのかレプリなのか?

長年ブレードランナーファンが論争してる問題です。
リドリースコットがインタビューでレプリだと応えてますが、映画の中で明言してもらわなきゃ、それは答えではありません。

でも、まぁレプリでしょうね

じゃあなぜ寿命のある時代のレプリが2049年まで生きてたかというと

デッカードも7型だからでしょう

生殖機能を持つレプリカントを開発して女性だけというのは科学者としてあまりに不自然です。
男と女は対ですから。
アダムとイヴということになるんですかね。
もしこれが正解なら産まれた子供はただの人間の子供ってことになりますね。

なんか寄生獣みたい。

人間とレプリの境界線はどこか?

そんなの分かる訳ねえ!

人間でも人間じゃないような奴もいるし
レプリでもKみたいな奴もいるし
哲学は苦手ですしお寿司

という感じで自分が疑問に感じた部分に自分なりの答えを出してみました。

そうやって思考して楽しむのがこの映画だよとヴィルヌーヴの掌で踊らされてるようです。

違わい!あんたが教えてくれへんからバカが頭こじらせただけじゃい!

という訳でこれは僕が僕の為に出した答えです。
とんだ的外れかも知れませんが、ドヤ顔してませんので勘弁して下さい。

また他の考察記事と被ってたりしたらすみません。
自分が書く予定の映画記事は考えが引っ張られるのが嫌で読んでないんです。

あと、僕が思うに僕の記事は...

いや言い訳は二つで充分ですよ。
分かって下さいよ。

ですね。

で、結局お前は「ブレードランナー2049」は好きなのかよ?嫌いなのかよ?
とよく分からない記事になってしまいました。

まぁ、5回も観て嫌いとは言えません

自立した1本の作品としては大好きです。
でもブレードランナーの続編としては認めきれないこの気持ち
分からないかなぁ~
分かって欲しいなぁ~
でも分かる訳ないよなぁ~
また叩かれるんだろうなぁ...所詮、読んでるのは他人だし...

他人に乾杯(最後にKのセリフで締める僕ドヤ顔)

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追伸、あまりに長文になるので一切書かなかったけど本当に書きたかったのはjoiとラヴについてだったんだよなぁ...
2人から感じる愛の違いとか
機会があればそれオンリーで書きたいです。
その時はまた点数が上がってるかもしれませんが、あらかじめご了承下さい。

ブレードランナー 2049(初回生産限定) [Blu-ray]

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The Art and Soul of Blade Runner 2049

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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・her/世界でひとつの彼女
・トゥモローワールド
・Mute(Netflixオリジナル)