僕の目に映るものは人と違っているのだろうか…
時々不安になります。
青い海、青い空は美しい。
仔犬やラッコは可愛い。
同じだ。
でもホラー映画にある美しさを共感出来る人は少ない…
ベクトルは違えど惹きつけるという意味では同じはずなのに。
それを考えながら今この記事を書いています。
観た人や興味のある人は少ないだろうから、この記事は人気ないだろうなぁと思いながら…
2013年/オランダ、アメリカ、チェコ
監督:リチャード・ラーフォースト
出演:カレルローデン、ジョシュアサッセ、ロバートグウィリム、ほか
上映時間:84分
75点
ざっくりあらすじ
ナチスドイツとソ連が激戦を繰り広げていた第二次世界大戦下、あるドイツ占領区。
7名のソ連偵察部隊は大虐殺の痕跡残る教会に潜入する。
教会の地下は巨大な迷路になっていた。
そして偵察部隊はそこであり得ない者たちを目にする事になる。
今作は偵察部隊が国の命令により撮影し続けたフィルムによる
狂気に満ちた記録である...
Adolfから More Than God
Dress To The Right Hi Grade Monkey Dream
ホラーにはストーリーで恐がらせるホラー(精神的恐怖)と
見せる事で恐がらせるホラー(視覚的恐怖)があります。
今作は圧倒的に後者です。
割合で言えば8:2ぐらいで映像に重きを置いています。
ストーリーはいたってシンプル。
ざっくりの続きを言うと、教会の地下は工場の様になっており、偵察部隊はそこで多種のクリーチャーに襲われ次々と命を失っていきます。
更に先を進むとマッドサイエンティスト(ヴィクター)が支配するラボに辿り着きます。
ヴィクターはフランケンシュタイン博士の末裔であり、彼はここで機械と人間を組み合わせた不死身の兵士を創っていたのです。
ソ連が彼らに命じていた本当の狙いはヴィクターの捕獲とそこで行われている事の記録を撮ることだった...
というものです。
ね?シンプルでしょ?
て、あっさりネタバレぶち込みやがって!
とお怒りを受けそうですが、先ほど申し上げました様に今作は映像を楽しむ映画であって、ストーリーはざっくり楽しめば良いのです。
いや、映像というかナチのマッドサイエンティストが創り出す狂った世界かな?
もうそれは博士が創り出した武器人間を見て貰うのが1番早いでしょう。
ではご紹介します!
皆さん、拍手でお出迎え下さい!
パチパチパチパチ!
今作でも最も人気の高い武器人間"モスキート"さんです。
その名のとおり尖ったくちばし(ドリル)とやたら長い手足が特徴です。
どうですか!この造形美!
僕のイラストではいまいち伝わり難いかもしれませんが、彼は是非その目でご確認頂きたいのでシルエットだけにしてみました。
いやぁ、不死身の兵士を創るというのにこのデザインどうですか?
足払い1発で倒せそうですね。
今作に出て来る武器人間とやらはこんなのばかりです。
見た目のインパクトオンリー!
普通、戦場で活躍させる武器人間を創るとしたら重火器を兵士とくっつけますよね。
マシンガンとか火炎放射器とか。
いやいやいや、それじゃ当たり前すぎて怖くも気持ち悪くもないじゃないですか。
ホラー映画においては
機能美はかえって邪魔になることがある!
これは覚えておいて下さい。
今まであなたが観て来たホラー映画のカリスマ達はどうですか?
武器はチェーンソーや斧や包丁だったりしませんか?
俊敏ではなくノッソリとした奴が多くないですか?
この映画はその鈍重たるが故の恐さの追求作品です。
造形美の追求です!
ま、ぶっちゃけこんな兵器を創る博士、ドイツもソ連もいらんやろ!
とは思いますがね。
こいつに至っては何をどうしたいのかさっぱりわかりません。
顔が2つあるやん!
で、何? という感じです。
こんなのがいっぱい出て来ます。
うまい棒と同じくらい種類がいます。
でもどいつもこいつも戦闘力は1mmも上がってません。
でもそれで良いのです。
羊たちの沈黙シリーズのレクター博士、ムカデ人間のハイター博士、そして今作のヴィクター博士、マッドサイエンティストの思考とは常人の理解の範ちゅう外にいるのですから
狂気の淵で君を待つ天才と神の気まぐれ
黄金の世界を Hah
正直、武器人間やマッドサイエンティストヴィクターが出て来るまでは退屈です。
兵士たちの人柄や上下関係など興味がないですからね。
でもそれを見せることで、後に捕らわれ改造されていく彼らの憐れさが増します。
そしてヴィクターの狂気性がよりリアルに感じられます。
あの偉そうだった兵士が手足をアレされたり
あの1番まともだった上官も捕らわれ頭をカパッと空けられ、
「このソ連兵の右〇とナチス兵の左〇を合体させたらどうなるだろう?」
と実験されます。
なるほど資本主義と共産主義2つの脳をね…
うわ!最悪!悪趣味!
ちょちょちょ、帰らないで、待って下さい!
人の話は最後まで聞きましょうよ。
分かります、分かりますよ。
キチッてますよね。
でも、でもですよ、ここを見せる事で
さっきまで襲って来てた、今も周りをウロチョロしてる武器人間達もこのように改造されたんだという事がわかります。
そしてそれを喜々揚々と行うヴィクターに
こいつはドイツに命令されたから行っているのではなく、自分の世界観の構築の為にやってるんだという事が分かります。
それが恐いですね
そして仲間が捕らわれ改造されるのを坦々とフィルムを回し続ける撮影係
こいつも恐いですね
何をどう見せるのがホラー映画として効果的か?
人が沢山死ねばいい?
血が沢山流れればいい?
そんなの見飽きてますよね?
この映画は冒頭で言った
見せることで恐がらせるホラー(視覚的恐怖)
を考えつくしハイセンスで魅せてる映画なのです。
ただ気持ち悪いものを登場させ恐怖対象として襲わせる、それはそんなに難しいことではありません。
そんな映画山ほどありますし、観てきました。
正直タイトルを聞いても記憶に残っていないやつばかりです。
今作は1度観れば、そのタイトルを聞いただけでキチッたヴィクターや武器人間たちの姿が頭に浮かびます。
それだけインパクトとその無意味さとどこか愛嬌を感じるフォルムに魅力があるからです。
ヴィクターの美意識=監督の美意識が存在するからDETH!
どうでしょう?
悪趣味の極みの中にある造形美...少しは理解いただけたでしょうか。
この機会に一度ご覧になってはいかがでしょうか。
意外にもあなたも知らなかった、あなたの悪趣味な一面が覗けるかもですよ。
あ!それはそうとヴィクターと撮影者はどうなったの?
え~っと、そうですね...それはご自身の目でご確認下さい。
これまた難い演出で締めくくってますから。
追伸、洋画は字幕派というあなたも今作は吹替えでも観て欲しいなぁ。
というのも、今作の吹替えは見事なまでにドラえもんの声優陣が勢ぞろいなのです。
あ!スネ夫!ジャイアン!のび太!とそれぞれ見つけるのもこの映画の楽しみ方のひとつかと。
特に旧スネ夫こと故、肝付兼太さんの声は見事なまでのハマり具合ですよ!
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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ムカデ人間
・Mr.タスク
・フランケンシュタイン