アノ映画日和

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「ヘイトフルエイト」感想 天才タランティーノはいったい何本の傑作を生み出すのか⁉︎

 

お笑い界のBIG3といえばタモリ、たけし、さんま、これは有名ですね。
じゃあ、映画監督のBIG3は?
それは、各々思う人物は違うだろうが、スピルバーグ、ルーカス、キャメロン、
この3人が妥当ではないでしょうか。

そして、その次の世代(お笑い界でいうところのダウンタウン、ウッチャンナンチャン)にあたるポジション、そこに入るのは間違いなくクエンティンタランティーノです。
意外な事に彼はこれまで8作しか作品を創っていない。
しかし多くの人のオールタイムベストに彼の作品が1本か2本は入っている。
そしてまた、誰かのベストに入りそうな映画を彼は創り出した。

 

2015/アメリカ
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カートラッセル、ティムロス、ジェニファージェイソンリー、マイケルマドセン、ほか
上映時間:168分
※R-18

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83点

ざっくりあらすじ 

南北戦争から10年、賞金稼ぎのジョンルースは1万ドルの賞金首ドメルグを連れ雪道のなか駅馬車に揺られていた。
向かう先はレッドロック。
道中、雪道の中、立往生する悪名高き賞金稼ぎマーキスウォーレンとレッドロックの新保安官クリスマニックスそれぞれを拾う。
4人はレッドロックに向かうが、大雪の為山中にポツンとある店に避難する。
その店にはいるはずの店主がおらず、同じく避難している先客の4人がいた。

偶然居合わせた関係性のない8人、実は過去に意外な繋がりがあった。
そしてこの密室の中、殺人が起こる。
曲者たちの嘘が交錯する長い夜が始まった...

 

なが~~~~い夜を 飛び越えてみたい

以前にも話したと思うが僕は長い映画が苦手だ。
映画は2時間以内に収めて欲しい。
この映画168分...完全に膀胱の殺し屋だ。

しかし、サミュエル主演で西部劇で長時間でタランティーノ...嫌でも傑作ジャンゴを思い出す。
なぜもっと早く観なかった?あの後悔を繰り返すわけにはいかない。
いざ鑑賞スタート!

ーそれから168分後...ー

 

結論から言うと、この映画はジャンゴとは全く違う。
全く違うがこれまた傑作映画だった。

しかし長い...特に序盤、何の意味もない景色をずっと見せて始まるオープニング。
雪山にあるキリスト像がずっと映される。
これだけ長く映すからには、きっと裏切りのユダ的な意味があるのだろうと思うが、

結果あのキリスト像はなんやってん?という疑問が残っている。

誰か分かってる人がいたら教えて。

そしてこの映画は密室劇だというのは知っていたが、なかなかその密室に辿り着かない。
途中で人を拾い、馬車の中で会話がダラダラと続けられる。
まるで年末恒例、ガキの使い絶対笑ってはいけない〇〇!のバスみたいだ。
僕は必死に睡魔と闘っていた。

全6章で構成されているこの映画だが、ぶっちゃけ面白くなるのは第4章から。
1~3章はほぼ人物紹介です。
しかしタランティーノ映画と言えば人物と会話。

その人物がどんな人物なのか会話の中で読み取る。
そしてそれを楽しむのがタランティーノ映画です!

そういう意味ではタランティーノビギナーには楽しめない可能性大!
ご注意下さい。

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ろくでなし ろくでなし
なんてひどい アーウィ!云いかた

この映画のメンツ、もうタランティーノファンにはたまらないメンツです。
ほぼタランティーノファミリーだけで構成されています。
僕はこのメンツの集まりを見ただけで仮面ライダー大集合を見た子供のようにはしゃいでしまいます。

まず最初に登場するのはサミュエル。
黒澤に三船、ティムバートンにジョニデ、そしてタランティーノといえばサミュエルです。

彼が演じるのは悪名高き賞金稼ぎマーキス。
今回もあらゆる登場人物からニガー(黒人に対する差別用語)ニガーといじられます。
タランティーノはたぶんニガーいじりがしたくていつもサミュエルをキャスティングしてるのでしょう。

マーキスが乗せてもらう駅馬車にいたのがハングマン〈首吊り人〉の異名を持つ賞金稼ぎジョンルース(カートラッセル)と賞金首のドメルグ(ジェニファー)

そして同じく雪道で立往生していた保安官クリス(ウォルトンゴキンス)

とにかくこの4人の馬車の会話がなっがい!
早く山小屋に行けと思いますが、ここはこらえどころ。
しかもここでの会話が終盤活きてきますので鑑賞時には目薬か眠眠打破をご用意下さい。
会話を聞くとマーキスは南北戦争に参加して人を殺していたのではなく、人を殺すために戦争に参加していたようなクズ。

ジョンルースは賞金首が吊るされて首の骨の折れる音を楽しむようなクズ+DVクズ。

ドメルグは大量殺人を犯すサイコパスクズ。

クリスは小物感たっぷりの卑怯クズ。

クズばっかりやないかい!

そうです!この映画は後に合流するメンバーも含めてクズしか出てきません。
クズ!クズ!クズの罵り合い騙しあいをご堪能下さい。

だってこの映画はヘイトフル(憎むべき)エイト(8人)なんですから。

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なるべくなら なるべくなら 嘘はない方がいい
嘘は言わない そう心に決めて 嘘をつき続けて 俺生きている

猛雪の中、ミニーの紳士服店に辿り着く一行。
そこにいたのは、ミニー他従業員の不在で店を預かるメキシコ人ボブ。
先客のジジイ スミザーズ、スカしたカウボーイ ジョー、絞首刑執行人 オズワルドの4人。
もうティムロスとマイケルマドセンが同じ画面にいるだけで往年のタラファンには堪りません。

さぁ、ようやく8人が集まりました。

ちょっとしたいさかいで1人減りますが、ストーリーに影響はありません。
ただその減るに至るまでの会話劇は最高にクズってて良いです。
しかし今思えばあいつはそんなにクズじゃなかったな...
あ!それでヘイトフル8か...いえ何でもありませんこっちの話しです。

そこに突然密室殺人が始まります!
先ほどのいさかいの間に誰かがコーヒーに毒薬を入れ、ある人物が死にます。
それをある人物が目撃しますが、そいつは黙っています。
偶然居合わせたかの様に思えた8人は、ある目的の為に作為的にそこに集まっていたのです。

タタタタ!タタタ!ターターー!!

あ、これは火サスの音です。

火サスなら片平なぎさの名推理と船越英一郎の崖への追い込みで犯人自供ですが、これはタランティーノ映画です。

あいつもこいつも口から出るのは嘘ばかり!

もう騙すは脅すは撃つはで殺し合いです。

よ!待ってました!バイオレンス!

もうここからは最後まで会話劇で溜まっていたカタルシスの開放タイムです。
タラ流の本領発揮です。
そりゃR‐18指定されるわ...

さて最後に生き残るのは誰か?
最もヘイトフルなのは誰か?
それはご自身の目でご鑑賞下さい。
あ!と驚き、嫌なモヤモヤを残すタラ流が満喫出来るはずです。

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しかし、この映画3時間近くをほぼ会話劇で見せ退屈を感じさせないなんて凄いですね。(序盤眠りかけたくせに...)

もう面白い映画を創れないのはお金がないからだ...という言い訳は通用しません。
だってこれ舞台でも出来るような映画ですよ。

しかもタラはこの映画を好きな人は必ず繰り返し観るはずだと確信を持ってるように、二度目以降じゃないと気づかない演出を沢山置いてくれています。
登場人物の何気ない目線の送り先、会話の伏線、人物描写の深さ...

デビュー作のレザボアドッグスを思わせる創りに、
あのタラが帰ってきた!という思いで胸熱です!

しかし噂によるとタラは10作で監督業を引退するつもりらしいです。
となると、あと2作...今作や過去作に勝るとも劣らない傑作を創って欲しいと願うばかりです。
ま、そんな期待を裏切らないのがクエンティンタランティーノという監督なんですけどね。

 

追伸、この映画を一緒に観た人は13点という激辛採点をしていました。
やはりタラちゃんの映画は観る人を選びますね...
あなたが楽しめる派の1人なら嬉しいなぁ。

最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ジャンゴ 繋がれざる者
・レザボアドッグス
・ユージュアルサスペクツ