世の中悪いやつがいる、バカなやつがいる、そう思うだけで通りすぎるニュースたち
しかし当事者や周囲の人たちにはそれだけですまされない感情やドラマがある。
もちろんこれはフィクションである。
しかしこの物語の中にニュースでは語られないその人たちの姿が見えた気がした、
そんな作品
2014/日本
監督:吉田大八
出演:宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、大島優子、田辺誠一、ほか
上映時間:126分
72点
ざっくりあらすじ
仕事は 銀行の契約社員として外回り、家庭では夫を支える平凡な主婦 梅沢梨花
職場では容姿の良さも助け成績も上々、上司からの評価も良い。
その一方家庭では自分に関心の薄い夫との関係に不満を感じる毎日を過ごしていた。
そんなある日、年下の大学生光太と出会う。
惹かれ合う2人は自然と関係をもつようになった。
そして梨花は光太を助けるために顧客の預金に手をつけるようになってしまう
そしてブレーキを失った梨花の金銭感覚は暴走を始める。
だいたい実は男なんてあまったれで情けなくて
この映画を観て印象に残るのは宮沢りえ、小林聡美、大島優子
特別なファンでもないかぎり10人中10人がそう答えるでしょう。
この映画の中で男なんてこの3人の引き立て役でしかない
あまりに可哀想なので最初に少しだけ男たちについて触れてあげる。
まず旦那(田辺誠一)
妻にペアウォッチをプレゼントされた数日後、妻に時計をプレゼントする無神経男
妻に関心があまりなく浮気されても仕方ないですよね。
イケメンで仕事も出来る男なので実はこいつも若い女と浮気してました的な裏設定がありそう
妻の真実を知ったときのこいつの顔はちょっと見てみたかった。
次、浮気相手(池松壮亮)
この役を福士蒼汰やDフジオカが演じてたならそんな美男美女の不倫知るか!であるが、なんかその辺にいそうな猿顔の兄ちゃんだったのが良かった。実際周りにいる女たらしってこんなタイプよね(ファンの人ごめんなさい)
あと上司(近藤芳正)
保身しか頭にない上司
皆にいい顔してるが、皆に嫌われてそう。
大島優子と関係を持ってるがあっさり捨てられる
大島優子との関係を描くシーンがなくて僕が近藤さんなら監督に直談判しただろう
こんな周りにもいそうな人たちが傍にいるのでこのとんでも話にリアリティが生まれてますね
可哀想なので彼らのイラストも載せてあげよう。
ほ〜らね、そっくりなサルが僕を指さしてる
宮沢りえの素晴らしさについては他の人が沢山書いてるのでここでは小林聡美と大島優子について書こうかな。
小林聡美演じる隅より子、主人公と真逆に位置する彼女がより宮沢りえを引き立たせるという感想をよく目にするんだけど...そうかな?僕はこの2人はよく似てると思う。
根が真面目で非社交的でそのくせ他人をほっとけないタイプの人。
この映画のテーマは「救済」だと思ってるのでその観点からするとますますそう思える。
簡単に言えば生き方が不器用な人ですよね。
冒頭、不本意な退職をする同僚の送別会で大島優子が貯金いくらあるんですか?と絡むと、「ちょっと飲みすぎた?」と間に入ります。
周りからはまたお局様が出たよという顔をされます
それでもデリケートな部分を突っ込まれた同僚を何気に助けます。
仕事でも周りに目をやり、小うるさい自分が嫌われないようにすることより、その人とその仕事のことを優先させます。
もっと自分本位に器用に生きればいいのに...
根が真面目だから見て見ぬ振りが出来ないんですよこのタイプは。
最後宮沢りえに言いますよね「最近あなたのことをよく考える、私ならどうしてたか...て」と。
全く自分と違うタイプの人間に対してそんなこと考えないと思うんです。
彼女たちは自分たちは似ていると自覚してるんじゃないかな?どこかで枝分かれしたもう1人の自分だと...僕の考えすぎかな?
一方大島優子演じる相川恵子は人懐っこくて生き方が器用。
梨花と真逆なのはこの人だと思います。
自分がどうふるまえば周りにどう思われるかちゃんとわかってます
上司と関係を持っていてうまく利用して終わらせるときは自分のタイミングであっさり
なかなかここまで器用に生きれる人はいません。
一見梨花との対比の普通人としてキャスティングされてるように映りますが、僕にはこの人こそが特別な人のような気がします。
この人物の存在が梨花やより子の不器用さを際立たせてる
どこかで梨花の行動を理解してしまえるのはこの恵子と梨花どっちが自分に近いか無意識に考えてしまうからじゃないかなぁ
それでも劇中では梨花の行動はありがち...と表現されてますが
違う 違う そうじゃ そうじゃな〜い
さて今回この映画を72点と採点しました。
もっと高得点でもいいんじゃない?そんな声が聞こえてきそうです。
そうですね、本来はもう15点はあげたいところ
ですが僕には減点せざるを得ないどうしても気に入らないとこが2点あります。
①性描写の薄さ
若い男と不倫沼にはまっていく梨花は救済の喜びとして彼と離れられなかった
確かにそれもありますが、やはり若い男性の肉体に溺れたところは絶対あるはずです
そのわりにその描写が薄っぺらすぎる。
昔からあるようなありきたりのベッドシーン
宮沢りえは必要性があるときにはきっちり脱ぐ女優です。
せめて初めての絡みのシーンはもっとインパクトが欲しかった
それをあんな薄っぺらに...残念だ
五社英雄ならもっと官能的に描いてたはずです。
②終わり方はそこじゃない!!!
ラスト追い詰められた梨花とより子が2人きりになります
窓ガラスを割り逃げる前に梨花が言います
「一緒に来ますか?」
より子は残ります
《行くべきところに行く》ことを選んだより子と《行きたいところに行く》ことを選んだ梨花。
枝分かれした2人はやはり交わることはない
そんな思いを感じさせたまま全力で走り逃げる梨花
走る宮沢りえに寄るカメラ..美しい...なんて美しいんだ
ここ!終わるならここでしょ!!!
そのあと逃亡した国で幼きころ募金で救済した少年と偶然再会
何も語らず姿を消す梨花...
いらんいらんいらん救済がテーマとしてもそこはいらん!
原作がどうなってるか知らんけど映画ではいらん
① が-5点、②が-10点
これが15点減点した理由です
ほんともったいない。
ということで、今回は一切あらすじにそわず登場人物とその描写についてだけ好き勝手書かせてもらいました。
観てない人にはさっぱりわからないし、観た人にもそうじゃない!と怒られるかもしれませんね。
でも僕がこの映画について語りたかったのはあらすじではなく人物でそれを僕がどう感じたかだったのでご了承下さい。
一部でも共感してもらえた人がいたなら嬉しいなぁ
最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい映画を紹介して終わります。
・八日目の蝉
・パーマネント野ばら
・告白