アノ映画日和

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「残穢-住んではいけない部屋」感想 絶え間なく続く穢れの連鎖

 

夏の楽しみのひとつにTVで放送される心霊番組があります。
これは嘘臭いなとかこれはガチじゃね?とか言いながら観るのが大好きです。
そしてしっかり怖くなってお風呂は翌日にしたりします。

心霊って海外のそれとは違う日本独特の文化ですよね。
フジヤマ、ニンジャ、スキヤキ…心霊?
ということで今回はいわゆるJホラーというやつです。

2016/日本
監督:中村義洋
出演:竹内結子、橋本愛、佐々木蔵之介、ほか
上映時間:107分f:id:hagane-mk:20160721091840j:image

75点

 ざっくりあらすじ

「私」は、読者から寄せられる恐怖体験の手紙を元に執筆する怪談小説家だ。
私は久保さん(仮)という読者より手紙を頂いた。
和室から、なにやら畳をほうきで掃いたような音が聞こえるとの内容だった。
それから久保さんとのやり取りは続いた。
和室のふすまの隙に上からぶらりと垂れ下がる女性の着物の帯の様なものがチラリと見えました。
帯って長いですよね?
私は久保さんが何を言いたいのかがわかった。
そして興味を持ってしまったのだ…

 

どろろん おどろん べろべろばあ
どろろん おどろん べろべろばあ

最初に言っておきますがこの映画、映像的には怖くありません。
それゆえに鑑賞後はそんなに怖くなかったとの感想を持つ方も多いと思います。
僕も実際そう感じました。
しかし、その恐怖は心に根付いていました。
この映画の恐怖は静かで暗く深い(不快)物語にあります。

だからネタバレなしでは何を書いてよいのやらです。
未見の方は読まない方がいいです。
鑑賞済みの方か、怖くて観れないから先に内容を…という方のみお読み下さい。

 

早速ざっくりあらすじの続きから書いてきます

 

久保さんの手紙内容は「私」の遠い記憶にひっかかります。
それは2年前に届いた手紙で子供が首つりした霊を見たというものでした。
住所を見てみると久保さんと同じ岡谷マンション。
しかし久保さんは202号室、その人は405号室、隣でもなければ上下でもない。
その関係性に疑問を感じます。

久保さんは独自で調査を始めます。
岡谷マンションの人達に聞くと202、405、共にコロコロ住人が変わる。
しかし自殺や事故はないとの事。
不動産屋に聞くもマンションが建ってから1件も自殺、事故はない。

日を同じくして隣の201号室に飯田さん家族が越して来た。
相場より安い家賃に飯田家族も不安に思っていたらしい。

久保さんは202号室の前の住人を訪ねる事にします。
梶川さんという男性でしたが、1年前に引っ越した先のマンションで自殺をしていました。
大家さんによると梶川さんは赤子の声を気にしていたらしい。

久保さんはきっと梶川さんの霊が前の住居である自分の部屋に帰って来ちゃったんだなと思うことにしたが、霊は梶川さんの死より前から出ている事から時期がずれる。

帰宅時に久保さんは隣の飯田家の奥さんより相談を受けます。
奇妙なイタズラ電話に悩まされてると。

「今、お独りですか?今、何時ですか?消火器はありますか?」

という内容のイタズラ電話らしい。
その顔つきはただのイタズラ電話に悩まされているそれとは違いました。

このマンションには何かある...部屋ではなくマンションが建つ前の土地に何かあるのでは?

そして「私」は久保さんと合流し本格的にこの土地を巡る壮大な過去を旅する事になりました。

どうですか?ホラーというよりミステリー要素の強い物語に引込まれますね。

ここからマンション建設前の土地の歴史の聞き取り調査が始まります。
刑事の足で稼いだ情報というやつみたいです。

そして辿れば辿るほど出てくる出てくる過去の事件や自殺。
小井戸さんておじいちゃんは隙間を恐れて家をゴミ屋敷にして孤独死しちゃってるし、川原さんちの息子はボヤ騒ぎを起こしてその後イタズラ電話魔になるし。
んん?イタ電、隣の飯田家に繋がってるな...

その前は高野家の奥さんが娘の結婚式の夜に帯で首つり自殺...
あ!これだ!この奥さんが久保さんちに出てきた幽霊じゃん。

なんかこの奥さんの娘さんが1度子供を妊娠したけど中絶させたかで、赤子が床から湧いて出るとノイローゼ気味になっててそれで自殺したらしいんですよね。
あ!この赤子が梶川さんの...

わりかし早めに辿り着きました。
久保さんは部屋を引っ越しましたとさ、めでたしめでたし...とはいきません。

「私」は原稿をまとめ編集と打ち合わせている時、高野さんは「赤子が湧いて出る」って言ってたらしいんだけど「湧いて出る」って1人じゃないイメージが…
妙に気にしだします。

この「私」心霊小説など書いてるくせに心霊否定論者なんですね。
ところがこの疑いようのない繋がりに真実を突き止めたくなります。

「複数ですね」
偶然打ち合わせ場所に同席していた同業者の平岡が首を突っ込みます。

過去への旅はまだまだ続きます。

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果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう

癒えることない痛みなら いっそ引き連れて 

調査団に加わった平岡氏の調べにより更なる過去がわかります。
高野家の前は長屋だったんですが、そこに住んでいた中村美佐緒という女が赤子を産んでは殺しを繰り返し埋めていたとの事。

1人じゃないという推測は当たっていた様です。
美佐緒は床下からの「焼け...」「殺せ...」と言う声に命じられていたと供述しています。
これはさらに過去があるな...

 

調査団はそこから更に過去へ遡ります。
どんどん繋がる穢れの連鎖。
ぷよぷよなら高得点間違いなしです。

繋がりは土地を超え、九州の奥山家へと繋がります。
九州では奥山伝説として語り継がれているほんこわ話になっていました。

それは聞いても祟られる、話しても祟られる

奥山家は炭鉱の当主であり、ある日その炭鉱で火災事故が起きました。
炭坑内での鎮火は困難を極め、最終手段として出入り口を塞ぎ酸素の供給をたつことで鎮火させました。
それにより100名以上の死者が...それからその犠牲者の霊が出るようになったとの事。

現在にまで続く祟りの元凶はここにあった様です。

そして調査団は最終地点を現在の奥山家跡地に踏み込むことで終わりを告げます。
これ以上調べてもどこまで続くかわからない...

いやいやいや、もっと前にやめるタイミングあったやろ!

調査を終了した後、岡谷マンション201号室の飯田家族がテレビのニュースに映ります。
父親が妻と息子を殺し自身は自殺、いわゆる一家心中です。

あのにこやかだった家族が...個人的にはここが2番目に恐かったですね。

それから「私」のナレーションベースで物語は終焉に向います。
久保さんからの手紙を読み上げる声に、手紙内容の登場人物たちが映ります。
これまでの調査にかかわった人達は、それ以降特に何も起こらず平和に過ごせているとの事。
僕が1番恐かったのはここの映像です。
読み上げる「私」、手紙主の久保さんともに話では特に何もないと聞いておりナレーションはそう告げていますが、映像には赤子の霊が映り、子供たちが天井で揺れる何かを見ています...穢れにふれた者は自身も穢れになる運命にあることを告げています。

そしてそれは当然、「私」にも...
深夜「私」の自宅の電話がなります。
受話器を取ると

「今、お独りですか?今、何時ですか...?」

「私」もまた穢れに...

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ここで終わってれば最高なんですがね、このあと余計な恐怖映像がいくつか続きます。
ここまで想像させる恐さに徹してきたのになぁ...なんで中途半端にあんな映像入れるかなぁ...最後にインパクトある映像が欲しかったのかな?
どうせなら100人の炭鉱マンがいっぺんに出てきて建物が崩れて、岩崎宏美が聖母たちのララバイを歌えば良かったのに。
(8時だよ!全員集合世代じゃない人、ワケのわからん事言ってすみません)

まあラストに関しては大きな減点を免れませんが、全体的には後味に悪いものを残す上質のJホラーでした。

さて文字数の関係で端折ったところや穢れの繋がりを伝えきれませんでした。
そこで穢れ図をつくりましたのでご覧下さい。

まずは調査の始まりである岡谷マンションから

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次に岡谷マンションが建つ前の土地の穢れ図です。

下に行くほど時系列は過去に遡っています。

 

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いかがでしょう?少しは穢れの繋がりを分かってもらえたでしょうか?
穢れの繋がりは一本道ではなくひとつ飛ばしふたつ飛ばししたりと木の根のように複雑に絡み、時を重ねるごとに穢れは穢れを生みだしていますね。
鑑賞者の方が見落としてた穢れの繋がりを発見したり、再確認して貰えたなら嬉しいなぁ。

 

追伸、僕の家は玄関が人感センサー照明になっていますが
人がいない時に点くと、残穢...と呟き
靴ひもをまだ結んでるのに消えると
残穢!!!と怒鳴るようになりました。

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 最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・鬼談百景
・リング
・女優霊