日常と非日常。
映画を観るなら絶対、非日常。
映画を観てる時くらい日常を忘れたいものです。
これを上手く裏切ってくれるのがこの作品。
南極基地という"非日常"環境の"日常"を描いています。
さて、南極の日常とは…?
2009/日本
監督:沖田修一
出演:堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、豊原功補、古館寛治、小浜正寛、黒田大輔、ほか
上映時間:125分
80点
ざっくりあらすじ
西村は南極ドーム基地に料理人としてやって来た。
限られた生活の中で料理は特別な意味を持つ。
過酷な環境の中で過ごす隊員達に温もりと笑顔を与える。
それがここで彼に与えられた仕事。
その為に彼は手間暇をかけて料理を創る。
思いを込めた料理を隊員たちがどんな顔をして食べるのか
西村は毎食それを楽しそうに見ている。
しかし、日本には妻と8歳の娘と生まれたばかりの息子が待っている。
14,000km離れた極寒の地で家族を想いながらの1年半の日々は送られる。
冷蔵庫の中で 凍りかけた愛を 温めなおしたーいのに
好きな映画は沢山あります。
でもこの映画の好きは他の映画に向ける好きとは少し違うんですよね。
例えば、僕はフィンチャーやキャメロンの映画が好きなんですが、それは恋人や友人、同僚など他人に向ける好きに似てます。
それぞれ特徴は違えど
あ、僕ってそういう人好きだよな、という自分なりに何となくの傾向が掴めてます。
そして他の人に嫌いって言われても、ふ〜んてな感じ。
一方、今作に向ける好きは、奥さんや両親、兄弟、身内に向ける好きに似ています。
どこが好きと聞かれても何とも答えが難しいというか…当り前に好きなんです。
おかんにどこが好き?て聞かれても
はぁ?アキレス腱固めを決めてやろうか?てなりますよね。
でも他人に嫌いって言われたらかなりムカつく、そんな存在。
だから今回は、あらすじを語るのではなく、家族のエピソードを語る様に紹介します。
まずは南極基地で共同生活をする8人を紹介しましょう。
左上から
・西村君/調理担当(海上保安庁)
・ドクター/医療担当(北海道私立病院)
・モトさん/雪氷学者(極地研究所)
・隊長/気象学者(気象庁)
左下から
・兄やん/雪氷サポート(大学院)
・平さん/大気学者(極地研究所)
・盆さん/通信担当(通信社)
・主任/車両担当(自動車メーカー)
以上8名
ま、こんなむさ苦しいオッサンばかりが南極で1年以上も共に生活するんです。
それだけで絵的に面白くないですか?
つーわけで今日はなにやったっけ
まとめてみよう いすに座って
さてエピソードをいくつか紹介しますが、
南極基地のエピソードといっても、隊員が次々と寒さに負け倒れていくとか、残された二匹の犬を迎えに行くとか、そんな大それたエピソードはありません。
のほほんとしたエピソードが転がってるだけ。
例えば、
盆さんが西村君に言います。
「すごいよ...なんか前の隊が食べるの忘れて置いていったらしいんだけど、デカい伊勢海老があるんだって」
それを聞いたドクターが言います。
「えび...?えびがなんだって?」
「いや伊勢海老があるらしいんだ」
「じゃあ今夜は海老フライだな」
西村君が慌てて返します
「伊勢海老でしょ?フライにしてはデカすぎるって」
そこに隊長
「えび?えびがなんだって?」
「伊勢海老があるんだって」
「ほぉ、じゃあ今夜は海老フライだね」
西村君
「刺身でしょ普通、もったいない」
そこにモトさん
「えびが何だって?」
「でっかい伊勢海老があるんだってよ」
「あっそ、じゃああれだな、海老フライだな」
西村君
「他にあるんじゃないですかね?茹でたり、すり潰したり...」
モトさん
「西村君、俺たち気持ちは完全に海老フライだからね!」
西村君以外
「海老フライ!海老フライ!海老フライ!」
いやいやいや、何で気持ちひとつにしとんねん!
で、出て来たのがこれ、ドン!
「.................やっぱ刺身だったな」
くだらない、くだらないけど、面白い。
このシーン大好き!
くだらないといえば、こんなエピソードもあります。
ある日の深夜ふと目を覚ました西村君
台所に人の気配が...
覗いてみると隊長と盆さんがこっそりラーメンを食べてます。
そしてしばらく経って西村君からご報告
「ラーメンの在庫が尽きました...」
顔を青くする隊長
その日、寝ている西村君のところに隊長が訪ねて来ます。
「西村君...眠れないんだ...」
「そういうのはドクターに言って貰った方が...ねぇ」
「西村君...僕の身体はね、ラーメンで出来てるんだ。ラーメンなしで僕はどうしたら...」
お前が毎夜ラーメン食うからやろ!大人が何言うとんねん!
みんなが西村君にラーメン作れないの?小麦粉と卵はあるでしょ?
かん水がないんです。
う~~~ん......
ね?下らないでしょ?
なにがう~んや!もっと他に悩むことないんかい!
このあと落ち込みの酷い隊長の為にモトさんが起死回生のラーメン製造法を考えます。
それは是非、ご自身で確認して下さい。
あと、もう1つだけ
モトさんの誕生日にデカい肉を焼きたいけど火力が弱くて焼けない。
そこでドクターが肉の塊に棒を刺し油を塗り火を点けます。
その火のついた肉の棒を高くかかげ、ドクターがひと言
「西村君...やばい...なんか楽しい!!!」
ワーーーーー!!!
ドクターが火のついた肉を持って、西村君を追いかけまわします。
ワーーーーー!!!
いい歳こいた大人が...
ほんっとくだらないw
と、まぁこんな感じです。
こんな感じのエピソードがずっと続きます。
ハラハラするストーリーがあるわけでも、人生の教訓になる様なメッセージがある訳でもありません。
でも、なんか、なんか微笑ましくて、鑑賞中ずっとニヤケちゃうんですよね。
心帰る場所はひとつ
いつもの My sweet sweet home
本当はみんな帰りたい。
帰りたいけど、それはみんな同じ。
だから、みんなツライけどせめて毎日が少しでも楽しくなる様にってやってるのが、笑いの中に切なさがあって、なんかいいんですよ。
笑いだけじゃなくて、本当に切ない事も起こっちゃうんだけど、みんながお互いを支えあい慰めあいます。
それさえもシュールな笑いとして撮られてるから、観ている僕らはどこか哀しくてどこか愛らしいこのオッサンたちを大好きになってしまいます。
そしてオッサンたちには日本に帰ったら何がしたいのか各々あるんですが。
それがまた凄くバカバカしい。
でもそのバカバカしいことを本当にやっちゃうんですね。
それを観ながらのエンディングに流れるユニコーンの名曲「サラウンド」
微笑ましすぎてなんか意味の分からない涙が流れそうです。
未見の方がこれを読んで、そんな映画面白いのか?
と思われる様な気がして恐いです。
でも、この映画を観てつまらないという感想をこぼしてる人を見たことがありません。
きっとあなたも鑑賞後にはクダラナイと言いながら、この映画を大好きになってると思いますよ。
なんやかんやで家族が好きなように。
追伸、僕は他人が握ったおにぎりは何か苦手で食べれません。
でも、西村君の握ったおにぎりは美味しそうだったな。
「西村君、この映画を観てるといつもおなかが空いちゃうよ...」
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最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・かもめ食堂
・シェフ 三ツ星フードトラック始めました
・レミーのおいしいレストラン