映画を沢山観てるとメリットもあるけどデメリットもありますよね?
1番やっかいなのが先読みスキルを身に着けてしまう事。
SFもホラーもラブストーリーもありとあらゆるパターンが出尽くされてますからね。
特にサスペンスなんてどの映画にも被らないってもう不可能じゃないかなぁ。
物語がAパターンに進もうがBパターンに進もうがいくら枝分かれしても、あ、そっちねって感じで観てしまいます。
はい来ました自分が犯人だったパターン!
出たー!多重人格オチー!!
てな具合に...
ところがこのセオリーを独自の展開で崩してくるのが韓国映画です。
多少強引な技を使ってでも物語を予想もしないところに持って行きます。
今回ご紹介するテロライブ、韓国映画入門編として丁~度いい映画でして...
2013/韓国
監督:キム・ビョンウ
出演:ハ・ジョンウ、イ・ギョン、ほか
上映時間:98分
84点
ざっくりあらすじ
ラジオパーソナリティのユンヨンファ(ハ・ジョンウ)、かつては国民的アナウンサーだった男。
ある不祥事でラジオ局に飛ばされ、私生活では妻と離婚…ツキがないとボヤく毎日。
しかし変化の日は突然やって来る。
それはリスナーの声を聞くいつものコーナーにかかってきた1本の電話が始まりだった。
日常の愚痴を吐き続ける電話の主は次第にエキサイトしていき、ついにはマポ大橋を爆破すると脅迫してきた。当然ユンはイタズラと思い適当にあしらっていた。
しかし次の瞬間、橋は本当に爆破された。
思わぬテロ犯との繋がりをアナウンサー復帰のチャンスともくろむユンであったが...
どうして...君を好きになってしまったんだろう?
僕が感じる韓国映画特有の魅力がいくつかありまして
①湿度
これがなんともジメッとしてるというか、どこかカビ臭いというか、とにかく映画全体から流れてくる雰囲気の湿度が高いんですよ。このウエット感は好みによると思いますが、サスペンスやホラーに程よい不快感を与えてくれて好きですね。
②後味の悪さ
いつも韓国映画を観た後って鉛玉を喰わされたようなズシンとした重みを胃のあたりに感じるんですよ。何でそんな事になる?ってくらい救いのないラストをむかえる事が多いですね。韓国映画を観るときは太田胃散を用意しておいた方がいいです。
③国単位で臭う腐敗臭
実際はそこまでひどくないやろ?て思うんですがね、なにやら国家が警察が組織が腐ってるという描き方が多いんですよ。で、それに立ち向かうというよりは翻弄されるというね、悲壮感が売りみたいなとこがありますね。
なんかネガティブ要素ばかり書いてますが、これがもうハマるとたまんないですよ。
韓国映画沼って言いますか引きずり込まれる感じ。
ハマってる時は韓国映画以外しばらく観たくなくなる、というあるあるがあるくらいです。
僕なんかはその沼へ半身浴感覚でポッチャリと定期的に浸かりに行ってます。
ただ見慣れてない方がいきなりキツイ作品を選ぶと溺れてもう観たくないという事もあり得ますんで注意が必要です。
そこでこのテロ,ライブです。①~③の要素が薄すぎず濃すぎずのいい感じになっております。個人的には韓国映画の玄関と呼びたい映画ですね。
ここから先、多少あらすじにふれ一部ネタバレ的なとこも出てきますので未見の方はとりあえずTSUTAYAでレンタルしてきて下さい。
素直にI'm Sorry いつも意地を張ってしまうけど I'm Sorry
主人公のユンは犯人にはテレビの生中継で訴えろと言い、テレビ局の上司には放送したければ俺をアナウンサーに復帰させろと交渉し双方を操りテレビライブにこじつけます。
なかなか狡猾な男で決して正義感の強いタイプの人間ではないですね。
犯人はかつて橋の建設に携わっていたんですが、国の無理でズサンな突貫工事指示により亡くなった人もいるのに国はそれに対して正当な扱いをしてくれなかった事に怒りを感じています。
要求は大統領の謝罪です。
行動自体はテロという悪質極まりない犯罪ですが、動機や要求は理解出来ないものではなくて心情的には同情を誘います。
なんか完全懲悪ではなくて、
正義はどちらにあるのか?
そもそも正義なんてあるのか?
てとこが実に韓国映画らしいです。
テロが題材でもハリウッド映画のようにブルースウィリスが出てきてイピカイェー!で犯人殺して終わりというワケにはいきません。
で、肝心の大統領が一向に来ないんですよ。
代理に警察庁長官が来たりするんですが、こいつも謝らない。
それどころか
「さっさと投降しろ!お前みたいな者はすぐ見つけられる!国家はお前みたいなテロリストの要求は一切聞くつもりはない!」
と犯人を焚付ける始末。交渉術のかけらもありません。
これには犯人も怒って長官のイヤホンに仕込んでいた爆弾を起動させて長官の頭が
パーン!!!
正直、観てる側としてはこのクソ長官ムカつくなと思っていたのでスカっとしました。
ひと言謝ることがそんなに難しいことか!
と犯人側に立ちたくなります。
と思いきや橋に取り残された親子の車が海にドボンとしたり、
ユンの元奥さんがアナウンサーとして現場にいて犯人に訴えかけても犯人は尻込みしたりで、犯人も犯人でどないやねん!と、どこに感情を置いて観たらいいのやら...
ただただ物語の行く末を見守るしかないという。
先読みスキルが発揮出来ない理由がこのへんにありますね。
結構ドロドロしてるのにどこが入門編やねん?と言われそうですが、この映画、映像的にもストーリー的にも実にエンターテイメントしてるのです。
最後まで観て冷静に考えると犯行に無理があったり、登場人物の行動が矛盾してたりで突っ込みどころ満載なんですが観てる最中はグイグイ引き込まれて突っ込み入れるどころではないです。
普通アラが見えすぎると説得力がないと感じてシラケてしまうのですが、この映画は良い意味でハッタリが効いていてシラケさせる事がありません。
ん?と思う頃にインパクトのある映像や物悲しいエピソードが放り込まれて、気が付いたらさっきの、ん?を忘れてるみたいな。
深夜の通販番組を胡散臭いなって観てたのに気が付いたらキュウリがスパスパ切れる包丁を買ってたみたいな感じですかね。
この後も物語は悲惨な方向、悲惨な方向へと突き進み、その悲惨さは予想を超えた地点まで運ばれます。
映像的にも映ってはいけない決定的瞬間を目の当たりにするような感覚に陥ります。
その見せ方(魅せ方)はハリウッドにも邦画にもない韓国映画独特な迫力と上手さです。
あんまり韓国映画って興味ないんだよな....て方、放置するにはあまりにももったいない傑作が沢山ありますよ。
新大陸を開拓する気持ちで1度韓国映画コーナーを物色してみてはいかがでしょうか。
その際、手始めにこの映画を選んでくれたなら嬉しいなぁ...
追伸、この映画は主人公に古館伊知郎を重ねて観るとさらに面白く鑑賞できます。
最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい映画を紹介して終わります。
・シュリ
・チェイサー
・新しき世界