アノ映画日和

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「君の膵臓をたべたい」感想 100回観れば100回泣けます

 

この映画の記事を書くつもりは1ミリもなかった

僕は見え透いた泣かせ映画が大嫌い。

「君の膵臓をたべたい」

なんて見え透いたタイトルなんだ

そんな涙の押し付けのような映画で僕は絶対泣かない。
日本中が涙に包まれても、全米が泣いても僕は泣かない。

でも今僕はこの記事を書いている。
つまり、そういうことです...

2017年/日本
監督:月川翔
出演:浜辺美波、北村匠海、小栗旬、北川景子、上地雄輔、ほか
上映時間:115分

f:id:hagane-mk:20180118213204j:image88点

ざっくりあらすじ

【僕】(小栗旬)はある女性の言葉で母校の教師となった。
その女性との想い出の場所、図書室が取り壊しとなるという。
そこで蔵書の整理の為【僕】はかりだされた。
【僕】はその想い出の場所で教え子と話すうちに彼女と過ごした日々を思い出す。
12年前、膵臓の病で余命宣告された彼女(浜辺美波)と【僕】(北村匠海)との特別なあの日々を


さぁ踊ろう世界が終わるまで
その未来を僕の手に委ねたなら
Wow Dance Dance Dance

原作を読んで映画はまだ未鑑賞の方はざっくりあらすじを読んで、

え?教師になったとか12年前って何?

となったでしょう。
今作は原作をベースとしながら映画仕様に改変されています。
原作には描かれていない12年後(現在)から始まり
過去をベースに現在が挟みこまれる形で物語は進められます。

はぁ?何それ、観る気なくした...

原作至上主義の方はそう思ったことでしょう。
でも少しお待ちください。
この改変は物語の本質を変えるものではありません。
物語に膨らみと深みをもたらすものです。
「読む」ということと「観る」ということの違いをよく考えた上での改変です。

小説を観る

そう表現するに相応しい原作実写化と言えるでしょう。 

そう言う僕は実は映画先行、原作後追いでしたので
はぁ、そういう話か…と何の違和感なく物語を観てたのですが
偉そうに言ってた割にそんな感じですみません。

では、あらすじを追いながら感想を書いていきましょう。


「君の膵臓をたべたい」

唐突に彼女 桜良は本の整理をする【僕】に言います。

うわ!いきなり言った!

てっきり切り札的セリフかと思っていたのに回想スタートしてすぐ言った。

桜良は続けて言う

昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部位を食べたんだって
そうしたら病気が治ると信じてたらしいよ
だから私は君の膵臓を食べたい

ふむ、それでこういうタイトルなのか...奇抜なタイトルの割に安易な付け方だな。

さて紹介は遅れましたがこの2人とその関係性を簡単に説明しましょう。

【僕】
この物語の主人公
友達を作らず、読書を唯一の趣味とする高校生
いわゆる「地味なクラスメイト」
そういうポジションの少年
※尚この記事を読むにあたり、彼を表すのは【僕】書き手である僕は僕
【 】の有る無しで読み分けて下さい。

【山内桜良】
【僕】のクラスメイト
明るく清く元気よく、彼女の周りには自然と人が集まる。
いわゆる「クラスの人気者」
そういうポジションの少女

【二人の関係性】
【僕】が病院で1冊の文庫本を拾う
本のタイトルは手書きで【共病文庫】と書かれていた
膵臓の病気で余命宣告された女性の闘病日記だった。
そこに落とし主が現れる。
それが山内桜良。

僕と彼女の関係は会話したこともない同級生だったが、これにより
【唯一彼女の病気を知るクラスメイト】
となる。

この2人のおかしなところは、普通クラスメイトが重病なんだと知れば動揺して接し方が変わりそうなものを【僕】は他人に興味がないので通常通りであること。
また桜良の方も悲壮感の欠片もなく、通常通りの生活を過ごしている。
闘病映画のはずが、あまりに2人が通常運転なため学園青春映画を観てるような錯覚におちいりそうです。

では物語の続きに行きましょう

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燃えるよな恋じゃなく ときめきでもない
でもいつまでも君だけの特別でいたい

病気を知っても気づかう事なく普通に接する【僕】に居心地の良さを感じたのか桜良は【僕】に付きまとう様になる。
【僕】は病気の本人が悲しい顔を見せないのに、他の人が泣いたりするのはお門違いだと思うから、それだけなのに。

彼女は【僕】の助手となり、本の整理を手伝うようになった。
しかし いかんせん適当な彼女は本の整理も適当
それを指摘すると

ちょっとぐらい間違えててもいいじゃない、頑張って探して見つけた方が嬉しいよ、宝探しみたいで

病気のはずの彼女の方が健康な【僕】よりよっぽど強い

もっと有意義な時間の使い方をした方が良いんじゃない?

少し意地悪な言い方をする【僕】に彼女は言う

では君に残り少ない私の人生の手助けをさせてあげます

こうして2人はスイパラに行ったりデート?の様なものをする関係へと発展します。

ここまでの僕の感想を言いましょうか?

何をイチャコラしとんじゃい!

ハッピーからの病死の落差で泣かせようとしてるなら、僕の涙腺の硬さを甘く見て貰っちゃあ困るってなもんです。

さて、学校では2人の噂でもちきり。
地味な【僕】がクラスの人気者とどういう関係?
特に桜良の親友 恭子は殺意を感じさせるほど睨み威嚇します。

女性にとって親友は恋人同然

ということらしいです。

親友に病気のことは言わないの?僕なんかと一緒にいるより大事な人と過ごす方が価値があると思うけど

彼女を遠ざけるように言う【僕】に

病気のことを言ったら 彼女会う度に泣いちゃう、そんな時間お互い楽しくないでしょ?だからギリギリまで隠しておきたいの

偉い!
ちょっと聞きました?
少し熱があるくらいで体温計の画像を添付して
おねちゅツライとかTwitterで呟いているカマってちゃんは正座して聞け。

 

場面は現在に戻り【僕】は桜良の親友、恭子の結婚式の招待状に悩む。
12年前から現在まで何があったのか分からないので意味不明

再び回想
桜良からの提案

遠出がしたい!君はどこへ行きたい?
君が死ぬまでに行ってみたい所...
言ったね

言うには言ったがそれがお泊り旅行と知って【僕】は驚愕する
桜良は死ぬまでにしたい事をリストアップしており、お泊り旅行がその1つらしい
行先は九州。

うわぁラーメンの匂いがする
それは思い込みでしょ?
するじゃない!鼻腐ってんじゃないの?
腐ってるのは君の思考回路でしょ?
腐ってるのは膵臓です

こういう病気自虐ネタをバンバン放り込んでくるので、この映画で同情したり泣いたりするのは違う気になります。

で、九州の名所を巡ったり美味しいものを食べたりイチャコライチャコラ...

停止ボタンを押してやろうか?

男子校出身で女性とは縁のない高校生活を過ごした僕はこの手のイチャコラに拒否反応を起こします。

しかも高級ホテルのスイートルームで一緒に泊まるとか
お風呂に洗顔クリーム取ってと届けさせるとか
真実か挑戦かゲームするとか
ベッドにお姫様抱っこで運ばせるとか
一緒に寝るとか

思春期男子の性欲を舐めんじゃねえ!

あれで襲わない【僕】とかありえへん!
相手が病気とか関係あらへん!
だいたい「真実か挑戦かゲーム」なんて洋画のホラー映画以外で見た事ねえわ!
僕は鼻フガMAXになっていました。
ついでに桜良の親友恭子も2人の旅行を知り鼻フガMAXしてました。

旅行から帰ってからも、両親のいない家に招き抱き着いたり
純情少年をもて遊ぶもて遊ぶ。
いますよね?こういうパーソナルスペースが異常に近い女
ベタベタ触ってくる女

桜良、なかなかの悪女です

君の膵臓以外も食べる気です

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1人きりの方が気楽でいいや
そんな臆病な言い逃れは終わりにしなくちゃ 

悪女ぷりに困惑したのか【僕】は彼女に言います

君は僕といるよりもっと君を本気で思ってくれる人といた方が良い。
僕らはあの日、病院で偶然出会ったに過ぎないんだから

違う、偶然じゃない!
君が今までしてきた選択と私が今までしてきた選択が私たちを会わせたの、
偶然じゃない、運命なんかでもない

私達は自分の意思で出会ったんだよ

はい、名言ぽいのきました。
女子は胸キュンしたんじゃないでしょうか?

僕?僕はふ~ん鼻ほじほじって感じです。
なんせ男子校出身ですから!

長らく続いたハッピータイムでしたが、どうやらここらで終了です。

桜良、再び入院。

【僕】は焦ってお見舞いに行きます。
しかし彼女は至って通常どうりでホッ。
が、入院は長引き様子がおかしい事に気づいた【僕】は深夜、病院に会いに行きます。
桜良はもう1度だけ「真実か挑戦かゲーム」をして欲しいとお願いします。
ゲームに頼ってしか聞けない大切な質問があるらしい
が、ゲームは【僕】が勝ってしまい、その質問は聞けずじまい。
代わりに【僕】が質問し、彼女にとって生きるとはどういう意味なのか知ることが出来ました。
そしてその会話の中で自分がいかに彼女を大事に思っているかにも気づきます。

そんなに私に生きてて欲しいの?

とても...

キュン♡

あまりに純粋に想いあう2人に気付けば応援モードで鑑賞してる僕がいました。

退院したらまた旅行に行こう、桜を見に行こう

おうおう行け行け、どこでも行ってかまへん。

そして待ちにまった退院の日。 

スイパラで桜良を待つ【僕】
彼女を待つ間、彼女への想いをメールの文字で綴ります。
沢山、言葉を並べてはみるが、こんな言葉では百並べても伝わらない...

そして全ての文字を消し、ひと言

君の膵臓を食べたい

泣きどころでしょうか?
この為にこのタイトルをつけたのでしょうか?

ここまでの僕の涙腺ゲージを発表します。

0%

僕の涙腺なんてこんなものだ。
人が感動するところでも泣けやしない。
でも真に恐ろしいのはここからでした。
まさか僕の涙腺が爆破されるとは...

ここから先は重要ネタバレとなりますのでネタバレオッケーという方以外は読まないで下さい。

誰かの為に生きてみたって oh oh
Tomorrow never knows

想いを込めたメールに返信が来る事はありませんでした。
それどころか何時間待っても彼女は現れませんでした。
諦め1人帰る【僕】
メールの内容がキモかったんじゃないの?と思う僕。
そこに街頭のテレビがニュースを告げます

市内の路上で若い女性が何者かに刺され倒れているとの通報があり
救急車で運ばれましたが、間もなく死亡が確認されました
女性は市内に住む高校生

山内桜良さんと分かりました

!!!!!!

え?え?どうゆうこと?

僕は完全にパニくりましたが【僕】は更にパニくってました。
彼女の葬儀にも出れず、1人部屋に引きこもり状態

【僕】はふさぎ込み思った

甘えていたんだ
残り僅かな余命を彼女が全う出来るもんだと思い込んでいた
明日どうなるかなんて誰もわからない
約束された未来なんて存在しない
だからこそ、1日1日を大切に生きなきゃいけない
彼女はそう教えてくれてたのに...

これには流石の僕も同情しました。
あかんやん!
可哀想すぎるやん!
残酷すぎるやん!

原作者、脚本家、監督に怒りさえ覚えました。
許さぬ、抗議文を出そう
僕がそう決意してる間に

1ヶ月【僕】は彼女を想い続け、1つの答えに辿り着きます。

共病文庫を読まなくては

立ち上がり、彼女の家に向かいます。
そして彼女の母親にお願いします。

共病文庫を見せて頂きたいんです

共病文庫にはこれまでの【僕】と彼女のことが綴られていました。
あの時、あの場面、彼女がどう思っていたのか
【僕】と恭子が仲良くなって貰いたいなんて事も

そこでようやく【僕】は知ることが出来たのです、
彼女がどんなに怖くて嬉しくて泣いていたのか。

それを読んだ【僕】は震えていました
そして桜良の母に言います

お母さん、お門違いなのは分かってます...
でも...もう泣いていいですか?

【僕】は号泣した
  僕も号泣した

0から一気に100まで持っていかれました。
近所の犬が吠えるぐらい声を出して泣きました。


場面は現在に戻ります。
教え子が差し出す図書分類カードに彼女のいたずら書きが。
そこで【僕】は思い出します

ちょっとぐらい間違えててもいいじゃない、頑張って探して見つけた方が嬉しいよ、宝探しみたいで

これは彼女のメッセージだ
何をしてるんですか?と尋ねる教え子

宝探し!

その図書カードが指し示す本の中に彼女の手紙が...
手紙を見つけた【僕】は走る、全力で走る

どこに向って?

そりゃ彼女の結婚式場ですよ

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優しさの死に化粧で笑ってるように見せてる
君の覚悟が分かりすぎるから
僕はそっと手を振るだけ

式場に着くとウエディングドレスを着た恭子(北川景子)が。
そして場違いな事、今更な事を恥じながらそれでも

どうしても君に伝えなければいけないことがあるんだ

と桜良から彼女への手紙を渡します。
そこにはいかに恭子が好きだったか
恭子に幸せになって欲しいかが綴られていました。
そして追伸として、【僕】と仲良くして欲しいとも。

恭子は泣いていましたが、それ以上に僕は泣いていました。
そこに【僕】が伝えなければいけない事を伝えます。

こんなに遅くなってごめん
あの…僕と友達になって貰えませんか...

再び号泣である。

もう完全にタップしてるのにこの映画は攻撃を止めてくれません。
そう当然手紙は【僕】にもあったのです。 


背景、志賀春樹くん
ようやくこれを見つけましたね。
遅い遅いw
春樹、春樹って呼んでいい?
前からそう呼びたかったんだ

病院で真実か挑戦かゲームをやった時なにを聞きたかったか教えてあげる

どうして私の名前を呼んでくれないの?

最初からずっとキミ、キミ、キミってひどいよ
でも分かったんだ
いずれ失う私を友達や恋人、特別な誰かにしたくなかったんだね

でも私、そんな春樹に憧れてた
誰ともかかわらないで1人で生きてる強い春樹
春樹はいつでも自分自身だった
春樹は凄いよ

私ね、春樹になりたい
春樹のなかで生き続けたい

そんなありふれた言葉じゃダメだね

そうだね...君は嫌がるかも知れないけど...私はやっぱり

 

 

 

           君
           の
           膵
           臓
           を
           た
           べ
           た
           い

 

 

 

 

無理、こんなん絶対泣くやつ
手紙の最後の方、あのセリフが来る、きっと来る。
来たら耐えられへん。
涙腺がもたへん。
やめて、やめて、やめて

やっぱ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

たぶん今年の涙全部使いきりました。

これが「愛してる」とか「ありがとう」だったら泣くどころか冷めたはずです。
この2人だけの関係、距離感、空気感、
それは紛れもなく愛なんだけど、そんなありふれた言葉では伝えられない伝えたくない
だから2人だけに分かる言葉で伝える。

「君の膵臓をたべたい」

涙腺爆発です

しかもこっちはとっくに失神KOされてるのに続けて
ミスチルの「himawari」なんて流されたら...

水道トラブル5,000円、涙のトラブル8,000円
クラシ安心クラシアンを呼ぶしかありません。

泣きながら、なぜ今作は原作を改変し現在と過去を描いたのか考えました。
それは2人の限られた時間と春樹の変化を強調するためでしょう。
この物語は時の残酷さと優しさを描いています。

原作では桜良のメッセージは共病文庫に全て書かれてました。
それにより春樹は恭子と友達になります。
が、それを映像で見せたのでは少し弱い。
だから前半で伏線を用意しておいて12年経ってから回収する

素敵。

時が経っても彼女が特別な存在であり続けたこと。
そして大人になった春樹に再び、前を向かせる勇気を与えた事。
しっかり伝わりました

そんな感動の余韻を味わってる時に冒頭に書いた自分の予想を思い出しました

見え透いた涙の押し付け映画
見え透いたタイトル
うんたらかんたら

恥ずかしい
浅はかで間抜けな予想をしたあげく号泣してる自分が恥ずかしい
その罪滅ぼしじゃないけど、今後僕は全力でこの映画をお勧めしていこう

こんな僕でも泣いたんだ

きっと、

100回観れば100回泣ける映画だと

たぶん

 

 

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最後にこの映画が好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。
・ぼくは明日、昨日のきみとデートする
・忘れないと誓った僕がいた
・世界の中心で愛を叫ぶ