近年のピクサーには正直ガッカリさせられる事が多い。
ある程度の面白さはあるが、傑作と呼べるものがない。
2010年のトイストーリー3を最後に凡作を量産。
かろうじて感動、ワクワク出来たのはインサイドヘッドぐらいだろうか。
ピクサー映画=傑作映画
その神話はもはや崩れた。
過剰な期待はしないけれど
さてさて、最新作はどうだろうか...
2017年/アメリカ
監督:リー・アンクリッチ、エイドリアン・モリーナ
声優:アンソニーゴンザレス、ガエルガルシアベルナル、アラナユーバック、ベンジャミンブラット、ほか
日本語吹替え声優:石橋陽彩、藤木直人、松雪泰子、橋本さとし、渡辺直美、ほか
上映時間:109分
84点
ざっくりあらすじ
メキシコ・サンタセシリアに住む大家族リヴェラ家
ミゲルはミュージシャンに憧れる男の子。
しかしリヴェラ家には音楽を聴く事はもちろん触れる事も一切許されない家族の掟があった。
曽祖母ココのお父さん(高祖父)が音楽の為に家族を捨てたからだ。
音楽の夢を捨てられないミゲルは、秘かに自作のギターで腕を磨いていた。
そんなある日、家族を捨てた高祖父が憧れのミュージシャン、デラクルスだと知ったミゲルは音楽コンテストに出ることを決意する。
が、それが家族にばれてギターは壊されてしまう。
仕方なくデラクルスの祭壇に飾られるギターを拝借するのだが、
それをきっかけにミゲルは死者の国に紛れ込んでしまう..
骨まで 骨まで 骨まで愛して欲しいのよ
素晴らしい!
間違いなくピクサーの新たな傑作の誕生です。
鑑賞後
僕の大好きなピクサーが帰って来た!
と嬉しくて笑顔で泣きました。
誰だ?神話が崩れたなんて言ってたの?
神話の復活だ!
という事で何がそんなに素晴らしいのか
手の平返しで説明していきましょう。
・設定がスゴイ!
ピクサー作品はまず設定ありきです。
言葉なきものに言葉を与え、その世界を描く。
それがピクサーアニメです。
今回の舞台はなんと
死者の世界!
事前情報でこれを知った時、正直驚きました。
夢を描くピクサーと最もかけ離れた世界が
死とエロ
その片方をメイン舞台に選らんだのですから、凄い決断です。
果たしてその死者の世界とは天国なのか地獄なのか?
そこはピクサーだから、当然天国だろ?
そんな僕の予想はとんだ見当違いでした(恥)
今作の死後の世界は現世と地続きであり地続きでない
絶妙な世界!
そのビジュアルについてはまた後ほど書きます。
先にその死者の世界のルールについて
ルールその1
死者は死者の日(お盆のハッピー版みたいなもの)に生者の世界に行けるが、それには条件があります
生者の世界で自分の写真が祭壇に飾られている事。
出入国審査場があり、飾られてない死者はそこを通過することが出来ません。
ルールその2
生者が死者の世界に紛れ込んだ場合、夜明けまでに帰らないと死者になってしまいます。
生者が戻るには死者の世界の家族より祝福を受ければ良い。
その場合、死者の家族は生者に祝福と共に条件付けする事が出来る(音楽に関わらないことなど)
この約束を破ると再び死者の世界に呼び戻されます
ルールその3
死者の世界にも死があります。
生者の世界の誰からも忘れられた時、その死者は存在が消えます。
これを最後の死と呼びます。
このルールに苦しめられるのが
主人公ミゲルと
生者の世界に行けないお調子者の死者へクター
この2人が互いの為に協力しあう物語です。
で、その物語なんですが、
・物語がシンプルでスゴイ!
ざっくりあらすじと先ほどの設定だけでどんな話か大体想像がついたんじゃないでしょうか?
その想像、おそらく正解です!
今作のストーリーは基本1本道です。
ただひたすらまっすぐ。
だから正直展開は見えすぎるくらい見えます。
これがああなって そうなって、あの人はこうなるだろうな。
その予想通り物語は進みます。
え?先が見えたら面白くなくない?
いやいやいや、直球でもその球速が凄いですから!
球筋が見えたらバットに当たるってなもんでもありません。
気がついたらキャッチャーのミットに収まってたってやつ、アレです。
大袈裟でも何でもなく気付けば109分経っててエンドロール。
映像、キャラ、音楽の魅力が想像の遥か上にあるので、物語はシンプルな方が良いんです。
ほら、ポテチも沢山種類があるけれど結局はうす塩とかコンソメを買いがちでしょ?
そう今作はただ単純なのではなく
王道なのです
・映像が凄い!
圧巻…このひと言につきます。
死者の世界へ行くのに、まずマリーゴールドの花びらで造られた橋を渡るんですが、
キラキラ光った花びらがまぁ綺麗です。
で、橋でつまづいたミゲルが見上げると、そこには
極彩色に彩られた死者の世界の街並み
ミゲルの目線で映る街の全景にミゲル同様
口ぽっかーん
です。
そしてその後に見せる街の細部が華やかで賑やかで、あまりに素敵なので僕は心配になりました。
死ねばこんな素敵な世界に行けるのか
I want to die!
てな子供が出てきやしないかと...
PG12設定ぐらいは必要じゃないでしょうか
・キャラクターの魅力が凄い!
さぁ、設定と舞台が用意されました
が、肝心のそこで動くキャラに魅力がなければお話しになりません。
ご安心下さい、魅力爆発です!
まず主人公のミゲル。
どこにでもいそうな少年なんですが、物語が進むにつれ魅力がどんどん増していきます。
死者の世界に紛れ込みますが、そのままの姿では目立って仕方がないので死者メイクをします。
そうそう最初のイラストのやつ
赤いパーカーに骸骨メイク
これが、ちょー可愛い!
ショタコンでもない男の僕が萌えるんですから、女性の方には堪らないでしょう。
また内面も凄く優しくてなんて良い子なの?てなるし
秘めた音楽の才能を開花させるとこなんてキラキラがハンパないです。
歴代のピクサー主人公の中でもトップクラスで好きです。
次、ミゲルと行動を共にする死者ヘクター。
THE お調子者
借りたものは返さないし、目的の為なら平気で嘘ばかり並べます。
でもそれは全て生者の世界にいる娘に会いたい一心からの行動。
祭壇に写真が飾られてないから会いに行けないという、悲しい死者です。
しかももう忘れられる寸前で存在すら危ういっていう
お調子者だけど憎めないあんちきしょう
て感じです(たぶん彼が今作で1番人気?)
伝説のロックスター、エルネスト・デラクルス
大スターは死者の世界でも大スター。
死者の日も家族に会いに行かず、ロックコンサートで大忙し。
会いに来たひいひいひいひ孫のミゲルを温かく迎えてくれますが
どうも、きな臭い...本当にこの人ミゲルの高祖父?
ミゲルのご先祖様たち
基本良い人達ばかりだけど、やっぱNo Music!の一族なんです。
ミゲルを生者の世界に帰してあげたいけど
No Music No Lifeのミゲルを許さず
「今後、音楽には触れない事」
を条件付けします。
タワーレコードに喧嘩を売ってます。
そりゃミゲルも
「だったらデラクルスに祝福してもらうよ!」
てなるよ
でも家族思いの良い人ばっかだから憎めないんだよな。
ママ・ココ
ミゲルのひいお婆ちゃん。
原題ではCocoとタイトルに使われるほどのキーマン。
かなりのご高齢で痴呆症も進んでます。
みんな彼女に泣かされるんですよね。
おっとこれ以上は言えない言えない。
他にもミゲルにいつも付いてくる野良犬のダンテや、死者の世界に住む霊獣(アレブリヘ)たちなど魅力溢れるキャラが盛り沢山です。
ここで一応の整理の為に家系図のイラストを置いておきますね。
今日だってあなたを思いながら歌うたいは唄うよ
・音楽が凄い!
今作を観て以降、ちょっとご機嫌な時は
リーメンバミー(リメンバミー)←コーラス
とデラクルスバージョンで鼻歌を歌い
黄昏時には
リ~メ~~ンバミ~~
とバラードバージョンで歌ってしまう程、この映画は歌が耳に残ります。
これまでのピクサー作品でここまで音楽が記憶に残った作品はありません。
認めたくないけど、これはディズニーの力が大きいですね。
アナ雪をはじめとした音楽とアニメのマッチング技術が活かされてます。
正直、近年のピクサーに傑作が生まれないのはディズニーのせいだ!
なんて勝手に決めつけてました。
横からああせい、こうせい、と口うるさく指示するから面白い物もツマラナクなってるんだと。
音楽の素晴らしさもそうだけど
死者の世界の全景を主人公目線と鑑賞者目線をシンクロさせたりするのも、ズートピアで使った手法。
これはピクサーとディズニーが上手く融合してる証拠です。
今までごめんね、ディズニー。
で、僕は今作を字幕バージョンで観たんだけど、これ吹替えバージョンはどうなのよ?
と気になり、YouTubeで聴いてみました。
吹替えバージョンも良い!
主題歌なんてシシドカフカfeat.スカパラの方が良いくらい。
俄然、吹替えバージョンも観たくなりました。
でも、「ウン・ポコ・ロコ」と「哀しきジョローナ」は圧倒的にオリジナルが良いです。
あのメキシカン特有の巻き舌が堪らないんですよ。
是非サントラで聴き比べて下さい。
・メッセージが押し付けがましくなくてスゴイ!
この映画のテーマ(メッセージ)は
・家族愛を大事に
・夢を持とう
て事なんだけど、その伝え方が上手いから全然押し付けがましくなくスッと心に届きます。
で、この二つのメッセージが二者択一じゃない所が良い。
どっちかをとれば、どっちかを諦めなければならないって事じゃないんですよね。
それをやってきたのは家族やご先祖さま達で
ミゲルはどっちも大事で選べないってずっと言ってる。
大抵の映画は夢を追う者は何かを犠牲にして
ドリームファースト
やっぱ愛だよ愛って映画は自分の夢を追わず
ファミリーファースト
そのメッセージって反対を否定してるみたいで
ちょっと押し付けがましい。
大事なものは1つじゃなくて良いんだよ
てこの映画は言ってる気がして、僕はそこが凄く好きなんです。
ということで、久々のピクサーの傑作作品に感動して
ここがスゴイんじゃね?
の個人的な感想を羅列させて頂きました。
未見の方が
へ~そんなに面白いんだ、観てみようかな
と興味を持ってくれれば幸いです。
こんなワクワクして感動出来るアニメ映画はなかなか無いので、是非ご自身の目でご鑑賞下さい。
と、一応ここで締めた感じにしますが、僕のここがスゴイの大事な「泣きポイントがスゴイ!」がまだ書けてないので、記事は続きます。
つきましてはネタバレ不可避となりますので、未見者は読まずに鑑賞後また来て下さい。
忘れないでね。
リメンバー・ミー
やさしさに包まれたなら きっと
目にうつる 全てのことはメッセージ
鑑賞済みの方、
あらためましてこんにちわorこんばんわ
泣いた?ねぇ泣いた?
泣くよね~
どこ?どこで泣いた?
そりゃ、あそこでしょ
ミゲルがリメンバーミー歌ってママココがハモったとこ
あれは卑怯、ボケた婆ちゃんがちゃんとヘクターとの想い出の歌を覚えてて歌うって
あんなん絶対泣くやん。
で、続けざまに1年後が描かれて、街の皆がデラクルスが凄いんじゃなくて、ヘクターこそが我が村のスターなんだってなってたとこ。
あそこもキタ
何で街の人たちに真実が伝わったのかイマイチよく分からないけど、とにかく良かった。
で、死者の世界ではココとヘクターが抱き合って、リヴェラ家ご先祖様一同で手を繋いであの橋渡るとこ。
そこに重なるミゲルの歌、そして現リヴェラファミリーとご先祖様そろって大団円。
ミゲル満面の笑顔。
はい、泣く。
それだけ?
いやいや分かってますよ、最後の最後のやつでしょ?
エンドロールあと、ピクサーお馴染みの最後ショートフィルムで終わると思いきや
To the people across time who supported and inspired us.
(時を超えて私たちを支え力を与えてくれる人たちに捧げる)
画面一杯の写真
どれが誰の写真かは分かりませんでしたけど、ピクサー及びディズニーの関係者(故人)ですよね。
忘れちゃいけない人がいる 忘れない事で彼らたちは生き続ける
っていう解釈で当ってる?
ピクサー史上最も感動的なエンディングじゃないかな。
この映画の発想 はじまりは全てここからなんだって理解したら
なぜこの映画がこんなに優しさに包まれてるのか分かった気がします。
そんな大絶賛な今作な訳ですが、不満はないか?と言われれば
アリます!
それは、
ママココ ファザコン過ぎじゃね?
いや、ヘクターを忘れないでいてくれて有難うなんだけど
完全に忘れられた旦那フリオの立場!
最後も手を繋いで貰えてなかったし
家族愛も大事だけど、夫婦愛も大事にね!
ま、そんな些細な不満もありますが、今作が傑作なのは間違いないし
失いかけてたピクサーへの信用もV字復活しました。
これから先、どれだけ凡作、駄作が続こうとも生涯ピクサーを追いかける事をここに勝手に誓わせて頂き終わります。
長文お付き合い頂き有難うございました。
追伸、過去記事でピクサー全作を5段階評価してみたって記事があります。
今作はピクサーの中で何位でどう格付けされてるか。
追記しましたので、是非こちらも読んで行って下さい
最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・リトル・ダンサー
・リトル・ミス・サンシャイン
・ヒックとドラゴン