アノ映画日和

年間500本以上鑑賞、あらゆるジャンルの映画をイラスト付きで紹介

「リトルミスサンシャイン」 感想 悩める全ての負け犬どもへ

 

好きな映画は?という質問でミニシアター系の映画をあげる人がちょっと苦手。
いい映画が沢山あるのは知ってますが、それでは会話が広がり難いじゃないですか。
ターミーネーターとかレオンとかメジャー映画の方が会話が弾み易いじゃないですか。
そこをわざわざその映画言う?
いかにも私は映画通です。シネフィルですけど何か?て感じが鼻につくっていうか友好的じゃねえなぁ...てね、思いません?
で、今回取り上げるリトルミスサンシャイン、これもミニシアター系でして...

2006/アメリカ
監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス
出演:アビゲイルブレスリン、ポールダノ、グレッグキニア、スティーヴカレル、トニコレット、アランアーキン、ほか  
上映時間:100分

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85点

ざっくりあらすじ

アリゾナに住むオリーブの夢は美少女コンテスト「リトルミスサンシャイン」で優勝すること。

そのために毎日おじいちゃんとダンスの練習に励んでいた。
そんなある日、オリーブが予選を通過したとの連絡が入る。
そして本選に挑むべく、一家総出で遠くカリフォルニアを目指すためオンボロワゴンに乗り込むのであった。しかしこの一家、変わり者ばかりでして...

さすらおう この世界中を 転がり続けて歌うよ 旅路の歌を

85点という高得点つけてる段階でお前もミニシアター系好きじゃねえか!とバレバレなんですが、これはいいでしょ?
だってこれみんな好きだし会話も盛り上がるでしょ?
この映画を嫌いって人、会ったことないですもん。
もうこの映画はメジャー映画って事にしましょうよ。

何故この映画がこれほどみんなに愛されてるかってストーリーの面白さもあるけど、やっぱ登場人物の魅力が大きいですよね。
未見の方のためにまず簡単な家族紹介を貼っておきます。

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まぁこんな変人ばかりの一家で約1300キロの旅に出るロードムービーです。

飛行機で行くお金がない一家はオンボロワゴンに乗って1300キロの旅に出ます。
しかしオンボロワゴンは道中クラッチが壊れて、加速がつくまでみんなで押してから乗り込むはめに。止まっては押して、止まっては押してを繰り返します。

そしてワゴンだけでなく家族にもトラブルは起こります。
お父さんは勝負に出ていた事業に失敗、お兄ちゃんはある事が原因でパイロットになる夢を諦めざるを得なくなり発狂&意気消沈。ゲイのフランク叔父さんは元恋人に偶然再会してまた死にたくなるし、おじいちゃんは...

こんなトラブル続きの珍道中にオリーブちゃんの大会出場どころじゃないんじゃないの?
でもどんな問題がおこってもオリーブちゃんをリトルミスサンシャインに出場させる!

その決意だけは変わりません。
とにかく問題は保留しながらも、カリフォルニアに向かい前進あるのみです。

そうさ僕らは世界にひとつだけの花 一人一人違う種を持つ

よくこんな家族羨ましい!こんな家族の一員になりたい!て感想を耳にしますが、

え?本当に羨ましいか?

僕なら絶対嫌ですよ。
毎日こんなメンバーと一緒にいたらイライラしすぎて奥歯が欠けます。

口うるさい親父にヒステリックな母親、沈黙の誓い(喋らない)をたてた兄に空気の読めない妹、傷心のゲイの叔父。そして下衆でエロいジジイ...無理無理無理
フーヴァー一家と行くアリゾナ~カリフォルニア1300キロのバスツアーなんて絶対参加したくないです。

ただ第三者として見る分には愛すべき変人達であるのは間違いないです。

中でも1番人気はやはりおじいちゃんでしょうか?
エロくて下衆くてどうしようもないクソジジイですが名言連発です。 

「負け犬っていうのは負けるのが怖くて挑戦しないやつらのことだ」

もうこのセリフは間違いなく映画史に残る名言です!
どれだけ多くの人がこの言葉に救われることか。

考えるとこの映画に出てくる人達は勝ち負けにこだわってるくせに負け犬だらけです。
でもおじいちゃんのこのセリフは負け犬の定義そのものを覆してます。
結局負け犬かどうかはこれから次第ってことになります。
好きだなぁ、クソジジイ。

でも僕の1番好きなのはゲイのフランク叔父さん。
あのコンビニのシーンとか堪りません。

振られた恋人と偶然コンビニで再会。
こっちは失恋がショックで自殺未遂までしたのに元恋人は自分の仕事敵とラブラブ。
しかもジジイのお使いでポルノ雑誌をレジに出してるとこを見られて...

せつねぇ...せつなすぎる(泣)

このフランクおじさんは家族の1歩外にいる存在なので、僕たち鑑賞者の目の代わりの役割をしてくれてます。
家族のトンデモ発言や行動があると必ずフランクおじさんの表情が映ります。
ここは怒るべきか笑うべきかを判り易くしてくれてる大事な存在です。
次に鑑賞する際は是非フランクおじさんに注目して観て欲しいです。

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オンリーグローリー 君だけが貰うトロフィー
特別じゃないその手が 触る事を許された光

さてさて、道中すったもんだありながらも会場に辿り着く一同。
道中でおこった問題は何一つ解決していないけれど目的地には着きました。

会場に着いたはいいですが、エントリーしている他の美少女達を見て家族は愕然とします。
スリムでお人形さんみたいな少女たちの中、あまりにオリーブちゃんは場違いです。
まぁ、ぽっちゃり体型でメガネっ子のオリーブちゃんは可愛いんですが、お世辞にも美少女と言う感じじゃないですからね。

お父さんもお兄ちゃんも参加を辞退させようとします。
オリーブちゃんも鏡を見ながら自分の体型を気にしてます。

そこで今までまとめ役に徹してきたお母さんが決めます。

この日の為にオリーブはおじいちゃんと特訓してきたの。
それを挑戦もせずに辞めろなんて誰が言えるというの!
オリーブあなたが出たくなければやめてもいいのよ。
あなた決めなさい!

私、やるわ!

負け犬っていうのは負けるのが怖くて挑戦しないやつらのことだ

おじいちゃんの名言がここで活きます。

そういえばさっきからおじいちゃん出てこないけど、どうしたの?未見の方はそう思うかもしれませんね。
おじいちゃんは、とある理由でここまでは辿りつけませんでした。
まぁ、色々あったんです…察して下さい。

そして大会の始まりです。
この為にわざわざ1300キロの道のりを旅してきたんです。
さあ見せろオリーブ!おじいちゃんと特訓したダンスを!
見せつけてやれ!

そしておじちゃんが振付したダンスが披露されるのですが....そのダンスが...もう…
会場を騒然とさせます。

ジジイなにを伝授しとんねん!!!

ここは、本当に腹が中尾彬のマフラーのようによじれます。
お腹、痛い痛い痛いってなりますので注意して下さい。

審査員はその子をステージから降ろせとお怒りです。
オリーブちゃんはいったいどんなダンスを踊ったんでしょう?

踊り続けるオリーブを止めようとする司会者たち、そこで家族がとる行動がこれまた堪りません。
どんな行動か?それは言えませんが、僕は完全にやられました。

お父さんもお兄ちゃんも叔父さんもやることがニクい!

普通の映画なら、美少女たちを差し置いて素敵なダンスで優勝!
おめでとう!オリーブちゃん!君がリトルミスサンシャインだ!て流れでしょうが、
これは普通の映画じゃありませんから。

でもオリーブちゃんも家族も優勝トロフィーよりも素敵な何かを手にします。
これにはね爆笑した後にツーって涙がね、悲しくないけどなんか感動して涙がね...
観た人はわかるでしょ?

 

この映画、不思議で初見よりも2回目、2回目よりも3回目と数を重ねるごとに面白くなります。
それはやはりストーリーの面白さ以上に家族の魅力に惹かれているから。

登場人物が好きかどうかって、その映画が好きかどうかという事に近い気がします。
僕はどうしようもなくこの家族が大好きで、それはそのままこの映画が好きな理由に繋がります。
だから、しばらくするとまたこの家族に会いたくなるんです。

それぞれ色んな問題があっても、とりあえず皆が笑っていれば、それは幸せな家族で、そんな当たり前のことを当たり前に感じられるこの映画。
またすぐに会いたくなるんだろうな、
あのオンボロワゴンを押すポンコツ家族たちに...

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追伸、オリーブちゃんを演じたアビゲイルブレスリン今の姿をご存知ですか?
リトルはつかないけれどミスサンシャインと呼びたいくらいのグラマラスな美人になってますよ。

最後にこの映画を好きな方にお勧めしたい作品を紹介して終わります。

・世界にひとつのプレイブック
・ギルバートグレイプ
・天才スピヴェット