テンポはより早く、死者はより多く、殺り方はより残酷に。
ホラーインフレ...
僕はその手の映画は嫌いではない。
むしろ好きです。
しかしどれも同じ装備で同じルートで同じ山を登ってる感じがします。
そのホラーインフレを否定するかの様に現れたこの作品。
ゆっくりゆっくりと近づく恐怖を描いています。
それでいて最後までだれる事なく続く緊張感。
今ホラー映画好きが最も観るべき作品、僕はこの映画を強く推します。
2014/アメリカ
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:マイカーモンロー、キーアギルクリスト、ダニエルソヴァット、ほか
上映時間:100分
78点
ざっくりあらすじ
少女ジェイは男と一夜を共にするが、突然その男に薬で眠らされ気づけば車椅子に縛り付けられていた。
男は告げる、さっき俺はお前と寝てそれをうつした。
それに殺される前にお前も誰かと寝てうつせ。
それはうつされたものにしか見えない
それはゆっくり歩いて近づいてくる。
それはうつした相手を殺せば、また自分に戻ってくる。
俺は殺されたくない、お前が死ねばまた俺に来る。
だから、死ぬな...それからジェイのそれを恐れる日々がはじまる...
追いかけて、追いかけて、追いかけて~雪~国~
映画の構成においてツカミはオチと同じくらい重要だと思っています。
しかしオチはどの映画も趣向を凝らすのに、ツカミはおざなりという映画が多い。
この映画のツカミ、100点です。
物語は夜1人の女性が逃げるところから始まります。
逃げる女性は浜辺に辿りつきます。
そして場面は翌朝になり浜辺に転がる女性の死体が映ります。
メキャメキャー!!!
荒木飛呂彦ならそう擬音を付けそうな折られた死体は、それに捕まったらこんな事になるんだ...ぞぞぞ~とさせるに十分な絵力があります。
あらすじの続きを話しましょう。
「それ」はノロマだが頭がいい。
「それ」は姿を変える、人混みの誰かだったり、知り合いの誰かだったり、時にはキミの愛する者の姿で現れることもあるだろう...しかし実態は1人だ。
こんな説明にジェイは、は?となります。
でもそれを証明する為に男は車椅子にジェイを縛り付けたのです。
やがて「それ」は現れます。
半裸の人ならざる形相をした女性の姿でした。
ギリギリまで近づかせたのちに、男は車椅子を押して逃げます。
ただ説明するだけではすぐに殺されてまた自分に戻って来ます。
それを考えるとベストな方法で男はジェイに感染させました。
要はババ抜きと鬼ごっこをミックスさせた様なルールなんだなと僕が考えてると男はジェイを開放しました。
最初の「それ」は老婆の姿で大学のキャンパスに現れました。
大学に老婆って違和感しかないやん!全然アホやん!と思いましたが、その違和感が何とも怖い感じを演出していてグッドです。
ルールどおり他の人には見えないご様子で、ノロノロです。
まぁ、余裕で逃げ切り1面クリアです。
いつでも探しているよ どっかに君の姿を
向かいのホーム 路地裏の窓 こんなとこにいるはずもないのに
ビビり倒したジェイは幼馴染の男の子の家に友達と泊めてもらう事にします。
ジェイは可愛いしうつすのは簡単やん。
Hしたい男なんて山程いるぞ。
ブスは大変だな...いやブスはそれ以前にうつされへんか...などと僕が考えていると窓を割って「それ」が入って来ました。
今度は半乳を出した女の姿です。
友達と部屋に逃げ込み鍵を閉めて隠れてると
ドアをノックされます。
開けちゃダメ開けちゃダメと思いますが、友人の声で呼びかけられたので開けてしまいます。
開けたら「それ」でした!のパターンかと思いきや普通に友人でした...と思いきや
後ろになんかデカいの着いて来てるー!!!
「それ」の変装パターンは何種類かあるのですが、個人的にはこのデカいのが1番恐かったです。(ちなみに1番おもしろかったのは屋根上に全裸で立っているおっさんの「それ」でした。)
何はともあれ、ここもなんとか逃げ切り2面クリアです。
このあとも何度か「それ」は手を変え姿を変え現れます。
時には銃で撃ったりして対抗します。
当って血が出るので見えないけれど実態はある様です。
しかしそれでも追いかけて来る「それ」にキリがないので、事情を知りながらも恐れない男友達グレッグと寝て「それ」をうつします。
で、グレッグがどうなったかと言うと...言うまでもないですね。
はい、またジェイを追いかけてくる様になります。
おおグレッグよ、死んでしまうとは なにごとだ
ちなみにグレッグが捕まるシーンはなかなかいい感じの恐怖をお届けしてくれます。
さて再びターゲットとなったジェイ。
友達のアイデアでプールに行きます。
水の中でジェイ待機→「それ」が来たら、水の中までひきつける→ジェイ、プールから上がる→プールサイドに置いている通電させた家電を水に放り込む→「それ」感電死→バンザイという作戦です。
このアホな作戦は「それ」プールに入らない→「それ」家電を往年のロックスターのようにジェイに投げつける→ジェイ恐いという逆ピンチになり大失敗。
もうそっからは銃で撃つなどいきあたりばったり攻防戦です。
このプールの攻防戦がこの映画の1番の盛り上がりシーンになっていて、確かに面白いのですが、僕はこのシーンが不満です。
なんかここまで独自の見せ方、独自のスピードでやってきたのに、急に既製品を放りこまれた様な感じがしたのは僕だけですかね...?
でもこのクライマックスの後エンディングへと向かうのですが、その終わり方はかなり僕好みでした。
羊たちの沈黙のエンディングの様な、先を想像させて恐がらせるモヤモヤした感じで非常にセンスの良さを感じさせます。
さて結局「それ」とは何だったんでしょう?
幽霊?宇宙人?都市伝説的な何か?それとも無責任なセックスを謳歌しすぎる若者への警笛の象徴?
ついつい分からないモノを何かって考察してしまいがちですが、それはこの映画の面白さを半減させると思います。
これは分からない何かを恐がり楽しむ映画です。
IT(それ)FOLLWSとタイトルにあるように、ITとしか表現出来ない何かが追いかけて来るのを楽しむべきだと思います。
IT IS~はいらないんです。
恐怖対象、スピード、展開、構成、枠にハマらないこの映画の斬新な恐怖はこの夏を少し涼しくしてくれるはずです。
是非この映画を観てこの夏は
震えて眠れ!
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最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ヴィジット
・残穢
・リング